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【IVS2025レポート】最新ピッチから注目スタートアップ、事業創出のハブへ進化するIVSの全貌


テクノロジーを軸に新たな産業創出への期待が高まる中、2025年も各地で数多くのピッチイベントが開催され、スタートアップによる新たな挑戦が可視化された一年だった。生成AI、気候変動、医療・ヘルスケア、インフラ、教育など、テーマはより具体化・専門化し、単なるアイデア段階を超えた実装フェーズの事業が多く登場した点も今年の特徴と言える。
ピッチイベントのあり方も変化している。オンラインと対面を組み合わせた形式は定着しつつあり、業界特化型や課題起点型、自治体・大企業と連動したプログラムなど、目的に応じた設計が進んだ。評価の軸も、事業の新規性や市場規模だけでなく、実証実験の進捗、顧客導入の実績、社会実装への道筋といった「実行力」を重視する傾向が強まっている。
こうしたピッチイベントは、スタートアップにとって資金調達や事業提携のきっかけであると同時に、自社の立ち位置や戦略を見直す場としての役割も担っている。受賞という結果だけでなく、その後の事業展開までを見据えた評価が行われるケースも増えてきた。
本記事では、2025年に開催された主要なピッチイベントを振り返り、そこで優勝・受賞を果たしたスタートアップ7社を取り上げる。

IVS2025 LAUNCHPAD:スタートアップ京都国際賞(優勝)
企業HP:https://advance-composite.co.jp/
単一素材にはない特性を持つ金属基複合材料(MMC)の開発などを行う企業。 同社は、軽量化、高強度化、熱膨張、熱伝導などの課題に対し、アルミニウムを核とする「複合材料」のカスタマイズ設計・開発などを行う。高圧鋳造で内部欠陥の少ない素材や特性の優れた複合材料を鋳造する技術「溶湯鍛造法(ようとうたんぞうほう)」をコア・テクノロジーとしており、同技術を用いて「強化材」に「マトリックス材(溶けた金属)」を供給し、高圧で含浸・複合化などを行う。これまで、アルミニウムとグラファイトの複合材料「ACM-H3」や、アルミニウム/アルミナの複合材「AC-Alox」などを開発。
2025年1月には、鈴与商事を引受先とした第三者割当増資による資金調達を実施した。連携強化を図ることで、事業基盤のさらなる強化と拡大を加速する。
IVS2025 LAUNCHPAD:CAMPFIRE ピッチコンテスト『Top Gun FUND』最優秀賞
アフリカ・ウガンダを拠点に、食品残渣などの有機廃棄物をアメリカミズアブ(BSF)で分解し、養鶏・養殖用のタンパク質飼料へと再資源化する循環型ビジネスを展開。現地のゴミ処理・雇用創出・農業生産を統合的に支える。
B Dash Camp 2025 Spring in Sapporo:Pitch Arena 優勝
膜やケーブルなどの極めて柔軟な構造(ゴッサマー構造)を用いた宇宙構造物に関する解析・設計・開発などを行う企業。 ゴッサマー構造とは、膜やケーブルといった薄くて軽い柔軟な部材から成り立つ構造のこと。 同社は、前身である「日本大学理工学部航空宇宙工学科宮崎研究室(現JAXA宇宙構造システム研究室)」で開発した、非線形弾性動力学解析コード『NEDA』および宇宙機開発の経験を用いて、ゴッサマー宇宙構造物の解析・設計・開発を検討する顧客に対し、ソリューションの支援などを行う。
2025年7月には、膜構造物分野で国内外に豊富な実績を持つ太陽工業株式会社より出資を受けた。宇宙空間における膜・ケーブルなどの柔軟な構造物の社会実装に向けた共同研究開発を推進する。
B Dash Camp 2025 Fall in Fukuoka:Pitch Arena 優勝
従業員の妊活に関する悩みをサポートする企業。 同社は、妊活・不妊治療と仕事の両立を支援する福利厚生サービス「コウノトリBenefit」を開発・提供する。 コウノトリBenefitは、企業向けに妊活と仕事の両立支援セミナーの開催や不妊治療に関する福利厚生設計サポートを行う。 そのほか同サービスでは、利用者の状況や課題に合わせた医師・専門家によるオンライン相談、簡易検査キットの配布、定期的な検査などを実施する。
SusHi Tech Challenge 2025:Grand Prize(優勝)
企業HP:https://www.3d-architech.com/
特許取得済みのゲルベース金属3Dプリンティング技術により、最小10μm級の微細形状を高精度に設計・造形する。既存のSLAプリンターと互換性を持つ導入しやすさも特徴とし、純銅・銅合金ヒートシンクやベイパーチャンバー用ウィック、二相冷却といった放熱分野に加え、燃料電池・水電解向け多孔質金属構造など、水素・クリーンエネルギー分野での性能向上を実現するソリューションを提供している。拠点は米国(マサチューセッツ州ケンブリッジ)および日本(東北・仙台)に構える。
LAUNCHPAD SEED 2025 Powered by 東急不動産株式会社:優勝
企業HP:https://www.lingble.com/ja/
リングブル(Lingble)は、ブランドの海外展開を「ローカライズされたEコマース体験」で実現するグローバルEC支援企業。単なる翻訳ではなく、各市場に合わせた洞察とパフォーマンス分析を行うグローバルEコマース監査、戦略と実行をつなぐコンサルティング、ブランドの本質を保ったまま世界で通用するブランディングを提供する。さらに、UI/言語/通貨/決済、価格設計や商品ラインナップまで含む現地最適化、24時間365日の多言語カスタマーサポート、国際配送(DDP)や通関・関税トラブル対応まで含むロジスティクス支援で、越境の購買体験と運用を一気通貫で支える。加えて、10年の知見を活かしたグローバルEC向けマーケティングや、テクニカル・パートナーサクセス・マーケティング等の専任チーム体制、収益連動のリスク共有型モデルで、パートナーと伴走しながらグローバル成長を後押しする。
Industry Co‑Creation(ICC)サミット KYOTO 2025:STARTUP CATAPULT 優勝
企業HP:https://www.astra-fp.com/
ASTRA FOOD PLANは、過熱水蒸気で食材を乾燥・殺菌できる装置「過熱蒸煎機」を開発・販売する企業。 過熱蒸煎機は、過熱水蒸気によって熱風中の酸素濃度を下げることで食材の酸化を抑え、栄養価の損失と風味の劣化を防ぎながら乾燥・殺菌できる装置。 同社は、この過熱蒸煎機や同装置で製造した食品粉末を販売。また、食品メーカーと協力し、野菜の芯・皮・ヘタをはじめとした不可食部分の粉末の用途開発に取り組む。アップサイクルパウダー「ぐるりこ®」として販売し、フードロスの削減や食品の再利用に貢献する。
2025年10月には、「タマネギぐるりこ」が羽田空港、東京駅などに店舗展開するカレーパン「コナとスパイス」のカレーパン全種においてカレーフィリングの食材として使用され、リニューアル商品として販売が開始された。
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