カイタクが1.5億円調達、AI電話SaaSで社内外コミュニケーション自動化へ

カイタクが1.5億円調達、AI電話SaaSで社内外コミュニケーション自動化へ

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カイタク株式会社は、ジェネシア・ベンチャーズを引受先とした第三者割当増資により、総額1.5億円の資金調達を実施した。同社はマルチエージェント型Speech-to-Speech AI電話SaaS「スパ電」を提供しており、今回の調達資金を活用して音声認識技術の高度化と事業人材の採用を強化する。

カイタクは2015年7月に設立された企業で、法人向けの伴走型営業支援サービス「カイタク」を展開している。これまでに1000社以上の顧客に対し、営業代行やマーケティング支援を提供してきた。2024年秋頃から開発を進め、2025年6月より提供を開始した「スパ電」を今後の事業の主力に据える。

電話業務は企業のコミュニケーションにおいて重要な位置を占める一方、人手不足や対応品質の属人化といった課題を抱えている。同社によると、ホワイトカラーの業務時間の約7割は社内外コミュニケーションに費やされており、特に同社がターゲットセグメントとする電力・ガス・通信などのインフラ業界では、セキュリティ要件の厳格さやレガシーシステムの存在が障壁となり、一般的なクラウド型AIツールの導入が困難な状況が続いていた。

「スパ電」は、音声をテキスト化せずに直接理解し、音声で返答する「Speech-to-Speech」AI音声モデルを採用している。これにより、人間と同等の反応速度を実現し、相手の発言に割り込む形での会話も可能になっているという。代表の松木氏は「シナリオ分岐型のAI電話と異なり、直接音声データを入力として受け取り、音声処理用の言語モデルを使って発話音声を出力する。このため応答速度が速く、自然な応答ができる」と説明する。

同社によれば、音声認識テストの正答率は98.7%に達しており(同社調べ)、通話内容から日付・時刻・人名・数量などの重要情報を文脈に応じて抽出し、顧客の受注システムやCRMへ自動入力する機能を備えている。

AI電話SaaS「スパ電」とCRM等との連携
社内システムと連携させることで、「スパ電」は架電・受電の周辺業務を実行することが可能(画像提供:同社)

また、企業独自のマニュアルや約款を横断的に参照する「ミニRAG」と呼ばれる軽量の検索拡張生成機能(RAG※1)を搭載しており、誤回答が許されないミッションクリティカルな業務や、複数のマニュアルにまたがる内容を組み合わせて参照しなければいけない複雑なケースにAIが対応することを可能にするという。同社によると、同技術によりNIAH試験※2での正答率は99.5%超となっている。

また「スパ電」は「メールフック連携」という機能を搭載しており、API(システム間のデータ連携を行う仕組み)が未整備のレガシーシステムとの連携を強みとする。メールで情報を受け取り、その内容をAIが解釈して電話を架けるという仕組みで、これは顧客からの要望を反映し開発した機能であるという。

松木氏は「レガシーシステムの場合、APIを持っていないことが多く、セキュリティ要件が厳しいため外部ネットワークに接続できないケースも多いが、メールだけは外部に送ることができるケースが多い。そこに着目し、同機能を搭載した」と説明する。

最近では「受信したファックスの情報をもとに架電できるようにしてほしい」という顧客からの要望を受け、対応に向け動いているとのことだ。

現在、電力会社の需給調整業務などで導入が進んでおり、協力会社との連絡業務や施工点検に関する問い合わせ対応などに活用されている。松木氏は「業務の種類にもよるが、10人規模のオペレーターがいる業務で、9割以上を自動化できるケースもある」と述べ、大幅なコスト削減効果を見込んでいる。

「スパ電」の管理画面では、文字起こしと録音、ヒアリング結果にアクセスすることが可能
「スパ電」の管理画面では、文字起こしと録音、ヒアリング結果にアクセスすることが可能(画像提供:同社)

今回の調達資金は、マルチエージェントAIの高度化、次世代コミュニケーションAIエージェントに向けた新規機能開発、エンジニアやカスタマーサクセス人材の採用強化に充てられる。

代表取締役の松木友範氏は日本政策投資銀行出身で、産業支援への関心から独立し、ITを活用した企業の販路拡大や業務効率化の支援を主軸としてカイタクを起業した。

松木氏は「日本の人口は毎年数十万人単位で減少していく。それに対する対応策は、外国人労働力の受け入れ、金融サービス立国、AIやロボットによる省人化の3つしかない。AIを活用した人口減少への対応が我々のミッションであると考えている」と語り、「電話業務のボトルネックを解消し、人口減少社会における新しい労働力を生み出したい。中期的には、電話だけでなくメール・SNS・チャットなど、toCを含め企業のあらゆる対外コミュニケーションを一元的に担うコミュニケーションAIエージェントへと進化させる」と今後の展望を示した。

「我々はAI電話そのものを目的にしているわけではない。より根本的に顧客体験を良くするための仕組みをつくりたい」と同氏は語る。AIによる電話業務の自動化は、24時間対応や待ち時間の解消といった利便性向上を通じて、顧客とのコミュニケーションの在り方そのものを変えていく。その先にあるのは、企業と顧客の関係性をアップデートする新しい基盤だ。

※1  RAG (Retrieval-Augumented Generation):生成AIに組み合わせることを前提に構築された外部データの検索機能

※2 特定情報に対するNIAH型試験:AIに情報を参照させ、一問一答式の質問に答えさせる試験

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