核融合技術で未来を変えるスタートアップ5選

核融合技術で未来を変えるスタートアップ5選

xfacebooklinkedInnoteline

次世代科学のプラットフォーム──核融合技術に挑むスタートアップの最前線

世界的な脱炭素の流れとエネルギー安全保障への関心の高まりを背景に、核融合技術が再び脚光を浴びている。核融合は、太陽のエネルギー生成原理を地上で再現するもので、理論上はCO2を排出せず、燃料資源が豊富で、安全性も高いとされる。しかし、実用化に向けては高温プラズマの安定維持や材料耐久性、経済性といった技術的・商業的課題が長く立ちはだかってきた。

その応用範囲は、発電にとどまらない。高エネルギー中性子線の発生や極限環境での材料実験、医療用アイソトープの生成など、多様な分野で活用の可能性が広がっている。中性子源としての核融合は、原子炉を必要としない安全な放射線利用を可能にし、半導体製造や次世代電池の材料評価、がん治療用同位体の生産などにもつながる。さらに、核融合実験炉の開発過程で培われる超伝導磁石、真空技術、先進冷却システムといった周辺技術は他産業への波及効果も期待されている。

近年は、この領域にスタートアップが次々と参入している。超伝導磁石やレーザー制御技術の革新、AIによるプラズマ制御、先進材料による炉設計の軽量化など、従来は国家プロジェクト中心だった研究開発が、小規模かつ高速に進むようになった。アメリカでは、民間核融合企業が実験炉での記録更新や商業炉構想を発表した。

日本でも、民間資本による核融合スタートアップが登場している。国際熱核融合実験炉(ITER)や原型炉計画といった大型プロジェクトとの補完関係を築きつつ、特定部品や制御システムなどニッチ分野で世界市場を狙う戦略が取られている。

本記事では、こうした発電から中性子利用まで、幅広い応用分野で核融合技術に挑むスタートアップを紹介する。

オープンイノベーションバナー

スタートアップ5選

株式会社LINEAイノベーション

企業HP:https://linea-innovations.com/

FRC型・磁気ミラー型閉じ込め方式を活用した商用核融合炉を開発する日本大学および筑波大学発のベンチャー企業。「FRCミラーハイブリッド」と呼ばれる独自方式による核融合研究を進めており、発電用途での実用化を目指している。従来の核融合研究とは異なり、軽水素とホウ素11を燃料とした「プロトンボロン反応」により、中性子を出さない核融合炉の開発に取り組んでいる点が特徴だ。

2025年6月には、シリーズAラウンドにて、ANRIをはじめ、ベンチャーキャピタル7社、事業会社2社、個人投資家1名を引受先とした総額17.5億円の資金調達を実施した。

株式会社EX-Fusion

企業HP:https://ex-fusion.com/

主にレーザー核融合方式を用いた発電商用炉の開発に取り組む、大阪大学発のスタートアップ企業。レーザー核融合は、直径数ミリメートルの燃料ペレットに高出力レーザーを照射し、重水素と三重水素(トリチウム)による核融合反応を人工的に起こす技術だ。発生するエネルギーを発電に活用することが狙いで、レーザーの高精度制御や連続照射システムの構築が不可欠とされている。

2025年6月には、シリーズAラウンドで総額約26億円(第三者割当増資23億円、融資3億円)の資金調達を完了した。引受先として、大阪大学ベンチャーキャピタル、MPower Partners、三菱 UFJ キャピタル、みずほキャピタル、フジクラなどが参加した。

株式会社Helical Fusion

企業HP:https://www.helicalfusion.com/

二重らせん構造の超電導マグネットを用いた「ヘリカル方式」で商用核融合炉を開発している。同方式は、国際的に主流のトカマク型やレーザー型に対し、長時間安定運転、高効率、優れたメンテナンス性を備えた商用化有力候補とされる。統合炉設計や高温超電導マグネット、液体金属ブランケットなどの中核技術開発に加え、関連技術の事業化にも取り組んでいる。

2025年7月には、シリーズAラウンドで約23億円の資金調達を実施した。これにより累計調達額は約52億円となった。

株式会社MiRESSO

企業HP:https://miresso.co.jp/

核融合の社会実装を目指し、ベリリウムおよびベリリウム化合物の製造・販売などを行っている。希少金属サプライチェーン強化を軸に、難溶解鉱石からのベリリウム精製と、独自の低温技術を用いた他素材の精製・リサイクルを展開する。従来2000℃近く必要だったベリリウム精製を、QST発技術で常圧・300℃以下に低減し、コストと環境負荷を抑える。ベリリウムは核融合炉の中性子増倍材として不可欠である。

2025年8月には、シリーズAラウンドで18.3億円の資金調達を実施した。創業から2年余りでの累計調達額は補助金を含め約42.8億円となった。今回の出資には、Spiral Capital、大平洋金属、ジェネシア・ベンチャーズが参加している。

京都フュージョニアリング株式会社

企業HP:https://kyotofusioneering.com/

京都大学発のスタートアップとして設立された核融合エネルギー分野のエンジニアリング企業。プラズマ加熱装置「ジャイロトロン」や熱取り出しブランケット、高性能熱交換器、水素同位体ポンプなど核融合炉に必要な特殊機器の研究開発・設計・製造に取り組み、英国原子力公社をはじめ国内外の研究機関・企業に技術提供している。

2025年5月には、MORESCOと、将来のフュージョン(核融合)プラントに用いられる耐放射線性潤滑剤の開発および販売に関する業務提携を開始した。同年9月には、シリーズCラウンドおよび融資を合わせて総額93.8億円の資金調達を実施した。今回の調達には、京セラベンチャー・イノベーションファンド1号、JERA、三井住友信託銀行などからのエクイティ出資(14.5億円)と、日本政策金融公庫、国際協力銀行、三菱UFJ銀行など5行による融資枠(53億円)が含まれる。

KEPPLE DBバナー

新着記事

STARTUP NEWSLETTER

スタートアップの資金調達情報を漏れなくキャッチアップしたい方へ1週間分の資金調達情報を毎週お届けします

※登録することでプライバシーポリシーに同意したものとします

※配信はいつでも停止できます

ケップルグループの事業