食品ざんさに新たな価値を、サステナビリティを再定義

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KEPPLE編集部


フードロス削減に取り組むASTRA FOOD PLAN株式会社がシリーズAラウンドにて、第三者割当増資による2.2億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

今回のラウンドでの引受先は、PE&HR(埼玉りそな創業応援投資事業有限責任組合)、アグリビジネス投資育成、三菱UFJキャピタル、IDATEN Venturesの4社。

今回の資金調達により組織体制の強化や、独自に開発する「過熱蒸煎機」の販売やレンタルによる導入拡大を目指す。

食品のアップサイクルを実現

同社が提供する過熱蒸煎機は、独自に開発した食品ざんさの再生装置だ。食品製造の工程で生じる野菜の端材類などを、高付加価値パウダー「ぐるりこⓒ」へアップサイクルする。食品の乾燥と殺菌を同時に行うことで、風味の劣化や酸化、栄養価の減少を抑える。

にんじんぐるりこ©
一般に認知されるフードロスは、量販店における売れ残りや食べ残しなどの廃棄を問題視している。同社が取り組むのは、野菜の芯や皮などの食品ざんさのほか、規格外農作物や未利用作物を含めた廃棄を減らす「かくれフードロス」の削減だ。

こうした食品ざんさは、企業が費用をかけて廃棄物として処理するほか、堆肥や家畜の餌として再利用されることが一般的だ。食品ざんさ等をアップサイクルしたぐるりこⓒの用途開発を食品メーカー等と連携して行うことで、フードロス削減だけでなく、新たな商品として販売する。

すでに企業と連携したプロジェクトも進めている。牛丼チェーンの𠮷野家で発生する玉ねぎの端材をパウダー状にし、ベーカリーのポンパドウルで玉ねぎパウダーを活用したパンとして商品化。2023年2月より販売を開始している。

また2023年7月には、「令和5年度埼玉県サーキュラーエコノミー型ビジネス創出事業補助金」に採択された。「埼玉 食のサーキュラーエコノミープロジェクト」として埼玉県内の大学や事業者、自治体と連携し、埼玉県における食の循環型モデル構築を目指す。

今回の資金調達に際して、代表取締役社長 加納 千裕氏に、今後の展望などについて詳しく話を伺った。

かくれフードロスの削減を実現する過熱蒸煎機

―― 御社が取り組む「かくれフードロス」の削減について教えてください。

 加納氏:一般的に認知されるフードロスは、お弁当などの製品になった後に、お店で売れ残ったり家庭で食べ残されたりした食品を指し、その量は年間で約522万トンと言われています。

しかし、実際にはもっと多くのフードロスが存在します。製造の工程で出てくる野菜の端材類などの食品ざんさや規格外作物、天候の影響で作りすぎた農産物などです。これらを「かくれフードロス」と呼んでおり、約2000万トンあるといわれています。

一般に認知されるフードロスは消費者に努力を求めるのに対し、かくれフードロス削減には食品メーカーや生産者の努力が重要です。本来廃棄される食品ざんさを、価値ある商品に生まれ変わらせたいという思いを抱える企業も増えています。

ぐるりこイメージ
一方で、工場で切断などの処理をされた食品ざんさは、断面から雑菌が繁殖しやすく、殺菌や乾燥を迅速に行う必要があります。これまでもフリーズドライや熱風乾燥機などを用いる方法はありましたが、コストや生産効率に課題が残ります。当社は独自の過熱蒸煎機でこれらの課題を解決し、食品ざんさを粉末化してアップサイクルすることで、かくれフードロスの削減に取り組んでいます。

―― 過熱蒸煎機にはどのような特徴がありますか?

フリーズドライや熱風乾燥機とは異なり、殺菌と乾燥を同時にできる点が大きな特徴です。これにより品質を維持したまま、安全に食品ざんさを加工することができます。

過熱蒸煎機には過熱水蒸気技術を採用しており、以前からオーブンレンジなどの電化製品に活用されています。お湯を300℃以上に加熱してできるミストをあてることで、食品ざんさを焦がさずに、瞬時に殺菌・乾燥を行います。従来の過熱水蒸気技術の方式では、多くの時間や電気代などのコストがかかる課題がありましたが、低コストで運用できる方式を独自に開発し、特許を出願しています。

産官学連携で食の循環型モデルを構築

―― 創業のきっかけを教えてください。

父が長年食品業界に勤めていたことから、家庭でも仕事の話を聞くことが多く、私自身もこれまで食品開発や企画に携わってきました。

父が安心安全に食品を加工する技術を研究する中で、過熱水蒸気技術に出会い、過熱水蒸気オーブンやそれを利用したフルーツ、果物ピューレを製造販売する事業を立ち上げました。私も一緒に取り組んでいましたが、父の引退を機に、この過熱水蒸気技術を利用してより良いものを作りたいと考え、代替わりして新たな技術開発を行う形でASTRA FOOD PLANを設立しました。

スタートアップスカウト

―― 開発した過熱蒸煎機について、どのような反応がありましたか?

フードロスの問題について認識していた一方、創業から過熱蒸煎機の開発までには約1年かかりました。我々も胸を張れる機械ができたのですぐに売れるだろうと思っており、実際に機械の良さを認めてくださる食品工場や生産者は多かったです。

一方で、出来上がったパウダーの販売先がないと導入には踏み切れないという声が多かったんです。それから用途開発にも力を入れ始め、𠮷野家とポンパドールにおいてぐるりこⓒを活用した商品販売の事例は、過熱蒸煎機を販売していくうえでポジティブな影響を与えています。

―― 「埼玉 食のサーキュラーエコノミープロジェクト」について教えてください。

埼玉県が出している補助金を活用した、産官学連携のプロジェクトです。規格外の農作物をJAいるま野が集荷して当社ラボで加工し、県内の大学で分析やレシピ開発をしたものを、事業者と商品開発をして商品として販売するまでを検証します。

スキームイメージ
規格外の作物が流通することは正規品の価値を下げてしまいますが、生産者は少しでも収益を上げたいという気持ちがあります。規格外品を粉末化することで、新たな価値を持つ商品に生まれ変わります。作付けを増やさずとも収益を向上させるために、小規模な生産者からJAが規格外野菜等を集荷し、まとめて過熱蒸煎する仕組みを作ろうとしています。すでにプロジェクトは始動しており、ぐるりこⓒを原料として利用した商品にはマークをつけることで、認知の獲得も狙っています。

目指すは循環型のフードサイクル

―― 資金調達の背景や使途について教えてください。

装置の販売を効率的に進めていくために、営業を中心に組織を強化したいと考えています。また、関係者との実証実験や用途開発を推進する人材の採用も積極的に進めていきます。

加えて、過熱蒸煎機の販売とレンタルを拡大します。購入とレンタルでは提供形態が異なり、レンタルの場合は安価に過熱蒸煎機を提供し、その代わりにパウダー化されたぐるりこⓒの全量を当社が買い取ります。現時点ではぐるりこⓒの品目は限られていますが、多用途の食品に対してはスピーディに導入できるため、レンタルと買い取りの両方を拡大し、これから1年で少なくとも合計8台の提供を目指しています。

―― 今後の長期的な展望を教えてください。

現在は玉ねぎに焦点を当てていますが、将来的には玉ねぎ以外の品目もアップサイクルして商品化するなど、用途開発を強化します。現在はショウガに注目しており、乾燥させると風味も良いため、家庭向けやソース類の原料としての需要があるのではないかと考えています。

また、茶殻や麦茶の搾りかすのなど一部の材料は、栄養が抽出されてしまっており、パウダー化しても食用には向きません。繊維を活かしたアパレルや消臭剤などの化学品への転用など、食品に限らずあらゆる用途の開発にも取り組みます。

各種ぐるりこ
まずは過熱蒸煎機を活用して、日本中のかくれフードロスがなくなり、廃棄物は本当に廃棄すべきものだけに限られるような世界を目指しています。かくれフードロスの問題は海外でも同様です。すでに海外からの問い合わせもありますので、日本での取り組みと並行して海外市場への展開も迅速に進めていきます。

かくれフードロスの削減には、多くの企業や人など、さまざまな関係者との協力が不可欠です。どのような形でも当事者として関わっていただき、共に循環型の社会を実現していきたいと思います。

ASTRA FOOD PLAN株式会社

ASTRA FOOD PLAN株式会社は、過熱水蒸気で食材を乾燥・殺菌できる装置『過熱蒸煎機』を開発・販売する企業。 『過熱蒸煎機』は、過熱水蒸気によって熱風中の酸素濃度を下げることで食材の酸化を抑え、栄養価の損失と風味の劣化を防ぎながら乾燥・殺菌できる装置。 同社は、この『過熱蒸煎機』や同装置で製造した食品粉末を販売。また、食品メーカーと協力し、野菜の芯・皮・ヘタをはじめとした不可食部分の粉末の用途開発に取り組む。

代表者名星千裕
設立日2020年8月3日
住所埼玉県富士見市鶴瀬東1丁目10番26号
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