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脱炭素化やデジタル化の進展に伴い、重要鉱物への関心が高まっている。重要鉱物とは、リチウム、ニッケル、コバルト、銅、グラファイト、レアアースなど、電気自動車(EV)や蓄電池、半導体、再生可能エネルギー設備、通信機器などに欠かせない鉱物資源を指す。産業競争力や経済安全保障に直結する素材として、各国で安定確保に向けた取り組みが進んでいる。
一方で、重要鉱物の採掘・精製・加工は特定地域に偏りやすく、供給不安や価格変動、環境負荷といった課題を抱えている。需要が拡大する中で、従来の資源開発だけではなく、都市鉱山の活用、リサイクル、代替材料の開発、分離・精製技術の高度化など、多面的なアプローチが求められている。重要鉱物そのものの確保に加え、それらを活用した高機能材料の開発も重要になっている。
なかでも近年存在感を増しているのが「都市鉱山」の活用だ。都市鉱山とは、使用済みの電子機器や家電、蓄電池などに含まれる金属資源を、都市に蓄積された「鉱山」とみなして回収・再資源化する考え方を指す。新たな鉱山開発に比べて供給地の偏在リスクや環境負荷を抑えやすく、重要鉱物の国内調達を補完する手段として期待されている。背景には市場の拡大もある。環境省の2022年の調査によると、日本の廃棄物処理・資源有効利用分野の市場規模は2022年時点で約59.8兆円(前年比4.3%増)に達し、資源価格の高騰を受けて再生資源の価値も上昇している。2050年には約70兆円規模へ拡大すると見込まれている。
制度面の整備も進む。2024年5月に公布され、2025年11月に全面施行された再資源化事業等高度化法は、レアメタルなどの重要鉱物を含む廃棄物を海外に流出させず国内で循環させることを狙いとし、分離・回収技術の高度化(高度分離・回収事業)を後押しする。廃リチウム蓄電池や廃太陽電池などが回収対象に位置づけられ、電子機器からレアアースや希少金属を効率的に回収するマテリアルリサイクル技術の高度化も進みつつある。こうした制度改革は、技術力や差別化戦略を持つ新規プレイヤーの参入機会を広げる可能性がある。
こうした状況を背景に、重要鉱物をめぐる領域では、資源の回収・再資源化、素材開発、精製プロセスの効率化、サプライチェーンの可視化などに取り組むスタートアップの動きも広がりつつある。従来は資源メジャーや大手素材メーカー、国家主導のプロジェクトが中心だった分野において、特定技術に強みを持つプレイヤーが新たな役割を担い始めている。
本記事では、重要鉱物の回収・精製、資源循環、次世代素材開発に取り組むスタートアップを紹介する。

企業HP:https://emulsion-flow.tech/
レアメタルを高純度で回収・精製する装置とプロセスを開発している。中核技術は「エマルションフロー」。日本原子力研究開発機構で、使用済み核燃料中の金属元素を分離する技術として開発された溶媒抽出法を基盤とする。従来は油相と水相を「混ぜる→静置する→分離する」の3工程が必要だったが、エマルションフローでは液体を送って攪拌するだけのシンプルな操作で、抽出を連続的に行える点が特徴だ。商業実機を見据え、PFAS回収やLIB(リチウムイオン電池)リサイクル向けに装置のスケールアップ開発を進めており、1000Lスケールでも十分な抽出効率を確認している。適用領域はレアメタルリサイクルにとどまらず、金属製錬、化学、バイオなどの分離・精製や有価成分回収プロセスまで幅広い。
2026年4月には、欧州市場への展開に向け、フィンランドのVTT技術研究センターとの協業検討を開始した。分離・回収技術について、EUの規制要件と産業現場を前提に、技術が実装可能かを評価することを目的としている。
企業HP:https://www.env-volta.jp/
リチウムイオン電池・ニッケル水素電池などの充電式電池のリサイクル事業を運営する企業。 同社は、二次電池を放電・乾燥、破砕、選別する事で、ブラックマスと呼ばれるコバルトやニッケルを含む濃縮滓(のうしゅくし)の生産や、銅・アルミなどのリサイクルを行う。ノートパソコンや電動自転車などに使用される「民生用リチウムイオン電池」、電気自動車や大型蓄電池などの「大型リチウムイオン電池」などを取り扱う。 同社は、資源循環事業などを運営する子会社などを傘下に持つ持株会社「株式会社エンビプロ・ホールディングス」のグループ会社である。
量子科学技術研究開発機構(QST)の認定を受けた核融合スタートアップ。核融合発電に不可欠な中性子増倍材「ベリリウム(Be)」が、供給不足と高価格でボトルネックになり得るという課題に対し、独自の低温精製技術で安定供給と低コスト化を狙う。ベリリウムの製造・販売で、低温精製技術を用いたパイロットプラント「BETA」を整備し、本格生産の立ち上げを目指す。さらに技術プラットフォームとして、同技術をベリリウム以外の鉱物資源・素材の精製、リサイクルへ展開し、共同開発、コンサルティング、技術ライセンス、フィージビリティ検証を提供する。精製技術は、アルカリ溶液とマイクロ波加熱を組み合わせ、従来は2000℃超を要した溶解工程を、約300℃・常圧で可能にする点を特徴とする。
2026年2月には、Spiral CapitalとSBIインベストメントを共同リード投資家とした、12社の投資家を引受先とする、総額42.3億円のシリーズAをクローズしたと発表。約24億円の追加資金調達を完了し、累計資金調達額はエクイティと補助金を合わせ、約66.8億円となった。
企業HP:https://www.patentix.co.jp/
次世代パワー半導体材料「r-GeO₂(ルチル型二酸化ゲルマニウム)」のエピウエハ(基板)を中心に、研究開発・製造・販売を手がける立命館発ベンチャー。r-GeO₂は、高い絶縁破壊電界が期待される材料で、高耐圧・低損失のパワーデバイス実現を目指す。デバイスの小型化・軽量化、省エネルギー化に貢献する次世代材料として位置づけている。製品としては、「GeO₂ on Si」「GeO₂ on SiC」「GeO₂ on TiO₂」などの10mm角サンプルを有償提供しているほか、6インチの「GeO₂ on Si」基板も開発中としている。
2026年4月には、シリーズA1ラウンドにて、三菱 UFJ キャピタル、TMH を引受先とした総額約 1.5億円の資金調達を実施した。これにより、創業以来の調達額は、計12億900万円となった。
企業HP:https://advance-composite.co.jp/
単一素材や他工法による複合材では実現しにくい機能・物性・特性を狙い、金属基複合材料(MMC)の材料設計・製造を手がける。コア技術は「溶湯鍛造」。強化材に、マトリックス材となる溶融金属を供給し、高圧で含浸・複合化することで、用途や要求性能に応じた特性を持つ材料を設計できるとしている。製品例としては、アルミニウムとグラファイトを組み合わせた複合材「ACM-H3」や、アルミニウム/アルミナ複合材「AC-Alox」などを展開している。
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