スカイゲートテクノロジズ株式会社

日本の安全保障とテクノロジー 防衛テックがもたらす変化
近年、サイバー攻撃や無人機技術の高度化、地政学的緊張の高まりなどを背景に、安全保障を取り巻く技術領域への関心が高まっている。こうした中、防衛分野に関連する課題に対し、AI、ドローン、サイバーセキュリティ、宇宙技術、量子技術などを活用する「防衛テック(Defense Tech)」が、政策・産業の双方で注目されている。
防衛テックは、防衛(Defense)と技術(Technology)を組み合わせた言葉で、偵察、監視、通信、情報分析、訓練、ロジスティクスなど、防衛分野に関わるさまざまな用途を対象とする。一方で、これらの技術の多くは、災害対応、インフラ点検、物流、通信、サイバー防御など民生分野にも応用可能な「デュアルユース(軍民両用)」の性格を持つ。防衛領域における技術活用は、産業振興や研究開発の観点から注目される一方、技術の使途をめぐる議論も行われている。
日本でも、防衛省や防衛装備庁が、スタートアップ企業などが持つ技術を防衛分野に取り入れるための取り組みを進めている。2026年4月には、スタートアップと防衛省の連携を促進するイベント「Defense Innovation Meeting(DIM)」が開催された。また、防衛装備庁は、防衛産業への新規参入に関する相談窓口や、防衛関連企業・防衛省・自衛隊とのマッチング機会を設けているほか、スタートアップ企業などが持つ技術を早期に装備品へ取り込むことを目的とした「ファストパス調達」も進めている。
さらに、2026年7月に京都市内で開催されたスタートアップカンファレンス「IVS2026」には、防衛大臣の小泉進次郎氏や防衛装備庁長官の青柳肇氏が登壇した。防衛分野においても、従来の大手防衛企業に加え、AI、サイバー、宇宙、ロボティクスなどの技術を持つ企業との接点をどう形成するかが、政策上のテーマの一つとなっている。
こうした動きは日本に限らない。NATOは、防衛イノベーション支援組織「DIANA(Defence Innovation Accelerator for the North Atlantic)」を通じ、加盟国のスタートアップやイノベーターによるデュアルユース技術の開発・実装を後押ししている。
安全保障とテクノロジーの接点が広がるなか、防衛テックは、技術開発と産業政策が交差する領域となっている。今回は、防衛テックに関わる国内スタートアップを取り上げる。
スタートアップ6選
スカイゲートテクノロジズ株式会社
企業HP:https://www.skygate-tech.com/
宇宙やサイバー分野に特化し、防衛、インテリジェンス、セキュリティ関連のサービスを開発・提供する。主なプロダクトには、防衛領域において、宇宙・サイバー・電磁波領域への統合指揮統制を実現するプラットフォーム「Skygate JADC2 Alayasiki」がある。他にも、AI時代に対応したエンタープライズ向けセキュリティ・プラットフォーム「Skygate Cygiene(サイジーン)」、企業・組織のセキュリティ課題を解決するプロフェッショナルサービス「Security Professional Service」を提供している。
2025年6月には、既存投資家である慶應イノベーション・イニシアティブ、及び株式会社ジェネシア・ベンチャーズに加え、新規投資家としてジャフコグループ、三菱UFJキャピタル、SMBCベンチャーキャピタル、りそなキャピタルを引受先とした、第三者割当増資による資金調達を実施した。
メトロウェザー株式会社
企業HP:https://www.metroweather.jp/
京都大学発のベンチャー企業で、高性能ドップラー・ライダーを開発している。この技術は、大気中の微粒子の動きを捉え、数十キロメートル先の風向や風速を高精度に測定するもので、従来のレーダーでは困難だった低高度の風況観測を可能にする。NEDOの経済安全保障重要技術育成プログラムに採択され、小型無人機の飛行経路の風況観測技術の開発を進めている。ドローン検知技術や航空機搭載型ライダーの開発にも取り組んでおり、乱気流による航空機事故の防止など、防衛分野においても、ディフェンステックとしての活用が期待される。
2025年7月には、プレシリーズBラウンドで、ヤンマーベンチャーズ、MOL PLUS、鐘通、古河電気工業、東京計器を引受先とした、第三者割当増資による総額8.5億円の資金調達を実施した。
ミツフジ株式会社
企業HP:https://www.mitsufuji.co.jp/
銀メッキ導電性繊維「AGposs」や、ウェアラブルIoTソリューション「hamon」などを開発・製造・販売する企業。AGpossは、ナイロンを銀で被膜した同社独自の高機能繊維で、導電性、電磁波シールド性、抗菌防臭性、除電性などを備える。ウェアラブルセンサーや電極、電磁波シールド材、制電効果を持つ産業資材など、用途に応じた素材展開を行っている。
また、hamonは深部体温の変化を推定するウェアラブル技術として、建設、食品、航空など現場で働く人の安全管理や健康管理を支援している。防衛分野では、電磁波シールド材やウェアラブルデバイスの活用が見込まれている。2024年には、国際装備展示会「EUROSATORY 2024」の防衛装備庁ブースに出展し、電磁波シールド膜とウェアラブルデバイスを展示。現在も同社は、銀メッキ導電性繊維「AGposs」などの素材について、民生品から防衛用途まで幅広い活用を想定している。
株式会社インフォステラ
企業HP:https://infostellar.net/infostellar-jp
衛星通信向け地上局プラットフォーム「StellarStation」を提供する企業。StellarStationは、世界中の地上局ネットワークを仮想化し、衛星運用者が共通インターフェースを通じて複数の地上局にアクセスできるクラウドベースのサービスだ。衛星運用者は、地上局ネットワークの構築・運用負担を抑えながら、衛星データの取得やコマンド送信を効率化できるという。
防衛分野では、防衛装備庁と経済産業省が設置した「防衛産業へのスタートアップ活用に向けた合同推進会」に参加。さらに2025年には、防衛省が公募した「衛星周波数解析技術の実証」案件を契約した。同実証では、宇宙領域把握(SDA)能力の向上に向け、人工衛星の電波の特徴を分析し、データベースを構築するための技術実証を行う。商用衛星通信インフラで培った地上局運用の知見を、安全保障分野へ応用する動きとして注目される。
2026年5月には、エンド・ツー・エンドの衛星ミッション統合サービスを提供するXDLINX Space Labs(本社:インド・ハイデラバード)と、グローバルな地上局接続と衛星ミッション運用の効率化を目指し、業務提携に関する覚書(MOU)を締結した。
株式会社Waqua
企業HP:https://waqua.com/
小型海水淡水化装置や防災用浄水器、循環式手洗いユニットなどを開発・提供する企業。海水や汚れた水を「使える水」に変える小型分散型の浄水・淡水化技術を軸に、建設現場、自治体、防災、小型船舶、海外の離島・水不足地域などに向けた水インフラの構築を進めている。同社は、IoT化した小型海水淡水化装置とプラットフォームを通じ、世界中に水のマイクロインフラを構築することを目指している。
防衛分野では、離島や遠隔地における生活用水の安定確保を支える分散型インフラ技術として注目される。2026年には、防衛装備庁との間で「分散型インフラ整備概念実証/硫黄島」に係る業務委託契約を締結した。災害や気候変動、地政学的リスクを背景に、離島・遠隔地では水供給の安定性確保が重要な課題となっている。同実証は、厳しい環境下でも必要な場所で水を確保し、安定的に利用できる分散型インフラの可能性を検証するものだ。離島や遠隔地、災害対応拠点などで水インフラを支える技術として、レジリエンス / 安全保障分野での活用が期待される。
株式会社デジタルレシピ
企業HP:https://dxr.co.jp/
SNSマーケティング支援で培った消費者行動分析技術を応用し、防衛・安全保障分野向けソリューションを提供する。SNSを含むインターネット上の情報を収集・分析する「情報検知」、情報の意図や背景、思想などを解析する「ナラティブ分析」、関係者の意思決定や行動変化を予測する「行動予測シミュレーション」を中核技術とし、防衛・安全保障領域やリスクコミュニケーション領域における意思決定を支援する。独自のLLM(大規模言語モデル)を活用し、認知戦や偽情報対策などへの応用も進めている。










