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世界的な人口増加や水産物需要の拡大、海洋環境の変化などを背景に、安定的かつ持続可能な水産物の供給が重要な課題となっている。日本でも漁業従事者の減少や高齢化などが進むなか、生産性を高めながら水産物を安定して供給する仕組みづくりが求められている。
こうした課題を背景に、存在感を高めているのが養殖だ。2024年の世界の養殖生産量(水生動物)は初めて1億トンを突破し、水生動物生産全体の約53%を占めた※。近年は、閉鎖循環式陸上養殖やIoTを活用した飼育管理・自動給餌、品種改良など、テクノロジーを活用した「次世代養殖」の開発・社会実装が進んでいる。さらに、養殖技術を活用して磯焼けなどの海洋環境問題の解決につなげる取り組みもみられる。
こうした技術は、生産性の向上や人手不足への対応に加え、安定生産につながることが期待されている。国内でも、独自の技術やアプローチによって養殖の高度化や持続可能な水産業の実現に取り組むスタートアップが登場している。
今回は、次世代養殖に取り組む注目のスタートアップ5社を紹介する。

企業HP:https://sakana-dream.com/
東京海洋大学発の養殖技術を活用し、新たな養殖魚の開発・生産・販売を手がける。日本に生息する約4000種の魚の中から食味に優れた魚を探索し、品種改良によっておいしさの向上と安定生産を実現する。全国の養殖事業者と連携しながら飼育環境や養殖方法を確立し、飲食店や小売店への販売までを一気通貫で展開する。
同社が開発した「夢あじ」は、市場にはほとんど流通しない希少魚「カイワリ」と南房総産の「金アジ」を掛け合わせた世界初の養殖魚。希少魚や食味に優れた魚種を安定的に供給することで、一部の天然水産資源に集中する需要を分散し、持続可能な水産業の実現を目指している。2026年には「夢あじ」の本格出荷を開始し、生産拡大を進めている。
企業HP:https://frd-j.com/
独自の水処理技術を活用した閉鎖循環式陸上養殖システムを開発し、サーモントラウトの養殖・販売を手がける。海水を利用せず、飼育水を循環させながら陸上で魚を育てることで、自然環境の影響を受けにくい安定的な生産と、海洋環境への負荷低減を目指す。養殖したサーモンは、千葉県産の生サーモン「おかそだち®」として販売している。
千葉県木更津市などの実証実験プラントで培った技術や操業ノウハウをもとに、千葉県富津市に年間3500トン規模の商業プラント「富津ファーム」を整備。
2026年2月に操業を開始し、2027年の出荷開始を予定している。将来的には、日本をはじめ世界各地への閉鎖循環式陸上養殖の普及を目指している。
企業HP:https://www.ark.inc/
小型・分散型の閉鎖循環式陸上養殖システムの開発・製造・販売を手がける。陸上養殖設備のハードウェアから、遠隔監視・管理を行うソフトウェアまでを自社で開発し、「どこでもだれでも陸上養殖ができる仕組み」の実現を目指している。
主力のモジュール型循環式陸上養殖システム「ARK ZERO MATRIX」は、生育水槽とろ過システムを一体化したオールインワン型の設備で、小規模な実証から複数ユニットを組み合わせた本格的な養殖まで対応する。遠隔管理アプリ「STARBOARD BY ARK」では、水温や溶存酸素などの水質を常時モニタリングし、異常時のアラートや自動給餌などを行うことができる。魚類から藻類まで幅広い魚種・水産物に対応し、企業や大学などで導入されている。
2026年には、UAEとインドネシアで同社の閉鎖循環式陸上養殖システムを活用した実証事業が経済産業省の補助事業に採択された。海外での実証を通じ、日本発の陸上養殖技術の社会実装と海外展開を進めていく方針だ。
企業HP:https://www.aqua-stage.com/
独自の水質浄化技術を活用した完全閉鎖循環式陸上養殖システム「Re-QUA(リクア)」を開発・提供する。飼育水を入れ替えず補水のみで循環させることで、海や川から離れた場所や遊休施設などでも養殖が可能。遠隔給餌や水流調整、監視カメラなどのIoT技術も組み合わせ、少人数で効率的に養殖できる仕組みを構築している。
滋賀県内では、トラフグやヒラメをはじめ、ビワマス、ニホンウナギ、クルマエビなどさまざまな魚種・水産物の陸上養殖に取り組む。パートナー企業には「Re-QUA」のレンタルに加えて育成指導やメンテナンスも提供し、養殖から販売までのバリューチェーン構築を支援。
2025年6月にはヤンマーホールディングスと資本業務提携し、陸上養殖における水質浄化ソリューションの開発や事業拡大を進めている。
企業HP:https://kitasanrikufactory.co.jp/
岩手県洋野町を拠点に、ウニを中心とした水産物の加工・販売や、水産業に関する技術開発を手がける。磯焼けによる餌不足で実入りが悪くなった「痩せうに」を回収し、独自の飼料や養殖技術によって商品価値の高いウニへ育てる「うに再生養殖」に取り組んでいる。養殖したウニは「はぐくむうに®」として販売するほか、同様の課題を抱える地域や事業者に対し、養殖の立ち上げから加工・販路までを支援している。
また、岩手県洋野町の「うに牧場®」で育ったブランドウニ「洋野うに牧場の四年うに」も展開する。ウニの過剰な食害などによって海藻が減少する磯焼けへの対策と、水産物としての価値向上を両立させることで、藻場の再生や持続可能な水産業の実現を目指している。
2026年2月には、ウニ再生養殖システムを備えた大規模陸上養殖場「UNI-VERSE Site™ Hirono」の第1弾となる実証実験棟を洋野町に開設。ヤンマーホールディングスなどと連携し、高品質なウニの通年生産や陸上飼育の効率化に向けた実証を進めている。
同月には、ミツウロコグループホールディングスからの資金調達を発表。両社はこれを起点に、エネルギー分野と水産・海洋再生分野での知見や技術を持ち寄り、中長期的な価値創出に向けた協議を段階的に進めていくとしている。

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※FAO(国連食糧農業機関) 「The State of World Fisheries and Aquaculture 2026」
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