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ロボット導入進む、人手不足と品質向上ニーズが追い風
世界的な半導体不足により、ロボットの生産にも一時的な影響が出たものの、製造現場での自動化へのニーズは着実に高まっている。特に深刻な人手不足への対応や、感染症予防対策としてもロボットの導入は注目を集めている。さらに、生産コストの削減や製品品質の向上といった従来からのメリットも重なり、世界中の製造現場でロボット化が加速的に進んでいる。
特に協働ロボット市場は順調な成長を見せており、2023年における世界市場規模はメーカー出荷台数ベースで6万2530台となった。2024年には9万2496台、2033年には約7倍の68万1021台まで増加すると予測されている。※
ロボット関連スタートアップの現状やカオスマップ、注目スタートアップについて、KEPPLEではアナリストによる独自の調査レポートを公開している。
スタートアップ6選
株式会社New Innovations
企業HP:https://newinov.com/
需要予測 AI 搭載無人カフェロボット「root C」や、全自動かき氷機「Kakigori Maker」など自動調理ロボットの開発を行っている。 root Cは、コーヒー需要を事前に予測して抽出を開始、 ユーザーは移動途中にアプリを開いて注文も可能。root Cの前で待つことなく、上質なコーヒーを受け取ることができるAIカフェロボット。2021年にはブルーボトルコーヒージャパンと協業。
また、企業向けには省人化・無人化の推進支援を行っており、実績として、同社の技術を活用し、ECサイトで注文した商品を店舗のロッカーから受け取れるスマートショーケースや、自動調理ロボットなどの開発・提供を行う。
2023年4月には、SBIインベストメント、グローバル・ブレインをはじめとする12社を引受先とした約26.3億円の第三者割当増資と、三井住友銀行、みずほ銀行、三菱UFJ銀行、静岡銀行をはじめとする金融機関からの約27.8億円の融資、リース枠の設定等により54.1億円の資金調達を実施した。2024年6月には、サンデン・リテールシステムと製品開発体制の強化や新製品の共同開発に向け、業務提携を締結した。
Telexistence株式会社
企業HP:https://tx-inc.com/en/home/
遠隔操作・人工知能ロボットの開発およびそれらを使用した事業を展開する。 同社が開発する遠隔制御ロボット「TX SCARA」は、独自のAIシステム「Gordon」による自動制御と人による遠隔操作技術を組み合わせることで、小売店舗内での飲料補充業務を効率的に行うことが可能。インターネット環境があれば、どこからでも遠隔でロボットを動かすことができる。
2022年8月には「TX SCARA」の国内量産を開始し、ファミリーマート店舗での導入をスタートさせた。主要都市圏を中心に300店舗への展開が進んでいる。
2023年7月には、シリーズBラウンドにて、Monoful Venture Partners、KDDI Open Innovation Fund、Airbus Ventures、ソフトバンクグループ、Foxconn、Globis Capital Partnersを引受先とする約230億円の資金調達を実施した。
GITAI Japan株式会社
企業HP:http://gitai.tech/
宇宙ステーションの船内外や月面で汎用的な作業を自動化するロボット「GITAI G1」や、特定の作業を自動化するロボット「GITAI S1」、ロボットを地上から遠隔操作できるシステム「GITAI H1」を開発している。GITAI G1とGITAI S1は、AIによる自律制御とGITAI H1による遠隔操作によって動作する。
ロボットが宇宙ステーションのメンテナンスなどの作業を代替することで、宇宙飛行士は複雑な作業に多くの時間を割けるようになる。宇宙空間でのさまざまな技術実証も行っており、2023年にはビショップエアロックの外部環境での実証を計画しています。
2023年8月には、シリーズB拡張ラウンドにて、グリーン・コ・インベスト、パシフィック ベイズ キャピタル、三井住友海上ベンチャーキャピタルを引受先とした第三者割当増資、及び三菱UFJ銀行からの融資による、1500万米ドルの追加資金調達を実施した。
株式会社レグミン
農家向けに、畝を検知して農薬散布しながら自動走行するロボットを開発する企業。 ロボットに種まきや収穫などの機能を追加することで、農作業受託サービスの開発を進める。農地の場所を正確に把握するために、従来のGPSに加え、RTKという高精度な測り方や、日本の衛星「みちびき」を使うことで、より正確に位置を測定することが可能。ロボットを中心としたテクノロジーの力で農作業に関わる全ての工程を効率化する。
2021年5月には、埼玉県深谷市を引受先とする第三者割当増資による資金調達を実施した。また2022年2月には、自律走行型農業ロボットによる農薬散布サービスを開始している。2023年2月には、クボタが建設を進めている農業学習施設「KUBOTA AGRI FRONT」の最新の農業技術を体感できる屋内栽培エリア「TECH LAB」の展示・運営におけるパートナー企業として参画した。
株式会社Thinker
企業HP:https://www.thinker-robotics.co.jp/
対象物との距離と傾きを同時に計測することができる技術「近接覚センサー」を活用したソリューション提案や開発支援などを行う企業。 同社は、導体向けシリコンウエハーの搬送装置や透明部材のピッキングなどによる使用を想定し、近接覚センサーを実装したロボットハンドを開発する。2023年6月に、死角部分を含めたモノの位置と形を非接触で把握できる「近接覚センサーTK-01」を取り付けた小型ロボットハンドを用い、これまでロボットハンドでの取り扱いが難しいとされてきた透明素材で出来たモノのピッキングのデモンストレーションなどを実施した。また、近接覚センサーを備えた「インテリジェントフィンガー」を組み合わせたロボットハンド「Think Hand F」も開発している。これにより、柔らかいものや繊細なものまでピッキングでき、活用領域が広がる。
2024年3月には、フューチャーベンチャーキャピタル、サンエイト インベストメント、京信ソーシャルキャピタル、りそなキャピタルを引受先とした第三者割当増資による1.4億円の資金調達を実施した。2024年10月には、カワダロボティクスと共同で、キッティング作業の自動化を可能にするロボットシステムのプロトタイプを開発したと発表した。
株式会社LexxPluss
物流倉庫・製造工場向け自動搬送ロボットを開発する企業。 同社では、自動搬送ロボット「Lexx500」の開発や、ロボット統合制御システム「LexxFleet」をはじめ、次世代の産業インフラとなるロボティクス・オートメーション製品を開発・販売。IHI、椿本チエイン、東芝インフラシステムズなど、すでに30社以上の企業が参画している。
2024年9月には、シリーズAエクステンションラウンドにて三菱HCキャピタル、ニフコ、あおぞら企業投資、三櫻工業、キャナルベンチャーズ、横浜キャピタル、七十七キャピタル、Iceblue Fundを引受先とした新株予約権付社債などによる6.4億円の資金調達を実施した。
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※矢野経済研究所 「協働ロボット世界市場に関する調査を実施(2024年)」