フィジオロガス・テクノロジーズが3億円調達、在宅透析装置で生活の質向上を目指す

フィジオロガス・テクノロジーズが3億円調達、在宅透析装置で生活の質向上を目指す

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在宅血液透析装置の開発を手掛けるフィジオロガス・テクノロジーズ株式会社が、シリーズAラウンドのファーストクローズとして約3億円の資金調達を実施した。今回の資金調達は、ロッテホールディングスのヘルスケア・バイオ医薬領域CVCがリード投資家を務め、新たにJMTCキャピタル、エスケーエレクトロニクスが出資に加わった。(第三者割当増資)また、既存株主であるグリーンコア、エスケーエレクトロニクス他からのJ-KISS型新株予約権によっても資金調達を実施した。

フィジオロガス・テクノロジーズは2020年に設立された北里大学発スタートアップで、末期腎不全患者向けの在宅専用血液透析装置の開発・製造・販売を主力事業とする。設立以来、科学技術振興機構(JST)などの公的助成や複数のアクセラレータープログラムへの参加を通じて、研究開発体制や事業基盤の強化を進めてきた。2025年には神戸医療産業都市推進機構が主催するKansai Life Science Accelerator Program(KLSAP)に選抜され、事業開発や規制対応の高度化、さらには海外展開への道筋を構築している。

代表取締役の宮脇一嘉氏は創業メンバーであり、医療機器業界における事業開発や経営の実績を持つ。取締役CTOの小久保謙一氏(北里大学医療衛生学部准教授)は、尿毒素を吸着除去する技術を研究し、その成果をもとに装置開発をリードしている。研究・開発・ビジネスそれぞれの分野にバックグラウンドを持つメンバーが協働し、産学連携の体制で開発を推進している。

日本の血液透析治療は世界でも規模が大きく、34万人以上の末期腎不全患者が1回4時間・週3回の透析を受けている。多くの患者はクリニックで治療を受けており、患者や家族には通院や治療に伴う負担が生じている。これに対し、在宅血液透析は通院の必要がなく、治療頻度の調整が可能であるなど、生活の質(QOL)や生命予後の改善が報告されている。しかし、国内では在宅専用の血液透析装置が未開発のため、現状ではクリニック向けの大型機器を自宅に設置せざるを得ない状況が続いている。水インフラや警報機能などの複雑な要件が導入障壁となり、日本での在宅透析利用者は患者全体の0.2%未満である約800名にとどまっている。海外では米国やオーストラリアなどで在宅透析市場への新規参入が進み、NxStage Medical(米国、2019年よりFresenius Medical Care傘下)などが専用装置を展開している。厚生労働省の統計によると、透析患者の高齢化や医療費増加が進む中、患者の社会復帰やQOL向上を目指した在宅療法の選択肢拡大が重要な課題となっている。

フィジオロガス・テクノロジーズが開発する装置は、尿毒素を吸着するフィルターを用い、透析液の再循環によって自宅での水道給排水工事や大量の水処理インフラを不要とする設計が特徴である。安全性管理や遠隔モニタリング機能も開発対象となっており、企業によれば今後はデータ解析による個別最適化も視野に入れているという。今回の資金調達を活用し、在宅血液透析装置および消耗品の設計、開発、試作および非臨床試験(電気的安全性試験、電磁両立性試験、生物学的安全性試験他)を進める計画だ。

同社は、KLSAPやJETROのグローバルプログラムなど外部連携も積極的に進めている。2025年3月にはフランスのグローバルチャレンジのファイナリストに選出されるなど、海外展開への足掛かりを築いている。累計では2021年のシード期資金調達以降、公的助成や各種コンテストでの入賞を重ね、支援プログラムから得たネットワークやノウハウを活用しながら事業成長を図ってきた。

血液透析を取り巻く事業環境は、今後も患者の高齢化や慢性腎臓病患者の増加を背景に、在宅療法のニーズが高まると見込まれる。こうした動向の中で、スタートアップと既存プレイヤーの連携や、透析オプションの多様化に向けた技術開発が進んでいる。フィジオロガス・テクノロジーズは、国内外で進む在宅医療の普及拡大に向けて、開発・事業推進を継続する構えである。

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