「物流2024年問題」に挑む──T2、プレシリーズBで50億円調達し商用運行を拡大

「物流2024年問題」に挑む──T2、プレシリーズBで50億円調達し商用運行を拡大

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株式会社T2がプレシリーズBラウンドで総額50億円の資金調達を実施した。調達先は9社で、累計調達額は110億円を超えた。今回の資金は、自動運転トラックを活用した幹線輸送サービスの商用運用拡大および次世代技術の開発体制強化に充てられる見込みである。

T2は2022年8月設立のスタートアップで、物流業界が直面する労働力不足や「2024年問題」と呼ばれる法改正によるドライバー稼働時間の制限を背景に事業を展開している。主軸は、レベル4(高度自動化)の自動運転トラックを用いた幹線輸送の社会実装と、技術開発から車両運用、サービス提供までを自社で完結するビジネスモデルにある。これにより、技術検証と現場オペレーション、社会実装を一体で進める体制を構築している。

株主には三井物産やPreferred Networks(両社は共同創業)、大手物流、金融、不動産、エネルギー業界の事業会社、複数のコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)、ベンチャーキャピタル(VC)など多様な投資家が名を連ねる。今回の調達ラウンドでは、宇佐美鉱油、NX・TCリース&ファイナンス、環境エネルギー投資、鈴与、日本郵政キャピタル、福山通運、三井住友海上火災保険、三井倉庫ロジスティクス、三菱地所が新たに参加し、既存株主からの追加出資もあった。

代表取締役CEOの熊部雅友氏は、2025年8月1日にCEOに就任した。社内にはトヨタ、デンソー、ソフトバンク、Preferred Networks、三井物産、Tier IV、ヤマト運輸、楽天、KDDIなど多様な業界から集まるエンジニアや事業開発担当者が在籍している。

T2の提供する幹線輸送サービスは、関東~関西~九州といった大都市間のBtoB大規模貨物輸送を主な対象とし、全体市場規模は約2兆円とされる。そのオペレーションは、高速道路など限定条件下において遠隔監視型のレベル4自動運転トラックを拠点間で運行する仕組みだ。2025年7月には有人によるレベル2自動運転トラックの商用運行を開始し、2027年には無人運転(レベル4)への移行を目指している。

物流業界全体ではドライバー不足が深刻化しており、法改正に伴う労働時間規制への対応が各社に求められている。野村総合研究所の分析によれば、2030年度には全国的にトラックドライバーが約35%不足し、地域によっては40%以上に達する可能性があるとされている。

幹線輸送の自動化は、安定した貨物輸送、24時間稼働による効率化、事故低減、環境負荷抑制など複数の効果が見込まれるものの、導入コストやインフラ整備、安全性の検証など多くの課題も残されている。

競合としては、いすゞ自動車や日野自動車といった大手メーカー、自動運転スタートアップのTier IVのほか、物流会社各社が人材確保や外国人労働者の活用など複合的な対策を進めている。海外ではAurora InnovationやTuSimpleなど米中スタートアップが大規模な資金調達を行い、国際的な競争も進行している。

技術面では、T2はLiDAR(レーザーセンサー)、カメラ、自己位置推定、車両制御、遠隔監視といった主要技術を自社で開発・内製化している。高速道路の一部区間において99%の自動運転走行率を達成した実証例が公表されている。今後、鉄道を組み合わせたモーダル輸送の実証、大手荷主・物流事業者との連携、カーボンニュートラル燃料の導入なども計画されている。

今回調達した資金は、レベル2自動運転トラックの商用運行拡大、運行管理システムや管理拠点の整備、レベル4事業化に向けた要素技術・車両の強化、提携企業との共同開発に充当される予定である。

自動運転トラックの社会実装には、規制緩和や安全認証基準の整備、インフラ投資、他交通モードとの連携など、制度・事業・技術の統合的な対応が求められている。T2は、国土交通省や総務省、産業界の主要企業が参画する「自動運転トラック輸送実現会議」の設立・運営にも参加しており、業界横断での標準化や制度設計、エコシステム形成にも関与している。

今後は、レベル2自動運転トラックの安定運行と採算性の確立、レベル4の認可取得と安全基準策定、事業拡大に伴うオペレーション体制の拡充などが焦点となる。T2はプレシリーズBラウンドの資金を活用し、2027年以降の無人運転サービス本格化と持続的な事業成長に向けた準備を進めている。

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