少子高齢化による労働力不足や人件費の高騰を背景に、あらゆる分野で自動化や省人化が必須事項となっており、この課題を解決する手段としてロボットが注目されている。今後ますます需要が高まるロボット業界について考察する。
ロボットの種類
ロボットには大きく分けて「産業用ロボット」と「サービスロボット」の2種類があるとされる。前者は、工場などの製造現場で加工・溶接・組立・搬送などを行い、製造工程の自動化を目的として使用されるロボットを指す。後者は公共施設や家庭といった日常生活の場で人のサポートを行うことを目的としたロボットである。医療現場や小売業、農業、物流業などで活躍している。
産業用ロボットの市場規模
国際ロボット連盟(IFR)によると、現在世界で稼働している産業用ロボットは約350万台とされている※1。市場規模は2021年に156億米ドル、2029年には356.8億米ドルで、CAGR(年平均成長率)11.4%と予測されている※2。特に中国や日本をはじめとするアジア諸国は、産業用ロボットで最も大きな市場となっており、2021年に新たに導入された産業用ロボット51.7万台の内74%がアジアで稼働している。中国で稼働中のロボットは100万台を超え、日本でも39万台のロボットが導入されている※3。
従業員1万人当たりのロボット導入台数を示すロボット普及率は、2020年では1位韓国、2位シンガポール、3位日本、8位台湾、9位中国となっており、東アジア諸国で普及率が高いことが伺える※4。東アジア諸国には、近年需要が増しているEV(電気自動車)を始めとした自動車関連や電子機器、バッテリー製品の生産拠点が多く集まっており、産業用ロボットを導入する土台があることが、普及率が高い要因として考えられる。
産業用ロボットのキープレイヤー
産業用ロボットの主要メーカーには、ABB(スイス)、ファナック(日本)、Comau(イタリア)、安川電機(日本)、Kuka(ドイツ)、川崎重工業(日本)などが挙げられ※5、日本は世界でもトップクラスの産業用ロボット生産国である。主要な納品先はエレクトロニクス関連や自動車業界、金属・機械業界となっている※6。
注目される協働ロボット
一般的な産業用ロボットが柵で囲われ完全に人と分離した状態で作業を行うのに対し、「協働ロボット」は人間と共同作業を行う前提で開発されたロボットである。産業用ロボットの一部という位置づけだが、小型化され人と接触すると停止するなどの安全機能がついており、一般的な産業用ロボットに必要な大規模工事を行う必要も無いため、中小企業による導入ハードルが低く近年注目を集めている。他にも協働ロボットの需要が伸びてきた背景に、大量生産から少量多品種の生産需要が増したことが挙げられる。
産業用ロボットは位置が固定され、同じ作業を繰り返し行うのに対し、協働ロボットは配置変えが可能で、人との共同作業を前提としているため作業の汎用性が高いといったメリットがある。この分野ではUniversal Robots(デンマーク)が6割のシェアを独占しており、ファナックを始めとした日本勢に先行している。
サービスロボットとは
サービスロボットには、手術支援を行う医療ロボットや介護ロボット、警備・清掃・消毒用ロボット、飲食店での配膳ロボット、コミュニケーションロボット、農業用ロボット、建機ロボット、運搬ロボットなどが挙げられる。この分野の企業には、Amazonが17億米ドルで買収した掃除ロボット「ルンバ」のiRobot(アメリカ)、手術支援ロボット「ダビンチ」のIntuitive Surgical(アメリカ)、物流倉庫向けロボットのGeek+(中国)などがある。
ロボット分布図
スタートアップデータベース「KEPPLE DB」の情報をもとに、2023/04/20時点でロボットセクタータグを付与している国内企業について分布図を作成した(非スタートアップ、ロボット以外を主事業としている企業などは除く)。
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横軸に従業員数、縦軸に累積調達額(登記簿ベース)を置いている。分布図には100社あり、そのうち32社が累積調達額も従業員数も多い右上の第一象限、46社が累積調達額も従業員も少ない左下の第三象限に配置されている(左上の第二象限は18社、右下の第四象限は4社)。このことから、累積調達額と従業員数にはおおむね相関関係があると考えられる。
第一象限の注目企業
第一象限には、累積調達額、従業員数ともに多い企業が含まれる。投資家から一定の評価を受けており、人材採用もできていることから、実績が証明されており、IPOの期待値も高いといえる。その中でも、評価額が高く導入実績も多いと思われる3社を取り上げる。これらの企業は国籍を問わず優秀な人材の採用を行っており、多様なメンバーによる研究開発が成長に繋がっていると考えられる。