メトロウェザー株式会社

メトロウェザー株式会社は、プレシリーズBラウンドで総額8.5億円の資金調達を実施した。新たに古河電気工業や東京計器が出資し、既存投資家であるヤンマーベンチャーズ、MOL PLUS、鐘通も追加出資した。
2015年に設立されたメトロウェザーは、赤外線レーザーと独自の信号解析を活用し、大気中の微粒子や塵の動きをリアルタイムかつ三次元で可視化するドップラー・ライダーの開発・製造を展開している。主力製品「Wind Guardian」は、従来の同種機器に比べて小型・低価格での提供を実現している。ドローンや空飛ぶクルマ、風力発電、都市防災、海運といった領域での利用が進んでいる。
代表取締役社長の古本淳一氏は、京都大学でリモートセンシングを研究した後、従来の計測機器の高価・大型という課題に直面し、その解決を目指してメトロウェザーを創業した。現場で体験した課題の抽出と顧客フィードバックからの開発サイクルを重視し、エンジニア中心の多様な組織を率いている。人員拡大と組織化も近年進めている。
空のインフラやサービスに対する社会的な関心が高まる中、ドローンや空飛ぶクルマの実用化に向けた取り組みが国内外で加速している。日本では「空の移動革命に向けたロードマップ」策定や、有人地帯での目視外飛行(レベル4)解禁などの規制緩和が進み、2024年時点で国内ドローンビジネス市場は約4371億円(インプレス総合研究所調査)、2030年には1兆195億円を超えるとの予測もある。こうした新技術の社会実装には高度な安全性が求められており、特にリアルタイムかつ広範囲な風況の可視化は多くの事業者にとって重要な課題となっている。
一方で、国内でドップラー・ライダーの開発・サービスを手がける企業は限られている。海外大手と比較しても、小型・低価格化を両立できる企業は少なく、メトロウェザーのポジションは特異性がある。競合としては、海外ではLeosphere(仏)、Halo Photonics(英)などが同分野で知られている。
今回の資本参加で加わった古河電気工業は生産技術やサプライチェーンの構築面で、東京計器は防衛分野でのソリューション展開で、いずれもメトロウェザーの事業推進において補完的役割を担う。ヤンマーベンチャーズは小型ライダーの国際ヨットレースでの活用、MOL PLUSは海運・物流分野への展開を後押ししている。鐘通は部材調達や現場支援に関わり、エコシステムの拡充にも取り組んでいる。
事業面では、防衛分野での小型・高精度な風況観測装置としての用途が広がりつつある。例えば、ドローンや小型無人機の探知、物体検知や気象インフラとしての活用可能性が指摘されている。民間分野では都市防災やインフラ管理、物流、エネルギー、海洋など多様な用途への展開が進む。今回の調達を機に、量産体制の強化や海外展開も本格化している。
今後は、2025年に向けたドップラー・ライダーの量産・事業化、国内外での顧客開拓、資本参加企業との協業による実運用の積み重ねが焦点となる。国内における同分野のプレイヤーが少ない状況を踏まえ、メトロウェザーの技術・事業展開はスタートアップやインフラ産業における動向として注目される。