INSOL-HIGH株式会社

ヒューマノイドロボットの産業現場への普及を目指すINSOL-HIGH株式会社が、ニッセイ・キャピタルを引受先とする第三者割当増資および金融機関からの融資を合わせ、総額1億円の資金調達(シードラウンド)を完了した。
INSOL-HIGHは2023年11月設立のスタートアップで、物流や製造分野向けヒューマノイドロボット専用支援プラットフォーム「REAaL」の開発・運営を主力事業としている。REAaLは、ヒューマノイドロボットのタスク設計や現場実装、データ集積などを一貫して支援する仕組みだ。プラットフォーム上ではロボット活用データの共有・蓄積・学習が可能となり、各現場に適したロボット導入の効率化を目指している。加えて、物流不動産コンサルティングやシステム開発、ロボティクス導入支援も手がけており、倉庫選定からロボット・システム導入、運用までのPDCAサイクルを一括支援する体制を整えている。特定のWMS(倉庫管理システム)やロボットメーカーに依存しない「ベンダーフリー」方針を掲げ、柔軟なソリューション提供を特徴とする。
代表取締役の磯部宗克氏は、CBREでの物流施設のプロパティマネジメントや営業を経験。その後、物流テック系スタートアップでセールス・導入支援を担当し、中国ロボットメーカー日本法人の立ち上げにも関わってきた。
物流・製造分野のロボティクス市場はグローバルに拡大傾向にある。ヒューマノイドロボット市場は、2023年に24億3000万米ドルと評価され、今後も拡大すると予測されている。米国や中国では国家プロジェクト規模の投資が進んでいる一方で、日本では生産年齢人口が減少傾向にあり、現場の人手不足や自動化の遅れが深刻な課題となっている。現状のロボットシステムは搬送やピッキングなど単機能型が主流であり、現場ごとの適合や柔軟性の確保には課題が残る。導入コストや人材確保、システム連携の複雑さも、中小企業への普及を阻む要因となっている。
今回の業務提携により、INSOL-HIGHはヒューマノイドロボット対応のWES(Warehouse Execution System)および物流ノウハウ、山善は製造・物流現場の自動化ノウハウや販売ネットワークを組み合わせ、多様な現場へのロボット実装を進める。主な取り組みは三つ。まず、ヒューマノイドロボットによる「移動」「物の把持」「柔軟な作業」を実際の倉庫や工場で実装する。次に、INSOL-HIGHのWESやWMS、IoTデバイスと連携した現場実証実験を通じ、人とロボットが協働するオペレーションモデルの構築を目指す。最終的には2026年以降、現場導入の全国展開を計画している。これにより、省人化・自動化の選択肢拡大や作業効率向上、さらに複数現場を横断したナレッジとデータの共有による継続的な現場改善を狙う。
資金調達の1億円は、ニッセイ・キャピタルからの出資と金融機関からの融資で構成される。調達資金は主にREAaLプラットフォームの開発、人材強化、現場実証プロジェクトの推進、2026年以降に計画される「ヒューマノイドロボット専用トレーニングセンター」の設立準備に充てられる見込みだ。このトレーニングセンターは、日本の現場環境を模した施設で、模倣学習やシミュレーション、強化学習などを通じてロボットの現場適応データを蓄積することを目的とする。海外の大手プレイヤーが進める検証・ナレッジ集積基盤と同様の枠組みであり、国内での先行事例となる可能性がある。
この分野の競合としては、米国のFigureや中国のロボティクス企業などが挙げられる。国内ではトヨタ自動車による人協働ロボット開発や、ソフトウェア主導型のスタートアップによるロボット支援事業も進展している。ヒューマノイド分野は現在、プロトタイプ・実証フェーズから実用・普及フェーズへの転換期にあり、業界再編の動きが活発化している。
今後、トレーニングセンターの開設、産業向けの新たなアライアンス構築などが進められる見通しである。ヒューマノイドロボットの本格導入には現場運用ノウハウの蓄積だけでなく、法規制や倫理面への対応、既存従事者の再教育、オペレーション設計など複合的な課題への対応が求められる。人口減少と高齢化が進む日本の産業現場において、ロボットを活用した自動化・効率化の取り組みは、今後も拡大が続くと見込まれる。