女性エンジニアのキャリア支援に挑む──bgrass、プレシリーズAで1.25億円調達

女性エンジニアのキャリア支援に挑む──bgrass、プレシリーズAで1.25億円調達

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bgrass株式会社が、NEXTBLUE、WPower Fund、サイバーエージェント・キャピタルなどを引受先とする第三者割当増資および借入により、総額1億2500万円の資金調達(プレシリーズAラウンド)を実施した。

bgrassは2022年7月に設立されたスタートアップで、主に女性IT/Webエンジニア向けの転職サービス「WAKE Career」と、副業・フリーランス支援サービス「WAKEフリーランス」を展開している。WAKE Careerでは、企業の評価体制や働きやすさを独自の「ジェンダーダイバーシティ診断」により可視化し、求職者が客観的な情報をもとに職場選択できる仕組みを提供している。一方、WAKEフリーランスでは案件紹介にとどまらず、キャリア相談やコミュニティ形成など、フリーランス特有の孤立課題にも対応している。

bgrassのサービスは、「技術」「キャリア」「つながり」の三つの軸で支援を行う点が特徴とされる。「転職」「副業」「リスキリング」など、キャリアの多様なフェーズに応じたサポート体制を整備し、IT業界で働く女性の継続的なキャリア形成を後押ししている。また、AIを活用したスキル診断やキャリアアドバイス、イベントや勉強会との連携によるスキルアップ機会の提供も進めている。

代表取締役の咸多栄氏は、独立系SIerやWeb企業でエンジニアとしてのキャリアを積んだ後、フリーランスや自身の開発プロジェクトを経て起業した。もともと女性エンジニア向けメンタープラットフォームの個人開発から事業化に至り、現場の課題感や利用者の声をもとに、企業や社会構造そのものの変化を促すサービス提供へと発展させてきた。現在はCEO兼CTOとして経営全般やサービス開発を統括している。

IT業界全体では、人材不足が深刻化している。経済産業省の試算によれば、2030年にはIT人材が最大79万人不足する見通しが示されている。一方、IT分野における女性比率は2022年時点で2割弱にとどまり、ジェンダーギャップの解消が大きな課題となっている。多様な働き方の普及により女性の進出が進みつつあるものの、依然として構造的なギャップが存在する。そのため、bgrassのように女性を対象としたキャリア支援や人材マッチングを展開するスタートアップが増加している。

競合には、従来型の人材紹介サービスに加え、エンジニアコミュニティ運営、スキルマーケット、女性向けキャリア支援を手がける企業やスタートアップが存在する。bgrassは、企業環境の「見える化」に重点を置き、単なる人材紹介にとどまらないアプローチを特徴としている。同社によれば、WAKE Careerの「ジェンダーダイバーシティ診断」は、求職者のみならず企業側にもフェアに働ける企業としてPRできるメリットがある。

今回調達した資金は、既存サービスの拡充のみならず、新規事業「フェアパス(仮)」の開発にも投入される。同プロジェクトでは、企業の採用データを分析し、選考過程に潜在するバイアスやボトルネックを可視化、改善提案を行うツールの開発を進めている。採用の透明性向上やフェアな選考の仕組み化を目指し、テクノロジーを活用した業界標準の構築を目指す。

WAKE Careerやフェアパス(仮)は、企業のダイバーシティ推進を支援するツールとしての展開も進行中であり、パートナー企業や事業連携の動きもみられる。

IT業界における多様性と公平性の実現に向けた動きが加速する中、bgrassは女性IT人材のキャリア支援と企業の採用プロセス改革の双方に取り組むスタートアップとして、今後の動向が注視される。

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