TERASSがシリーズCで31億円調達、戦略的セカンダリー取引で事業拡大へ

TERASSがシリーズCで31億円調達、戦略的セカンダリー取引で事業拡大へ

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不動産仲介業のDXを推進する株式会社TERASSは、シリーズCラウンドで総額31億円の資金調達を実施した。リード投資家は農林中金キャピタルで、みずほキャピタル、Z Venture Capital、DGりそなベンチャーズ、住友生命、SBIインベストメントなども参加。今回の調達は、20億円の第三者割当増資と11億円のセカンダリー取引を組み合わせた「カクテルディール」によって実施された。

TERASSが採用した「カクテルディール」は、第三者割当増資による新株発行と、既存株主が株式を譲渡するセカンダリー取引を同時に行う手法である。CFOの森尾健一郎氏によると、従来のセカンダリー取引は株主側の都合(ファンドの償還期限など)で実施されることが多いが、今回は会社主導で戦略的に実施した点で「ほとんど過去に事例がない」取り組みだという。同氏は「上場後の株主構成を見据え、長期的な事業成長に寄与する新たな投資家を迎えるために、このスキームを活用した」と説明している。

今回のラウンドで新たに参画した投資家については、「金融機関やLINEヤフーを傘下に持つZ Venture Capitalなど、事業との親和性が高い企業を迎え入れた」と述べた。今後は、住宅金融を中心にした事業強化を図りつつ、金融業界や不動産情報プラットフォーム企業との連携を深め、顧客に対するサービス価値を高める戦略を描いている。

TERASSは2019年創業。「いい不動産取引は、いいエージェントから」を掲げ、宅建免許を有するエージェントが個人で活躍できるクラウドブローカレッジモデルを推進してきた。顧客が家を買う・売る過程の全工程に関わることができ、現在では約800名のエージェントを全国に展開。累計取扱高は4000億円に達している。

同社が取り組む課題のひとつは、日本の不動産業界の労働生産性の低さである。森尾氏は「米国の約4割の生産性しかない」とし、その非効率な構造が良質なサービス提供の阻害要因となっていると指摘。さらに、近年は物件価格や金利の上昇、情報過多による意思決定の困難さも加わり、消費者の負担は増している。こうした中、TERASSは正確な情報と高い専門性を持つエージェントを通じて、98%の顧客満足度を維持しながら成長を続けている。

2022年以降は住宅ローン領域に本格参入し、auじぶん銀行の銀行代理業務を展開。申し込みのDX化や事務手続きの簡略化により、他社仲介業者からの依頼も増えている。併せて、不動産会社向けには条件別に最適なローンを検索できるツール「Loan Checker」を無料で提供しており、業界全体の底上げを図っている。

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顧客・物件条件に合わせた最適な住宅ローンを検索・提案できる住宅ローンデータベースサービス(画像は公式HPより)

エージェント制度では、ノルマや一律の営業指示を廃し、各エージェントに「エージェントアドバイザー」と呼ばれるスーパーバイザーを配置。定期的な1on1面談を通じて「何を実現したいですか」という対話から、エージェント自身が目標を設定し、会社がそれを支援する体制を構築している。

加えて、同社の取り組みにより、エージェントの労働生産性も大幅に改善。AIなどを活用したTERASS独自のテクノロジーにより、1日平均9時間以上稼働するエージェントの割合が前職時63%から、TERASS参画後は9%へと54ポイント減少し、より効率的な働き方を実現している。

他社との違いについて、森尾氏は「そのエリアに強いエージェント1人採用できれば、勝手にそのエリアが強くなる」と説明。大手仲介業者が主要駅に店舗展開を前提とするのに対し、TERASSは「店舗がなければエリアを拡大できない」という従来の制約から解放された拡張性の高いモデルを構築している。これが全国展開の速さにつながっているという。

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TERASS独自開発の業務管理ツール「Terass Cloud」で、エージェントの時間を奪う事務作業を徹底的に自動化(画像は公式HPより)

今後の成長戦略としては、周辺事業の強化とM&Aを挙げており、既に賃貸管理事業については、もともとその事業を手がけていた会社をグループに迎え入れている。森尾氏は「機能と時間を買うM&Aは、今後の成長には不可欠」と語る。

中長期の目標としては、「独立系仲介事業者の中で売上」「エージェント数」「関連サービス提供数」の3分野でNo.1を掲げ、2027年までの達成を目指す。金融・住宅ローン・買取再販などの機能を一体化し、真にワンストップな不動産取引を実現する構想だ。

不動産は人生で最も大きな買い物であり、資産形成に欠かせない領域である。その意思決定の難易度が今後さらに高まる中、TERASSは優秀で生産性の高いエージェントの育成を通じて、消費者の合理的な選択を後押しする存在を目指す。

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