目次
はじめに
研究成果を事業に反映させる大学発スタートアップに注目が集まっている。国内における大学発ベンチャーの数は、2021年度調査から477社増加し2022年度には3782社となった※。
その中でも、東京大学発のスタートアップが多いことは想像に難くない。そのほかの有名大学と並び、多くのスタートアップを輩出するのが東北大学だ。東北大学発のベンチャーは2022年度で179社、国内大学で6位となっている。
東北大学発の企業の成長は、雇用の創出や地域経済の活性化への影響も期待される。
スタートアップ7選
株式会社3DC
カーボン新素材「グラフェンメソスポンジ(GMS)」を開発する。GMSは、従来の炭素原子が六角形の格子状に結びついた原子1個分の厚さのシート状の物質であるグラフェンに対し、グラフェンと同様の厚さでありながらスポンジのような三次元構造を備えた物質。
2050年のカーボンニュートラル社会の達成に向け、エネルギーの電化を支える次世代電池の開発に向けた取り組みを目指す。2022年5月には、リアルテックファンドを引受先とする資金調達を実施した。
スピンセンシングファクトリー株式会社
トンネル磁気抵抗効果(TMR)を超高感度な磁気センサやモジュールとして実用化することを目指し、医療機器やヘルスケアを中心とした分野への磁気センサの応用に取り組むセンサメーカー。
東北大学の安藤康夫教授と中里信和教授が、世界で初めてTMR素子の作製に成功した宮崎照宣名誉教授と共同で設立した。
株式会社クリーンプラネット
二酸化炭素を一切排出せず、原子力発電で懸念される暴走事故の危険性もない、クリーンで安全な新たなエネルギー「Quantum Hydrogen Energy(量子水素エネルギー)」の開発と普及に取り組む。
2015年に東北大学と共同で設立した同大学電子光理学研究センター内「凝縮系核反応研究部門」を拠点に、安価で環境負荷の少ないとされる「新水素エネルギー」の実用化に取り組んでいる。 英会話のGABAを創業し、売却した吉野英樹氏が設立した。
2022年7月には、三菱商事と業務提携を締結し、同社を引受先とする第三者割当増資により資金調達を実施した。
株式会社レボルカ
タンパク質工学とAIによる機械学習を組み合わせた「aiProtein技術」を用いたバイオ医薬品等の開発をしている。東北大学工学研究科の梅津光央教授が構築した進化工学と機械学習の組み合わせによるライブラリーデザインサイクルを用いて、高効率なタンパク質設計を行う。
2022年5月には、シリーズAラウンドにてSBIインベストメント、東北大学ベンチャーパートナーズを引受先とした第三者割当増資による、3.5億円の資金を実施した。
ファイトケミカルプロダクツ株式会社
植物から抽出された成分を利用して、機能性のある食品、化粧品、医薬品の原料、および様々な脂肪酸エステルを製造販売し、それに関連する製造装置の設計、製作、販売を行う。今後は、植物由来の機能成分であるステロールやスクアレンなどの分離・回収技術、および非水溶性エステルの製造技術の開発を進める予定だ。
2022年4月には、渡辺ケミカル、および他1社を引受先とした第三者割当増資による3770万円の資金調達を実施した。
株式会社ElevationSpace
小型人工衛星を用いて宇宙実験などを支援する。東北大学吉田・桒原研究室で開発してきた10機以上の小型人工衛星の技術をもとに、人工衛星内で実験や製造等を行うことのできる小型宇宙利用・回収プラットフォーム ELS-Rの開発をする。ELS-RSは、国際宇宙ステーション(ISS)等の地球低軌道拠点から物資を持ち帰る回収サービスだ。誰もが宇宙で生活できる世界を創り、人の未来を豊かにすることを目指す。
2022年3月には、シードラウンドにて第三者割当増資による3.1億円の資金調達を実施した。
株式会社NeU
東北大学加齢医学研究所の「認知脳科学知見」と、日立ハイテクノロジーズの「携帯型脳計測技術」とが融合して誕生した企業。長年培ってきた脳科学の知見と技術を軸として、社会の様々な分野で人にフォーカスしたソリューションを展開。
脳のトレーニングメニューの提供、働き方改革支援、企業向けコンサルティングサービス、研究用機器の販売といった、脳科学を応用したサービスを提供している。 脳科学でQuality of Lifeの向上に貢献することを目指す。
おわりに
東北大学発のベンチャーは、革新的なアプローチと研究者の知識を融合させ、未来に向けて前進している。さらなる発展で産業や社会に豊かな価値をもたらすことがが期待され、今後も一層の注目が集まるだろう。
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※経済産業省 「令和4年度 大学発ベンチャー 実態等調査 調査結果概要」