はじめに
日本の経済が持続的な発展を続けていくためには、イノベーションの連続的な創出が必要とされる。大学発ベンチャーは、大学に潜在する研究成果を掘り起こし、新規性の高い製品により、新市場の創出を目指す「イノベーションの担い手」として高く期待されている。
経済産業省※によると、大学発ベンチャーは2021年度調査から447社増加し、現在3782社。2014年度以降7年連続で企業数が増加しており、今後もさらなる拡大が期待されている。
日本の大学発のスタートアップで最も企業数が多いのは、東京大学発スタートアップだ。ICT とライフサイエンス・ヘルスケアのそれぞれが全体の約 1/3 を占め、残りの 1/3 はデバイス、素材、環境、エネルギーなど。東京大学発スタートアップの現状やカオスマップ・注目企業について、KEPPLEでは詳細なレポートを公開している。
スタートアップ5選
東京大学発の上場企業としてはユーグレナなどが挙げられるが、今回はスタートアップ5社を紹介する。
エレファンテック株式会社
「新しいものづくりの力で、持続可能な世界を作る」ことを目指す。環境に優しい金属インクジェット印刷による電子回路基板の量産化に人類で初めて成功。必要な部分にのみインクジェットで金属ナノ粒子を印刷し、さらに無電解めっき技術で金属を成長させる「P-Flex®」を開発。
既存の製法より製造工程が少なく、環境負荷の大幅削減・コストパフォーマンスの向上を実現する技術で、既存製法に比べてCO2の排出を75%、水消費を95%削減できる。インクジェット技術でエプソンと提携。3D回路形成やセンサ製造、自動車向けの応用などにも取り組んでいる。
2023年5月、第三者割当増資による9億円の資金調達を実施した。
エレファンテック株式会社
設立:
2014年
企業HP:
scheme verge株式会社
国内外の旅行者へ向けて、最適なアート旅をおすすめするスマートフォンアプリ「Horai」を開発。 写真から好みのアートサイトをアプリHorai内で選ぶと、瀬戸内の島をめぐる旅程を簡単に作成できる。乗り合い海上タクシーを予約することが可能で、直島、小豆島、犬島などの島々に対応している。また、全国各地のアートプロジェクトの連携及び周遊パスの提供を進めている。
2022年3月には、株式会社サンケイビル、三菱UFJキャピタル8号投資事業有限責任組合を引受先とした第三者割当増資による資金調達を実施した。
scheme verge株式会社
設立:
2018年
企業HP:
セレイドセラピューティクス株式会社
ヒト造血幹細胞の増幅技術を用いた再生医療製品を開発する。これまで困難であったヒト造血幹細胞の体外での大量培養に成功したことで、採取される造血幹細胞数の少ない臍帯血と末梢血を最大限に活用し、白血病などの血液がんや遺伝子治療への実用化を目指す。
2022年9月にはシリーズAラウンドにて、UTEC5号投資事業有限責任組合、筑波SBI地域活性化ファンド投資事業有限責任組合、テクノサイエンスを引受先とする第三者割当増資による5億円の資金調達を実施した。
セレイドセラピューティクス株式会社
設立:
2020年
企業HP:
株式会社JDSC
AIによるデータ分析やアルゴリズムの開発によって企業経営や業務プロセスにおける課題解決のための機械学習等を活用したアルゴリズムモジュールの開発と、ライセンス提供事業、IT システムの開発と運用をする。
データサイエンスに関する顧問・コンサルティング事業も手がける。 ビジネスモデルの構想からデータ取得、AI 構築、システム実装に至るまで、プロセスを一貫して手がけることで、低コストかつ、より高い収益率を実現。データサイエンス、テクノロジーを駆使し、生産性を高め、産業の仕組みを革新することを目指している。
2020年10月にはシリーズBラウンドにおいて、第三者割当増資による約29億円の資金調達を実施した。
株式会社JDSC
設立:
2018年
企業HP:
株式会社Liquid Mine
全ゲノム解析と、白血病の再発モニタリング検査システム「MyRD®」を販売する。MyRD®は、患者ごとに骨髄液から作製した検査薬を用いて、採取した血中の白血病の原因となる遺伝子の変異を検出する。骨髄穿刺や骨髄生検などの痛みを軽減し、より患者の身体的負担をなくす。
2022年12月、プレシリーズAラウンドにて、エースタート、Gemseki、インキュベイトファンドを引受先とする1億円の資金調達を実施した。
株式会社Liquid Mine
設立:
2019年
企業HP:
おわりに
東京大学発のスタートアップは、革新的なアイデアと高度な技術で研究・開発を進めていることから、今後もさらに注目が集まりそうだ。
==========
参考:経済産業省 「令和4年度産業技術調査事業 大学発ベンチャーの実態等に関する調査」