海上インフラの次世代制御に挑む──Oceanic ConstellationsがA2ラウンドで12億円を調達

海上インフラの次世代制御に挑む──Oceanic ConstellationsがA2ラウンドで12億円を調達

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株式会社Oceanic Constellationsは、シリーズA2ラウンドで第三者割当増資による総額12億円の資金調達を実施した。

Oceanic Constellationsは2023年11月に設立されたスタートアップであり、複数のUSVを連携・制御するネットワーク基盤「海の衛星群(Oceanic Constellations)」の開発を進めている。広範囲の海域に多数のUSVを配置し、リアルタイムでセンシングやモニタリング、海洋インフラのデータリンクなどを行うことで、海洋監視や防災、資源開発といった多様な用途に対応する。設立から間もなく、複数機体による実証実験を海上で実施しており、現在も試作モデルの開発と機能検証が続いている。今後は新型試作機の開発、量産仕様機の実装に進む計画を示している。

代表取締役CEOは小畑実昭氏と本田拓馬氏の共同体制で、創業メンバーとしてCFOの萩野谷尚志氏が加わる。小畑氏はゴールドマンサックス証券などファイナンス分野での経験を持つ。本田氏はITおよびロボティクス、スタートアップ経営の現場で実務経験を積んでおり、萩野谷氏はファイナンスや企業経営に関するキャリアを有する。創業メンバーは宇宙・IT・アカデミック・自動車など異分野から集まっている。

無人水上艇(USV)を活用した海洋監視・調査技術は、国内外で注目を集めている。その背景には、沿岸部の人手不足や密漁監視、海難事故対応、防災強化、さらに洋上風力・太陽光など再生エネルギー施設の保守ニーズ拡大がある。国連のGlobal Ocean Science Report 2020によれば、世界の海洋調査分野への投資や技術革新は拡大傾向にあり、特にアジア大洋州地域においてはUSVやセンサーを連携させたソリューションへの需要が高まっている。日本の排他的経済水域(EEZ)は約447万平方キロメートルと世界第6位の規模を持ち、広域な監視活動の効率化が課題となってきた。現状では有人船や固定式の観測ブイへの依存が大きく、コストや頻度、リスク面で制約があった。加えて、サイバーセキュリティ、インフラの安全運用、船舶自律運航の法整備、船体保険など新たな課題も浮上している。

自社のUSV群制御システムを活用することで、広範囲かつ高頻度な海上センシング、防災データのリアルタイム収集、密漁や密航の早期発見、ロケット落下物の回収支援など複数のニーズに対応可能としている。防災分野では津波監視用の潮位データ取得、保安分野では少人数での高効率監視体制、資源分野では再生可能エネルギー関連施設のモニタリングを用途として想定している。

今回の資金調達は、シリーズA1・A2ラウンドに分かれて実施された。A1ラウンドではグロービス・キャピタル・パートナーズとCoral Capitalが中心となり5億円を調達。A2ラウンドではグロービス・キャピタル・パートナーズ、Coral Capitalに加え、エースタート、東京海上日動火災保険、グリーンコインベスト投資事業有限責任組合が新たに参加し、12億円を調達した。これによりシリーズA全体で17億円となった。調達資金は主に量産モデルの設計開発、ネットワーク構築と検証、社会実装に向けたパートナー連携に充てる方針だ。

技術開発面では、実機USVから収集した環境データをもとに仮想機体を生成し、現実と仮想を混在させて群制御する「XRコンステレーション」システムの開発も進んでいる。これにより、現実的なマルチエージェントシナリオの検証やAIトレーニング、法令順守のテストなどが効率的に行える基盤となる。ロケット落下物回収は日本郵船との共同検討、保険リスク分析は三井住友海上や東京海上日動火災保険との連携、研究開発は海洋研究開発機構など複数の研究機関とも協力が進んでいる。

今後は改良型試作機の量産化や、サービス提供範囲の拡大、防災・エネルギー・宇宙産業など多分野におけるパートナーシップ構築が進められる見通しである。国内ディープテック分野での大規模調達となった今回の動きは、広大な海域を有する日本の海洋監視やインフラ管理の効率化に向けた新たな選択肢となる。商業化を進めるうえでは、法制度や保険、海外競合との技術開発競争への対応も今後の課題となる。

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