無人小型衛星で実証を加速、ポストISS時代の宇宙環境利用プラットフォームに──ElevationSpace

無人小型衛星で実証を加速、ポストISS時代の宇宙環境利用プラットフォームに──ElevationSpace

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KEPPLE編集部

目次

  1. 宇宙環境を活かした実証実験プラットフォーム
  2. 大気圏への再突入・回収技術に強み
  3. 「宇宙建築」との出会いが宇宙にハマるきっかけに
  4. 目指すは年6回の衛星打ち上げ、将来的には宇宙船開発も

小型人工衛星を開発するElevationSpaceがシリーズAラウンドにて、14億円超の資金調達を実施したことを明らかにした。

今回のラウンドでの引受先は、Beyond Next Venturesやニッセイ・キャピタル、ココナラスキルパートナーズなど。金融機関等からの融資も含む。

今回の資金調達により、開発中の人工衛星「あおば」の2026年打ち上げに向けた研究開発を加速する。

宇宙環境を活かした実証実験プラットフォーム

宇宙空間という特殊な環境を利用した実験や研究で大きな役割を果たしてきたISS(国際宇宙ステーション)は、老朽化や維持コストの問題から2030年の運用終了が計画されている。

ISSが運用終了に向かう中、宇宙環境を利用した企業の実験・実証の支援に取り組む宇宙ベンチャーがElevationSpaceだ。

同社が提供を予定しているのは、開発する小型人工衛星に物資を搭載して打ち上げ、地球低軌道上で実証を行ったのちに地球へ帰還させて回収するサービス。小型・無人のプラットフォームとして提供するため、高頻度・短リードタイムで利用できる特徴がある。また、ISSや民間の宇宙ステーションなどから物資を持ち帰るサービスも提供する。

今回の資金調達に際して、代表取締役CEO 小林 稜平氏に、今後の展望などについて詳しく話を伺った。

大気圏への再突入・回収技術に強み

―― 御社が解決に取り組むのはどのような課題なのでしょうか?

これまでの宇宙環境を利用した実験・実証は政府主導のプログラムが中心で、有人で行われていました。年に一度あるかないかというほど頻度が低いうえに、厳戒な安全基準が求められ、実験開始までに数年の準備が必要となるなどリードタイムが長い課題があります。

加えて、たとえばISSへ荷物を定期的に輸送することはあっても、実験後にペイロード(物資)が地球に戻ってくる機会は限定的です。宇宙飛行士が大型の輸送船を使って帰還する際に積載されて戻ってくる程度で、回収機会はそれほど多くありません。そうすると取得データも限られてしまい、実験に何か不具合が生じても原因究明が困難になってしまいます。

こうした課題に対して、無人小型衛星を高頻度で打ち上げることができれば、数年かかる宇宙での実証実験が半年〜1年に短縮できると考えています。高頻度で宇宙環境を利用したトライアンドエラーができるようになるというのが我々が提供するサービスの大きな特徴です。

代表取締役CEO 小林 稜平 写真
代表取締役CEO 小林 稜平氏

―― なぜ御社はこうしたサービスの提供を実現できると考えているのでしょうか?

そもそも、日本は宇宙開発において先進的に取り組んでいる国です。米国やロシアが大型の宇宙船開発などで世界をリードしているのに対し、日本は小型衛星の開発を進めており、衛星を狙った場所に制御しながら帰還させる揚力誘導という技術に強みを持っています。当社には宇宙開発の経験豊富なメンバーが在籍しており、揚力誘導のような世界に誇れる技術を活用して事業化できる体制ができている。これはグローバルにおいても我々だけが持っている強みだと考えています。

しかしながら、一つの要素技術だけではなく、複合的な知見が求められるのが宇宙開発の難しいポイントです。衛星を作れるのは当たり前で、帰還のための高性能なエンジンや制御技術など、これまでにない技術が多く求められるのです。だからこそプロジェクトを進めるには実績やノウハウが求められます。我々はこれまでに15機以上の小型衛星開発の実績がある東北大学や、JAXAの協力を得て技術的な知見も取り入れながら、目指す世界観の実現に向けて取り組んでいます。

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「宇宙建築」との出会いが宇宙にハマるきっかけに

―― 創業のきっかけは?

私は高校専門学校の出身で建築を学んでおり、最初から宇宙について強い関心を持っていたわけではありませんでした。その頃にインターネットで「宇宙建築」という分野を知り、強い興味を持ったことが創業の大きなきっかけです。

人類が宇宙に出ていくというのはイメージしやすいものの、宇宙に建築物を作るという観点の取り組みはまだまだこれからです。自分自身、世界に誇れる建築物やプロジェクトに関わりたいという思いを持っていたこともあり、「宇宙空間に建築物を作る」という可能性の大きな領域にのめりこんでいきました。

東北大学在学時には、2018年の宇宙建築賞において「宇宙資源開発施設」というテーマの課題で小林氏の所属チームが最優秀賞を受賞した。画像は発表の一部
東北大学在学時には、2018年の宇宙建築賞において「宇宙資源開発施設」というテーマの課題で小林氏の所属チームが最優秀賞を受賞した。画像は発表の一部(提供:ElevationSpace)

―― 今の事業はどのように着想したのでしょうか?

宇宙建築と一口に言っても、人が生活することを考えれば、水や食糧などのインフラ整備や物資の運搬など、まずはあらゆる産業を巻き込んだエコシステム作りが必要になると強く思っています。

あらゆる産業が宇宙に進出するための第一歩として欠かせないのが宇宙環境での実証・実験であると考えて、この事業領域に着目しました。

目指すは年6回の衛星打ち上げ、将来的には宇宙船開発も

―― 資金調達の使途について教えてください。

2026年の打ち上げを目指している「あおば」という衛星があります。衛星はさまざまな試験を経てやっと打ち上げに至るもので、実際の打ち上げだけではなく、試験のためのモデルを用意する必要もある。そうなるとかなりの費用が必要になります。資金の大半は、この打ち上げに向けた研究開発と人材採用に充当する予定です。

―― 今後の長期的な展望を教えてください。

まずは「あおば」の打ち上げを成功させ、2030年頃には2か月に1回のペースで衛星の打ち上げ、サービス提供できる状態にすることが目標です。

私たちは「誰もが宇宙で生活できる世界を創り、人の未来を豊かにする」というミッションを掲げています。そのためにもまずは企業に実証・実験の場を提供することに取り組んでいますが、徐々にエコシステムが形成されていくのと同時に、宇宙構造物を作るといった事業展開も想定しています。その先には、官民共同で有人宇宙船の開発を実現するという目標もあります。

誰もが宇宙で暮らせる未来の実現には、これからも多くの資金が必要です。今まではVCを中心に資金調達を行ってきましたが、今後は協業を見据えた事業会社からの調達も増やしていきたいと思っています。これからあらゆる業界企業が積極的に宇宙ビジネスに参加する時代が必ず来ると考えていますので、次のラウンドに向けて多くの方々とお話ししていきたいと思います。

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