【DAY1】始動した“都市×テクノロジー”の祭典──SusHi Tech Tokyo 2025開幕レポート

5月8日より東京ビッグサイトで開催されているスタートアップカンファレンス「SusHi Tech Tokyo 2025」。その柱企画である国際ピッチコンテスト「SusHi Tech Challenge 2025」では、世界46の国・地域から657社がエントリーし、最終的に7社がファイナルへ進出。激戦を制し、グランプリに輝いたのは、ゲル金属3Dプリント技術で冷却・水素製造領域に革新をもたらす3D Architech(日本)だった。
「SusHi Tech Challenge」は、持続可能な都市の実現に貢献するスタートアップを対象にしたピッチイベントである。2025年は世界46の国・地域から657社が応募し、セミファイナルを経て、7社がファイナルに登壇。優勝企業には賞金1000万円が授与される。
前回2024年の開催では、世界38の国・地域から応募があり、ファイナリストには脱炭素、食糧、ヘルスケア、エネルギー分野のスタートアップが選出された。優勝は、AIによる腸内解析を行うイスラエル発スタートアップ「Imagene」が受賞し、その後日本企業との提携や資金調達の加速など実績を残している。
登壇者:David Castaneda 氏(CEO)
Inspeklyは、Lidarスキャンやスマホで施設の3Dモデルを生成し、建物保守・点検を支援するSaaS型のファシリティマネジメントサービスを展開。作業手順を空間上に表示し、スマートグラスでガイドすることで、業務の効率化と教育の省力化を実現。すでにメキシコや香港など複数国で導入されており、日本市場への展開も進めている。
登壇者:Sean Matsuoka 氏(共同創業者 兼 CEO)
General Prognostics(GPX)は、心不全患者の再入院リスクを減らすための血液バイオマーカー測定とAIによる診断支援ソリューションを開発。指先から採取した血液を用い、NT-proBNPの濃度変化を非侵襲でモニタリングできる。Mayo Clinicなど複数の臨床施設で実績を持ち、日本でもAMED支援のもと臨床試験が進行中。
登壇者:Jeyran Hezaveh 氏(共同創業者 兼 CEO)
AVAtronicsは、従来のANC(アクティブノイズキャンセリング)技術では対応しきれない高周波領域までをカバーする広帯域ノイズ制御技術を開発。ヘッドフォンや車載スピーカーへの搭載を想定したライセンスモデルで展開中であり、大手半導体・音響機器メーカーと提携を進めている。
登壇者:Ami Sugiyama 氏(共同創業者 兼 CEO)
SECAI MARCHEは、農家とレストランを直接つなぐB2B食材流通プラットフォームを提供。自社開発の需要予測AIや低温物流網を活用し、マレーシア国内の高級飲食店を中心に約1800店舗以上と取引。平均月間取引頻度は7〜8回、売上は毎年200%以上で成長中。
登壇者:Moody Soliman 氏(共同創業者 兼 CEO)
Ryp Labsは、植物由来の天然成分を活用した「延命ステッカー」で果物や野菜の鮮度を保持する技術を展開。Walmartや日本の流通企業と提携し、導入先では40〜100%の鮮度延長効果を実証。すでに30カ国以上で展開しており、量産と収益性の両立を図っている。
登壇者: 飯田 百合子(Yuriko Iida)氏(取締役 兼 Chief Global Officer)
Emulsion Flow Technologiesは、日本原子力研究開発機構の技術を応用し、リチウム・コバルトなどの希少金属を常温かつ高効率で抽出する「エマルションフロー抽出」技術を展開。製造業やリサイクル業者との連携を通じて、日本国内外での実証・事業化を推進中。
登壇者:成田 海(Kai Narita)氏(共同創業者 兼 CEO)
3D Architechは、独自の「ゲル金属3D製造技術」により、10マイクロメートル単位で微細構造の金属部品を造形できるハードテックスタートアップ。光で造形したゲルを金属化する製法を活用し、データセンター向け冷却プレートや水電解セル部材の高性能化を実現する。従来技術と比較して冷却効率50%、製造コスト30%の改善効果があり、グローバル展開に向けた量産開発が進んでいる。
ファイナルラウンドでは、国内外の有力VCやディープテック領域に精通した投資家らが審査員として登壇。社会課題へのアプローチ、技術の実装力、グローバルな市場展開の可能性を中心に、多角的な評価が行われた。
SusHi Tech Challenge 2025のグランプリには、日本の3D Architechが選ばれた。光造形によるゲル金属製造技術を武器に、データセンター冷却やグリーン水素製造における課題解決を提示し、審査員からは「技術力と社会実装のバランスが高く評価された」との声が上がった。
受賞後、共同創業者 兼 CEOの成田海氏は次のようにコメントした:
「グランプリに選出いただき大変光栄です。本イベントの運営の皆様、審査員の皆様、そして共に挑んだスタートアップの仲間たちに感謝します。私たちはまだスタート地点に立ったばかりですが、必ずこの技術を社会に実装し、より持続可能な未来に貢献していきます。」
また、ファイナリスト7社のうち複数社が企業賞(Corporate Partner Award)を受賞。3D Architechは三菱地所、Ryp Labsは東京建物、SECAI MARCHEは三井不動産といった大手企業との協業の可能性を示し、今後の事業展開に期待が集まっている。
東京都知事・小池百合子氏は閉会挨拶で「SusHi Tech Challenge 2025は大きな成功を収めました。全20チームの素晴らしい挑戦に感謝します。」と述べ、「この場を新たな挑戦の発射台として、さらなる成果につなげてほしい。」と参加者にエールを送った。
なお、明日10日には一般公開の「パブリックデイ」が予定されており、国際宇宙ステーションとリアルタイムでつながる大西宇宙飛行士との中継や、全国の中高生によるSusHi Tech チャレンジなど、多彩なプログラムが展開される予定だ。
SusHi Tech Tokyoは来年2026年も東京ビッグサイトでの開催が予定されており、日程は4月27日〜29日。首都・東京が世界のスタートアップと共に描く“持続可能な未来都市”の進化は、今後も続いていく。
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