ライドシェア新興のnewmo、12億円を追加調達──自動運転タクシーにも本格参入へ

ライドシェア新興のnewmo、12億円を追加調達──自動運転タクシーにも本格参入へ

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モビリティ領域のスタートアップnewmo株式会社が、シリーズAラウンド12億円の資金調達を実施した。これにより、シリーズAラウンドでの累計額は179億円となった。全国の金融機関系ベンチャーキャピタルやベンチャーキャピタル各社が出資し、設立から約1年で大規模な資金を集めた形だ。newmoは今後、自動運転タクシー事業への本格参入も発表している。

newmoは、タクシー・ハイヤー事業の運営、配車アプリ「newmo」の提供、ライドシェアおよびドライバー向けカーリース事業を柱とする。大阪をはじめ、全国主要都市で交通手段の確保が課題となる地域を中心にサービスを展開している。2025年度中には、全国主要地域で3000台規模のタクシーおよび1万人ドライバー体制の構築を計画している。

newmoの代表取締役CEOは青柳直樹氏。グリー取締役やメルカリ取締役などを歴任した後、2024年1月に新たに同社を設立した。青柳氏はタクシー運転免許も取得しており、自ら現場の課題を体験して事業構想を練ってきた経緯がある。共同創業者にはUber EatsやWolt立ち上げ経験者のCOO、証券会社やスタートアップファイナンス出身のCFOなどが名を連ねており、投資銀行やIT、金融など多様なバックグラウンドを持つメンバーが経営に参画している。

日本のタクシー・ライドシェア業界は、ドライバー不足と需要回復という二重の課題に直面している。国土交通省の統計によると、タクシードライバー数は15年で約半減し、約23万人となった。一方で、コロナ禍を経て都市部や観光地を中心に需要は急回復し、特に大都市では「タクシーがつかまりにくい」状況が常態化している。加えて、地方では公共交通の縮小や人口減少が進み、「移動難民」と呼ばれる交通困難層の増加も深刻化している。

こうした業界環境を背景に、newmoは大阪・関西万博を契機として大阪エリアでのタクシー会社のM&Aや業務提携を加速。2024年時点で大阪府内3社のタクシー事業者を傘下に収め、車両台数1000台超、従業員1500人超の規模に拡大した。配車・決済アプリの提供や、一般ドライバーによるライドシェアの登録制リースシステムなど、テクノロジーを積極的に活用した運営も特徴となっている。

今回のシリーズAラウンドには大手ベンチャーキャピタル、12の金融機関系ベンチャーキャピタルが新規で参加。newmoはこの資金を、AIや自動運転技術の開発、および事業拡大のための投資に充てる方針だ。同社は自動運転ソフト開発のティアフォーと協業し、2027年を目標に大阪府内で100台規模のレベル4(条件付き完全自動運転)タクシーの商用化を目指すと発表している。レベル4は、特定条件下で人の操作なしに自動運転が可能となる技術を指す。

国内ライドシェア市場では、Uberや日本交通(S.RIDE)、GO(Mobility Technologies)などが競合している。海外を含むライドシェア市場は年々成長が続いており、2024年には1177億米ドルに達し、2032年には4360億米ドル規模まで拡大する見通しだ。ただし、日本市場では規制やタクシー事業者との調整、雇用の安定確保・安全管理といった独自の課題も多く、サービスモデルのローカライズや現場対応力が競争上のポイントとなる。

newmoによれば、国内他社との違いは「配車アプリ提供のみならず、タクシー会社のM&Aによる供給力拡大やドライバー支援の金融サービス、地域運行の垂直統合」にあるという。ドライバー未経験者向けにリース・研修・アプリ連動型の営業支援を組み合わせるなど、多様な働き方への対応も進めている。

調達した資金は、全国主要地域への展開拡大、自動運転技術の現場導入、システム開発強化、グループ内タクシー事業者の経営改善等に充てる計画である。大阪万博での需要増加が見込まれる中、需要の定着や他都市への事業展開、AIや自動運転技術の安全管理への実装、既存タクシー業界や雇用との調整が今後の焦点となる。

スタートアップによる地域交通インフラの再設計には、法規制やステークホルダー間の調整といった課題も残る。都市部・地方双方での需給ギャップの解消や、多様な雇用創出、安全性確保、環境負荷低減など、複数の社会的課題を同時に解決できるかが今後問われることとなる。

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