ディープテックが切り拓く日本の未来──「TECHNIUM Global Conference」初開催

ディープテックが切り拓く日本の未来──「TECHNIUM Global Conference」初開催

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KEPPLE編集部
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東京・日比谷の一等地に建つ帝国ホテル東京。荘厳で伝統を感じさせる佇まいの中にも、現代的な洗練が溶け込んだこのホテルでは、普段は着飾った宿泊客たちが晴れやかな表情で行き交っている。しかし、この日ばかりはいつもと異なる空気が流れていた。

ホテル奥のカンファレンスホールには、ディープテックが描くまだ見ぬ世界への熱気と期待感が渦巻き、スタートアップ経営者や最前線の研究者、著名な投資家ら約2000名が国内外から集結していた。

2025年5月7日(水)・8日(木)の2日間、日本最大級のディープテック特化型国際カンファレンス「TECHNIUM Global Conference 2025」(以下、TECHNIUM)が開催された。約500に上る国内外の研究シーズやスタートアップが次々と紹介されたほか、会場内では、新技術の実用化やグローバル展開を目指す熱のこもった議論や交流が至る所で繰り広げられた。

日本発のディープテックの躍進に向けて

初開催となったTECHNIUMは、Beyond Next Ventures、博報堂、CoA Nexus、Corundumの4社を中心とする実行委員会によって企画・運営された。

近年、世界各国でディープテック分野への投資が活発化する中、日本でも科学技術に基づくイノベーションの重要性が改めて注目されている。特に、人工知能(AI)、バイオテクノロジー、宇宙開発、クリーンテックといった領域では、欧米やアジア諸国が積極的に技術の事業化を進めており、国際的な競争が一段と激しくなっている。

日本国内に目を向けると、スタートアップへの資金供給は以前と比べて拡大傾向にあり、政府もスタートアップ振興策を積極的に推進している。加えて、大企業によるオープンイノベーションの取り組みも活発化しており、産官学の連携体制は着実に整備されつつある。

一方で、ディープテック分野においては、技術の実用化や国際競争力の強化に向けて、産官学の連携をより一層深め、加速させる必要がある。

こうした状況に応える形で開催されたTECHNIUMは、これまでのスタートアップイベントとは一線を画している。ディープテックに特化している点もさることながら、参加者は一般的なスタートアップイベントに見られる起業家や投資家のみならず、政府・省庁関係者、大学・研究機関の研究者、大企業のオープンイノベーション担当者など多岐にわたる。また、海外からの参加者も多く、初回開催にもかかわらず、国際色豊かなカンファレンスとなった。

会場写真

産官学が交差する知のプラットフォーム—TECHNIUMが創出した2日間

TECHNIUMでは2日間にわたり、多様な参加者が交流し、知見を共有するためのさまざまなコンテンツが展開された。

メインステージおよび各分野に特化したサブステージで行われたセッションでは、国内外の著名な起業家や投資家、政府関係者らが登壇し、ディープテックを取り巻くトレンドや今後の展望について議論が展開された。

初日(5月7日)には、「日本のtop tier VCが語るディープテックエコシステム:20年の歩みとこれからの挑戦」と題したセッションで、日本を代表するVC経営者らが、日本におけるディープテック投資の過去20年の変遷と今後の課題について語った。また「US VC Trends Shaping Tomorrow’s Startups」として、米国の主要VCが米国におけるディープテックのトレンドや日本のディープテック市場への期待を語った。

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さらに「日本の産業政策リーダーが語る、スタートアップ躍進の青写真」では、内閣府、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、東京都のスタートアップ支援を推進するリーダーが一堂に会し、日本政府や地方自治体が進めるスタートアップ支援施策や、各省庁が連携した今後の産業政策の方向性について議論がなされた。

そのほか、2日目(5月8日)には、「India: The world's next deeptech darling Startup destination」や「食のイノベーションと市場拡大—フード・アグリテックの未来図」など幅広いテーマのセッションが行われた。

セッションと並行して行われた「Showcase」では、大学や研究機関から集まった技術シーズ、国内外のスタートアップがそれぞれの研究成果や事業内容をエレベーターピッチ形式で発表した。バイオテクノロジーや宇宙、人工知能、ヘルスケア、クリーンテックなど幅広い分野から集まった研究者や起業家が次々に登壇、参加者にとっては最新の技術トレンドを知るだけでなく、自社との協業や投資機会を発掘する機会となった。

登壇写真

また、今回のTECHNIUMでは、「100件の新規事業創出」を目標に掲げ、新たなビジネスの出会いの場としての機能を重視した。専用のイベントアプリを導入し、参加者同士が事前にマッチングを行ったうえで、会期中に個別ミーティングを実施できる仕組みを整備。参加者の高い意欲も後押しし、2日間で約1000件の面談が行われた。

日本発イノベーションを牽引するディープテックへの期待

初開催となった『TECHNIUM Global Conference 2025』は、日本発のディープテックを世界へ発信し、産官学の連携を深める重要な第一歩となった。

伝統的な企業が数多く存在する製造業と親和性が高いディープテック領域のスタートアップが成長することで、日本のスタートアップエコシステムのみならず、経済競争力が底上げされることへの期待が高まる。

日本のディープテック企業が持続的に成長し、国際競争力を持つためには、産官学の連携をさらに強化する必要がある。特に、政府や地方自治体による政策的支援や、大企業のオープンイノベーションの一層の推進、そしてグローバルVCとの連携強化など、多面的な支援体制を築いていくことが求められる。

主催者であるBeyond Next Venturesをはじめとする実行委員会は、来年のTECHNIUMの開催を決めている。継続的な取り組みを通じて、日本発のディープテックが世界のイノベーションを牽引するようなエコシステムが構築されることが期待される。

初回開催を成功させたTECHNIUM。その小さな、しかし確かな一歩は、日本のディープテックが世界の舞台で存在感を放つための重要な起点となった。今後、この場からどのような成果やイノベーションが生まれるのか――さらなる展開に注目したい。

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