モースマイクロ、シリーズCで8800万豪ドル調達──Wi-Fi HaLowチップで「IoT 2.0」を牽引

モースマイクロ、シリーズCで8800万豪ドル調達──Wi-Fi HaLowチップで「IoT 2.0」を牽引

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オーストラリア発の半導体スタートアップ、モースマイクロ(Morse Micro PTY. LTD.)はシリーズCラウンドで8800万豪ドル(約5900万米ドル)の資金調達を実施した。同ラウンドにはメガチップス、ナショナル・リコンストラクション・ファンド、ブラックバード、メイン・シーケンス、ユニシードなどの投資家が参加した。

同社は2016年設立のファブレス半導体メーカーで、主にIEEE 802.11ah規格に基づく「Wi-Fi HaLow」対応の無線チップを開発している。ファブレスとは自社で製造設備を持たず、設計と開発に特化する形態を指す。Wi-Fi HaLowはサブギガヘルツ帯(主に900MHz帯)を利用することで、従来の2.4GHzや5GHz帯Wi-Fiに比べて通信距離の大幅延長や低消費電力化が可能になる規格である。

モースマイクロのMM6108やMM8108などのチップは、スマートホーム、産業オートメーション、セキュリティカメラなどのIoT分野で利用されており、長距離通信や省電力性を活かし、電池交換なしで長期間稼働するIoTデバイスが実現できる。

経営トップはCEO兼共同創業者のマイケル・デニル氏と、CTO兼共同創業者のアンドリュー・テリー氏。両氏はBroadcomなどで無線半導体の開発経験を持つ。マイケル・デニル氏は、「IoTの未来は、長距離・低消費電力・安全性を備え、かつスループットを実現する接続性に懸かっています。まさに当社が主導する領域です。今回の資金調達により、拡大を加速させ、次なる成長段階に向けた準備を進めてまいります」とコメントしている。(一部抜粋)

IoT市場は拡大が続いており、2030年には世界のIoTデバイス数は約1250億台規模に達すると見込まれる。日本を含む各国でLoRaWANやNB-IoTなどのLPWA(Low Power Wide Area)技術の導入が進む一方、Wi-Fi HaLowについても設置容易性や相互運用性、ライセンス不要の周波数帯を活用できる点から注目が高まっている。

この分野には米国や台湾を含む複数の競合企業が存在し、各社が同規格に対応した製品を投入している。モースマイクロは、自社のMM8108チップが通信速度・通信距離・消費電力・サイズの面で差別化できていると主張している。

今回調達した資金は、Wi-Fi HaLowチップの生産体制強化、海外市場での販売網拡大、IoTエコシステムを支える研究開発などに充てる計画だ。

同社は「IoT 2.0」と呼ぶ次世代IoTの構想を掲げており、エッジAIやリアルタイム通信を組み合わせたインテリジェントなネットワーク構築を進めている。また、モースマイクロは複数のモジュールメーカーと連携し、チップ搭載モジュールをグローバルに展開している。

一方で、LPWA技術との競争や各国の電波政策、セキュリティ規制、IoT市場の競争激化といった課題も想定される。同社は今回の資金を活用し、研究開発力とグローバルなパートナーシップを強化しつつ、Wi-Fi HaLow技術を軸とした事業展開を加速させる方針だ。

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