do.Sukasu、プレシリーズAで6000万円を調達──視覚認知能力の測定・評価・トレーニング技術で高齢社会課題に挑む

do.Sukasu、プレシリーズAで6000万円を調達──視覚認知能力の測定・評価・トレーニング技術で高齢社会課題に挑む

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視覚認知能力を測定・評価・トレーニングする技術の開発を手がける株式会社do.Sukasuは、プレシリーズAラウンドにおいて総額6000万円の資金調達を実施した。同社は行政や研究機関と連携し、加齢による認知機能低下を要因とする交通事故や労働災害など、社会的課題の解決を目指して事業を展開している。

do.Sukasuは2020年6月に設立されたスタートアップで、主に視覚認知能力の簡易定量化と、その評価データを活用した事業開発を行っている。視覚認知能力は、空間認知能力(物体の位置や距離、遠近感の認識)と物体認知能力(図形や線、文字の認識)に大別される。同社はこれらを客観的に評価し、個々の特性に合わせてトレーニングできる独自技術を開発。スマートフォン、車載センサー、仮想現実(VR)、タブレット端末など複数のデバイスを活用し、個人の視覚認知能力を一貫して測定・評価・トレーニングできる「de.Sukasu」シリーズを提供している。

これまでに、VRを用いた「de.Sukasu KEEP」では、従来の深視力検査よりも高精度に事故リスクを判別できることが確認されている。高齢者の運転免許更新業務やリハビリテーション現場での導入が進み、効果検証も大学や医療機関と共同研究の形で進行中である。加齢や障害による視覚認知能力の低下を可視化し、個人ごとに最適化された評価・トレーニングを提供する手法は、従来は確立されていなかった領域へのアプローチといえる。

代表取締役社長の笠井一希氏は、オムロンおよび知財センターで新規事業開発や知財戦略に携わった経歴を持つ。在籍期間中に70件以上の特許出願を経験し、知財と事業開発の双方を専門領域としている。。2020年1月に退職後、Co-Studio株式会社CSOに就任。同年6月には住友ファーマ(当時・大日本住友製薬)との共創型新規事業開発を通じてdo.Sukasuを設立し、CEOに就任。

日本の高齢化率は、2023年時点で29.1%に達し、高齢ドライバーによる交通事故や労働現場での安全確保といった課題が浮上している。65歳以上の就業者数は920万人を超え、慢性的な労働力不足のなかで高齢労働者の安全対策が求められている。運転者の認知機能検査は警察庁の免許制度に組み込まれているが、より効率的で客観的な能力評価や個別最適化されたトレーニング手法の導入は発展途上にある。

デジタルヘルス分野では、脳機能の評価やリハビリテーション支援を行う他企業が競合として存在する。多くの企業は認知機能全般や認知症予防を主要な対象としているが、視覚認知能力に特化した評価・訓練ソリューションは国内外でもまだ少数にとどまる。do.Sukasuの取り組みは、こうした市場において差別化要素となっている。

同社によれば、近年は奈良女子大学や東京都リハビリテーション病院と共同研究を進め、トレーニングの効果立証を進行中である。行政との連携も強化しており、奈良県や奈良市ではドライバーの安全運転を支援するアプリ「de.Sukasu DRIVE」の現場導入・実地評価が行われている。今後はコネクテッドカー領域や保険会社との連携、さらには療育・教育分野など多様な応用分野での事業展開も視野に入れている。

今回の資金調達ラウンドでは、南都銀行、南都キャピタルパートナーズ、キャピタルメディカ・ベンチャーズが出資するやまと社会インパクト投資事業有限責任組合が引受先となった。do.Sukasuは調達資金を活用し、プロダクト機能の拡充や開発組織の強化、営業・認知度向上に取り組む。視覚認知能力の検査・トレーニングの社会実装を推進し、健康寿命の延伸や介護リスクの低減、医療費抑制につながる社会課題解決モデルの構築を目指す方針である。

現在、実証実験や行政・研究機関との連携を進めるなか、視覚認知能力の定量評価と個別最適化されたトレーニング手法が実社会においてどの程度普及するかが今後の焦点となっている。技術開発に加え、規制対応やインフラとの連携、エビデンスの蓄積と標準化も今後の課題とされる。

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