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情報セキュリティを支援するスタートアップ6選【2025年7月更新】

国産のクラウド型セキュリティ教育サービス「セキュリオ」を提供するLRM株式会社が、グローバルセキュリティエキスパート株式会社(GSX)らが出資する「日本サイバーセキュリティファンド」の第一号投資先に選定された。同ファンドは国内セキュリティ企業の成長支援を目的に設立され、LRMの事業実績や今後の成長性、出資者との事業シナジーが評価された形だ。
LRMは2006年に神戸で創業。当初は情報セキュリティ分野のコンサルティング業務からスタートしたが、顧客企業との対話を通じて、セキュリティ教育の現場に共通した課題があることに着目。自社で教育教材を準備できない中小企業を中心に、クラウド型eラーニングサービスのニーズを捉え、「セキュリオ」の開発に踏み切った。
同社の事業は現在、SaaS型セキュリティ教育サービスと、専門家によるコンサルティングサービスの二本柱で構成されている。コンサルティング領域では、ISMS認証取得支援を中心に20名弱の専任コンサルタントが在籍し、企業ごとに異なる課題に対するオーダーメイド型の支援を行っている。両事業を組み合わせることで、技術と運用、教育を一体となって提供し、顧客企業のセキュリティ体制全体を底上げする体制を整えている。
「セキュリオ」は、標的型攻撃メール訓練、eラーニング、セキュリティアウェアネスの強化、社内アンケートなど、従業員の意識と行動を変えるための機能を多数搭載している。教材はスマートフォンからも手軽に受講できるよう設計され、1回数分で完了するミニテスト形式や漫画教材など、継続的な学習を支える工夫が随所に施されている。
導入実績はこれまでに2200社以上。ユーザーの半数以上が従業員200名以下の中小企業である一方、近年では大手製造業やIT企業、官公庁系企業などでも導入が進んでいる。特に大手企業では、従業員数が多いために一斉集合研修の限界が顕在化しており、個別対応が可能なツールとしての導入が加速している。
代表取締役CEOの幸松哲也氏は、「年に1回の研修では従業員の意識は変わらない。継続的かつ個人に最適化された教育が必要」とし、今後はユーザーごとのリテラシーレベルに応じたパーソナライズ学習機能の強化にも取り組む構えだ。また、国内で開発からサポートまでを一貫して行う体制や、日本独自の業務文化や法制度を反映した教材設計が、海外製品との差別化要因となっている。
セキュリティ教育市場は、IPAが発表する「情報セキュリティ10大脅威」において毎年上位に人為的ミスが挙げられるなど、組織の教育体制強化の重要性が増している。ITRによると、2024年度の同市場規模は100億円を超えるとされており、引き続き拡大が予測されている。
今回の出資により、LRMはファンドに参加する複数のセキュリティ企業との連携を通じて、販路拡大と新たなソリューションの共創を加速させる。また、今後の事業展開として、国内でのシェア拡大に加え、アジア諸国への展開も視野に入れている。現地のセキュリティ教育ニーズに合わせたローカライズを進め、日本発のクラウドサービスとしてグローバル市場への進出も見据えている。
資金調達については、今回の出資に加えて今後もう一度実施する可能性があり、IPOに向けた準備も視野に入れている。エクイティ型調達に加え、事業戦略に沿ったCVCとの連携や、業界シナジーのある企業との資本提携にも意欲を見せている。
幸松氏は「日本から情報漏洩をなくす」という強い信念のもと、「セキュリオ」とコンサルティングサービスを通じて、すべての従業員が正しいセキュリティ行動を取れる社会の実現を目指すと語った。
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