DEAが22億円を調達──社会課題解決型Web3ゲームで上場を視野に

DEAが22億円を調達──社会課題解決型Web3ゲームで上場を視野に

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シンガポール発のWeb3エンターテインメント企業であるDigital Entertainment Asset(DEA)が、シリーズAラウンドで総額22億円の資金調達を実施した。これによりシリーズA累計調達額は約3800万米ドル(約54億円)となった。

今回のラウンドには、ジャパンインベストメントアドバイザー(JIA)、アシックス・ベンチャーズ、SBIグループ、大和ハウスグループ未来価値共創1号投資事業有限責任組合、イオレ、Hongo holdingsなどが出資者として参加した。

2018年8月設立のDEAは、当初から暗号資産を活用した「Play to Earn」型のゲーム開発に着手してきた。運営するプラットフォーム「PlayMining」では、NFTマーケットプレイス「PlayMining NFT」や自社発行の暗号資産「DEAPcoin(DEP)」、社会課題の解決を目的とした「PicTrée(ピクトレ)」などのサービスを展開。「ピクトレ」は、ユーザーが街のインフラを撮影・点検することで報酬が得られる“課題解決型ゲーム”であり、インフラ事業者との連携を通じて、インフラ保守コストの削減や地域社会の活性化に寄与する取り組みが進行している。

また、障害者向けのバーチャル就労支援や、遠隔地からのごみ分別作業ゲーム、高齢者を対象としたAIエージェントの提供など、社会課題とゲーミフィケーションを結びつける事業も推進中である。これらのプロジェクトでは、企業や自治体が抱える課題解決の費用を新たな収益源とする仕組みを構築しており、従来のゲーム市場とは異なる持続可能なビジネスモデルが形成されつつある。報酬に暗号資産を用いることで、国境を越えた経済圏の拡大も目指している。

代表を務める吉田直人氏は、複数の事業会社の上場経験を持つ起業家であり、シンガポールでDEAを創業した。一方、共同創業者兼Co-CEOの山田耕三氏は、テレビ東京出身のエンターテインメントプロデューサーで、デジタルとメディアの融合領域に豊富な経験を持つ。吉田氏が経営全般を統括する一方で、山田氏は日系大手企業との戦略的提携や新規事業の開発を主導している。両名の異なるバックグラウンドが、既存のゲーム業界とは異なる視点から社会貢献型エンターテインメントの開発を進める原動力となっている。

Web3業界全体では、NFTや暗号資産の市場が一時的な活況を経て、実需や社会実装への機運が高まっている。国内外のWeb3関連スタートアップによる資金調達は継続しているものの、多くのプロジェクトがゲーム内経済やNFTコレクションに依存し、ユーザーの継続率や事業の成長に課題を抱えている。特に「Play to Earn」型のゲームは、利用者増加が資金流入や報酬の原資となる仕組みから、持続可能性に疑問が呈されてきた。DEAによれば、自社モデルは企業の実需、例えばインフラ点検費用や自治体の課題解決費などを原資とする「BtoB2C型」である点で、こうした課題への一つの回答となるとしている。

日本のWeb3・暗号資産業界は近年、税制や規制の緩和が進展し、2025年1月時点で国内の暗号資産取引口座が約1200万件に増加した。一方で、2018年のコインチェック流出事件以降、個人や企業による信頼回復や事業参入のハードルはいまだ高い状況が続いている。ブロックチェーンやNFTを用いた社会価値提案の実例が求められるなか、DEAの事業もその潮流の一端を担っている。競合としては、グローバルでNFTゲームを展開するSky Mavis(Axie Infinity)や、国内のActiv8などが挙げられるが、現状では特定のユーザーコミュニティ形成にとどまる事例が多く、本格的な社会課題解決型Web3事業の展開は業界でも限られている。

DEAは今後、日本法人の設立を進めるとともに、インフラ事業者や自治体との連携を強化する方針を示している。今回の資金調達を活用し、組織体制の強化や上場準備を進め、課題解決型ゲームのグローバル展開や、日本企業として初のWeb3発行体上場を目指す構えである。「ピクトレ」事業では、すでに北海道など地方自治体との協業や企業とのイベント連動が始まっており、ゲーム業界以外からの引き合いも増えている。

今後は、地方創生や高齢者対応、防災、SDGs推進といった多様な領域におけるWeb3技術の活用可能性が広がる見通しである。BtoBおよび自治体向けの社会課題解決プラットフォームとして、どのように収益モデルを確立し、既存のゲームユーザーに加えて非ゲーマー層を取り込めるかが、事業の成長にとって重要なポイントとなる。

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