「畳んでポストへ」手間ゼロでエコな新梱包「シェアバッグ®︎」手がけるcomveyが1億円調達
EC事業者向け梱包バッグを開発・提供するcomveyが、第三者割当増資による約1億円の資金調達を実施したことを明らかにした。
今回のラウンドでの引受先は、ケップルキャピタル、サザビーリーグ、ココナラスキルパートナーズ。New Commerce VenturesとEast Venturesからの出資も含めた累計の調達額は約1.5億円となった。
comveyが開発する「シェアバッグ®」は、配送時に繰り返し使える梱包バッグ。商品購入者は商品が届いた後にバッグを畳んでポスト投函することで、500円分のクーポンを得られる。段ボールの代わりにシェアバッグ®を使うことで梱包資材の削減につながる。
代表取締役CEOの梶田 伸吾氏に、事業の詳細や今後の展望などについて詳しく話を伺った。
年間50億個分の梱包ゴミ 梱包バッグの再利用で解決
―― comveyのシェアバッグ®︎について教えてください。
梶田氏:シェアバッグ®︎は従来の段ボール梱包に代わる、再利用可能な配送用バッグです。ポスト投函できるサイズから60〜100サイズまで対応し、アウターやブーツなどの商品も梱包できます。アパレルに限らず、コスメなどの非アパレル商品にもご利用いただいています。
シェアバッグ®︎を導入するECサイトで買い物をする際は、配送を段ボール梱包にするかシェアバッグ®︎梱包にするか選ぶことができます。シェアバッグ®︎配送の場合は、配送料に加えて250円を追加で支払う形です。
商品が届いた後は折りたたんでポストに投函するだけで返送でき、回収後にクリーニングや修理して再利用しています。届いたシェアバッグ®︎にはQRコードが付いていて、次回使える500円分のクーポンを得られる仕組みです。実際に、導入しているECサイト上で商品を購入する人の約20〜30%がシェアバッグ®︎を選択しています。
EC事業者にはシェアバッグ®︎をまとめてレンタルいただき、私たちはそのレンタル料を受け取っています。EC事業者にとっては、梱包資材としてのコストは段ボールとほとんど変わらないものの、シェアバッグ®︎を利用することでCO2削減やブランドロイヤリティの向上に寄与できる価値があります。
―― 御社は物流業界の課題解決に挑んでいます。
物流業界が直面する課題は、単純な自動化や省人化だけでは解決できません。売り手・買い手・運び手という三者間のパワーバランスの歪みとコミュニケーション不足が、さまざまな問題を引き起こしているのです。ECの取引が急増し年間50億個にも及ぶ荷物を抱える中、既存の宅配システムはもはや限界を迎えつつあります。
物流業界の大きな課題として捉えているのが、大量の梱包ゴミ・深刻な配達員不足・返品対応です。私たちはその中でも現在、シェアバッグ®︎を通じた梱包ゴミの課題解決にフォーカスして取り組んでいます。
昨今のEC配送では、商品を最短で届けることや過剰な梱包が当たり前の習慣となっています。実際に翌日配送を希望する人もいる一方で、「届くのは1週間後でも構わない」という人もいるはずですよね。顧客の選択肢が限られていることが、ムダな梱包材が増えたり非効率な配送の原因となっていたりするのです。
海外ではシェアバッグ®︎を活用した新しい物流の形が始まっています。日本でもこうした革新的なアプローチで持続可能な物流システムを構築していくことが重要です。
意外と手間な段ボールの処分 「たたんでポスト投函」は日本向き
―― 配送に段ボールではなくシェアバッグ®︎を利用するメリットについて教えてください。
段ボールは便利で使いやすく、世界中で普及してきました。加えて、日本ではリサイクルを環境に良い取り組みとして推進してきた中で、段ボールにはリサイクルできる利点があります。一方で、段ボールの回収・リサイクルの過程で多くのCO2が排出されているのも事実です。そうした背景もあり、世界的には同じものを繰り返し利用するリユースへの関心が高まっています。
comveyのシェアバッグ®︎を10回繰り返し使用すると、従来の段ボール配送を10回行うのと比べて85%以上のCO2削減が可能です。シェアバッグ®︎は岡山県の萩原工業の協力を得て製作しています。使用限度に達したバッグを萩原工業に返送するとペレット化され、新しいバッグの製造に再利用される。こうした形で水平リサイクルの仕組みを実現しています。
―― 商品購入者は、どのような理由から250円を支払ってシェアバッグ®︎配送を選択するのでしょうか。
ヨーロッパでは、環境への配慮を主な理由としてシェアバッグ®︎を選ぶ消費者が多いようです。日本では、9割ほどのお客様が「ゴミ出しの手間が省ける」ことを理由に挙げています。次いで「環境負荷低減への貢献」です。
日本は段ボールのリサイクル率が非常に高いものの、見方を変えればゴミ出しの手間を我慢しながら段ボールを処理しているとも言えます。段ボールをたたんでゴミとして出すのは意外と大変で手間がかかりますよね。シェアバッグ®︎なら、折りたたんでポストに投函するだけです。ブランドのクーポンももらえるので、次回のお買い物がお得になります。
また、日本は世界でもトップクラスに郵便ポストが多く、ポストを探す手間がありません。全国のポストから2、3日でバッグを回収できますし、シェアバッグ®︎は日本の市場に非常にフィットしているのではないかと思います。
ポスト返送ならではの視点で改善を重ねたシェアバッグ®︎
―― 創業のきっかけを教えてください。
大学生の頃から社会課題の解決に強い関心があったのです。ボランティア活動にも参加しましたが、ボランティアによる課題解決だけではサステナブルじゃないなと思うようになって。将来は起業したいという思いもあり、新卒では幅広いビジネスを学ぶため商社の伊藤忠に入社して物流関連の部署に配属されました。
入社したころは日本の物流問題が注目されだし、スタートアップも増えてきているタイミングでした。そんな環境でやればやるほど、物流の奥深さを知ると同時に、大きな課題が残っていることを実感したのです。自分なりに考えを巡らせて、物流の根本的な問題を解決するような事業をしようと、起業を決意しました。
―― シェアバッグ®︎はどのように製品化を進めたのでしょうか。
シェアバッグ®︎の事業アイデアを実現するために、まず中国の工場に連絡してバッグを作ってもらいました。当時は日本郵便とのつながりもなく、郵便局の窓口にも出向きました。しかし、やりたい事業の想いを伝えても、なかなか受け入れてもらえずに断られてしまうこともあって。
そんな中転機となったのが、全国の郵便局のハブである日本橋郵便局をご紹介いただいたことです。日本郵便の本社とも密なコミュニケーションをされているとのことでした。「この箇所を数センチ短く」、「ほかの郵便物が挟みこまれないような設計に」など、細かな意見交換や打ち合わせを重ねてなんとかバッグを完成させることができました。非常に優秀なプロダクトデザイナーに出会えたことも大きな要因だったと思います。
返品や配達員不足の問題も 目指すは新たな物流の仕組み
―― 調達資金の使途について教えてください。
サービス開始してからの1年間で、小規模ながらも一定の検証ができました。comveyのビジネスは、大手事業者へ導入されることで売り上げが大きく伸びていくモデルです。導入を進めていくためにも、今回の資金は大手事業者が利用するECカートと連携させるためのシステム開発などに充当します。
重要なのはむやみやたらに導入を増やすのではなく、各業界で「ドミノの1本目」になるような事業者に導入いただくことです。そこからどんどん広がっていく。アパレルにしてもコスメにしても、「ドミノの1本目」を見極めてうまく倒していくような事業拡大を重視したいと思います。
―― 今後の長期的な展望を教えてください。
私たちが目指しているのは、梱包ごみの問題解決だけではありません。返品時の顧客対応コストや返送料、返品商品の保管・検品・処分にかかるコストや、配達員不足の問題もあります。
フィンランドでは、荷物を家まで届けるのではなく、第三の場所に荷物を届けて顧客が受け取りに行く仕組みが導入されています。例えばコーヒーを買うついでにカフェで商品を受け取ったり返品できたりすれば、配送業者は一軒ずつ運ぶ必要がなくなりますよね。そこで削減したコストを「コーヒー1杯無料」といった形で還元するような、付加価値のある受け取りカウンター事業なども構想しています。
足元はシェアバッグ®︎の事業を拡大して梱包材をリユースする文化を「当たり前」とすることに注力しながらも、将来的には返品や配達員不足の問題も解決し、EC社会にフィットした宅配便に代わる新たな物流の仕組みを構築していきたいと思います。
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