株式会社shizai

梱包資材発注プラットフォームのshizaiが4.2億調達、EC向け発注管理SaaSをローンチ


梱包資材の発注プラットフォーム「shizai」を運営するshizaiが、シリーズBラウンドの1stクローズにて第三者割当増資による4.2億円の資金調達を実施したことを明らかにした。今回のラウンドの引受先は、Monoful Venture Partnersと日本郵政キャピタル。
shizaiは、電通を経て、ラストワンマイル配送のDX事業を展開するAzit(当時はライドシェア事業を運営)にて執行役員を務めた鈴木 暢之氏が、Azitの人事責任者だった油谷 大希氏とともに創業。梱包資材のサプライヤー約500拠点のネットワークと自社開発のサプライヤー選定ソフトを活用し、EC/D2C事業者などから寄せられるパッケージ制作の受注から納品までを請け負う。現在、約700社がサービスを利用する。
代表取締役 CEOの鈴木氏に、ビジネスモデルや資金調達と同時にローンチを発表したSaaSの特徴、今後の展開について詳しく話を伺った。
プラットフォームとSaaSの2軸で、サプライチェーンマネージャーを取り込む
――「shizai」の仕組みは。
鈴木氏:主にECや通販、D2Cの事業者からパッケージ制作のリクエストをいただき、提携先のサプライヤーと連携して、希望に沿ったパッケージを低コストで納品するプラットフォームです。一部、オフラインの小売事業者から、手提げ袋などの発注を受けるケースもあります。

日本国内のBtoCのEC化率は現在約9%。諸外国と比較して、まだ伸びしろは大きいと見られています。そして、取引規模が一定レベルに達したECやD2Cの事業者が、次に目を向ける課題の一つが商品パッケージのコストダウンです。しかし、パッケージの製造会社の情報はWebでは拾えない部分も多く、ウェブサイトを公開している会社でも、機械の入れ替えなどによる取扱商品群の変更が反映されていないなど、発注側から見るとブラックボックスの領域が大きいのが現状です。
こうした事業者に代わり、当社は作りたいパッケージのサイズや形状、納品先への配送距離などを踏まえ、全国500社のネットワークの中から最適なサプライヤーを選定。当社分のマージンを乗せても、平均20%のコストダウンを実現しています。
パッケージの制作費を抑えるだけでなく、サイズを小さくして商品の配送コストを下げたい、組み立てを簡単にして梱包コストを圧縮したいといったニーズにも対応します。配送コストでは、約30%ダウンを実現した事例も生まれています。
コストダウン以外にも、オンラインショッピングにおいて重要なパッケージの開封時に、顧客に好印象を与え、SNS投稿などにつながりやすいパッケージの提案も行います。たとえば、輸送ダメージを受けやすい生花をしっかり保護しながらも、フタを開ければすぐに商品を手に取れるようにしたり、パッケージの内側にブランドカラーと事業者からのメッセージを刷り込むなど、会社の「顔」としての価値向上を図ります。
立ち上げ当初は、D2Cのスタートアップを中心に導入を進めてきましたが、業界動向に敏感な大企業からも引き合いをいただくようになり、現在は西武・そごう、サントリー、西松屋なども主要顧客でます。売上高の公開は控えていますが、2年前の前回ラウンド時点と比べると、単月ベースで約5倍に伸びています。
――今回の資金調達と併せて、発注管理SaaS「shizai pro」のローンチも発表されました。
「shizai」の主要ユーザーであるサプライチェーンマネージャーの皆さんに新たな切り口で価値提供すべく、2、3年前から準備してきたサービスです。EC/D2C商品の欠品が発生しないよう、製造元やOEM先に発注をかけるプロセスにおいて、コミュニケーションの履歴が追いづらく、関係者が最新の状況を共有しづらい課題に着目しました。
現状、EC/D2C事業者と製造元のやり取りには、主にメールが使われています。発注書作成とメール送付までは、既存の会計ソフトなどでも自動で行えますが、実際には発注書を送った後も、数量変更や納期変更、製造元の事情による減産などの連絡が頻繁に飛び交います。
shizai proでは発注ごとに、その後のメッセージのやり取りをチャットのように一覧化する機能があります。製造元からはメールで返ってきたメッセージも自動でチャットスペースにコピーされ、EC事業者側はスムーズにコミュニケーション履歴を追えるようになります。取り扱うアイテム数の多いアパレルや化粧品、雑貨の事業者に先行利用いただいてきました。

shizai proの導入メリットとしては、データ連携機能も挙げられます。倉庫管理システムとの連携で倉庫への入荷予定連絡を自動で飛ばせるほか、会計ソフトとの連携で原価計算を自動化することも視野に入れています。現状、これらの機能を網羅しているサービスは他になく、サプライチェーンマネージャーの取り込みにおいて武器になると見ています。
巨大なレガシー産業のオペレーションに、深く入り込むテックを追求
――今回調達した資金の使途は。
主に人材採用です。今回の調達先であるMonoful Venture Partnersと日本郵政キャピタルは、EC/D2C事業者との接点を豊富に持っており、顧客開拓の強力なパートナーになると考えています。そして、今後の受注増に対応するには、顧客に対面するオペレーション担当者の増員が欠かせません。
エンジニアの採用も強化します。SaaS開発要員を確保したいのはもちろん、既存のプラットフォーム事業においても、顧客のリクエストごとに最適なサプライヤーを選定するステップを支えているのは独自開発したソフトウェアであり、機能の高度化を進めています。従業員数は現在の20名から、1年後には30~35名程度まで増やす計画です。
――今後の事業展開は。
直近2年で売上高5倍成長を達成しましたが、次の2年でさらに4、5倍の成長を目指します。顧客の社数は、現在の約700社から2,000~3,000社規模まで拡大したいと考えています。
SaaSの立ち上げと並行して、プラットフォーム事業の領域拡大にも可能性を感じています。顧客から、例えば「化粧品を入れるボトルもつくれないか」「パッケージへの箱詰めまでして納品してほしい」「倉庫の変更を検討しているので、いい倉庫を紹介して」といった相談を受けるようになり、個別に対応してきました。こうした隣接領域の中から、パッケージ制作に続く第二、第三のプラットフォームの立ち上げを検討します。

私は起業当初、「巨大産業にテクノロジーを導入し、現場で働く人々の業務に変革をもたらしたい」という思いのもと、2、3の事業モデルを同時並行で試した中、電通時代から馴染みの深かったパッケージ制作の業界を選びました。BtoB取引のDX化からスタートし、SaaS運営に乗り出す道のりは、他の先輩スタートアップたちとも共通しています。一方、レガシー産業のDXは、対面する業界特有の事情や慣習にいかに向き合うかが事業の要となるだけに、それぞれのSaaSが独自性の高いものになる点に面白さを感じています。パッケージ制作×テクノロジーの世界で新たな可能性を追求することに興味をお持ちの方、ぜひお気軽にご連絡ください。
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