クラフトビールを手がけるスタートアップ6選

クラフトビール新時代──地域と個性を醸すスタートアップの挑戦　

日本のビール市場は長らく大手メーカーによる大量生産・大量流通型が中心だった。しかし近年は、多様な味わいやストーリーをもつクラフトビールが若年層を中心に支持を広げている。全国では900以上のブルワリーや醸造所が活動しており、市場は年々拡大を続けている。

クラフトビールの魅力は単なる嗜好品にとどまらない。地域の農産物や水を活用した「テロワール」の表現、観光や地域コミュニティとの連動、サブスクリプションやECを通じた消費体験の革新など、ビールを媒介にした新しい産業・文化の形を提示している。

こうした流れの中で、スタートアップの動きも加速している。小規模ブルワリーの生産・流通を支援するプラットフォーム、醸造工程をデータ化して品質を安定させるテクノロジー、地域と連携した観光型ブルワリー事業など、多彩なアプローチが登場している。

本記事では、クラフトビールを起点に地域文化と新しい市場を切り開くスタートアップの最新動向を紹介する。

スタートアップ6選

株式会社小笠原商店

企業HP：https://oga-brewing.com/

東京・三鷹を拠点とするクラフトビールブルワリー「OGA BREWING」を展開。150種以上のレシピ開発を重ね、定番の「三鷹ペールエール」「三鷹ウィートエール」や、中央線各駅をイメージした「中央線GO WEST」、三鷹産農作物を使った「M.Cシリーズ（Mitaka Consecutive）」など地域性あふれる商品を手がける。OEMやコラボビール、スポーツクラブとのタイアップ商品も展開し、タップルームやカフェでの提供など“地域に根ざしたクラフトビール文化”を発信している。

2023年2月には、株式投資型クラウドファンディング「イークラウド」にて資金調達を実施した。2025年9月には、みなしごハッチや科学忍者隊 ガッチャマンとのコラボ商品を販売開始。

Brewtope株式会社

企業HP：https://brewtope.jp/

Brewtope株式会社（旧：meuron）は、クラフトビールの定期便サービス「Otomoni（オトモニ）」を起点に、飲み手・作り手・売り手をつなぐクラフトビール業界インフラを構築する企業。2024年10月、創業5周年を機に社名をBrewtopeへ変更。定期便のみならず、飲食店・小売店向け卸販売、法人ギフト事業も展開し、400社・4000種類以上のクラフトビールを取り扱う物流・セレクト基盤を持つ。社名は「Brew（醸造）」＋「Biotope（生態系）」を組み合わせ、クラフトビールに遊び心あふれる生態系を醸成する理念を示す。

2025年4月には、IMSFを引受先として、約2億円の資金調達を実施した。

チョウシ・チアーズ株式会社

企業HP：https://choshicheers.sakuraweb.com/

千葉県銚子市を拠点にクラフトビール事業を展開する地域発の醸造ブランド。主力製品に「銚子エール」「One for All SMaSH!」「Black Eye Stout」などがあり、地元銚子の魚に合う味わいをコンセプトに据えている。酒類製造・販売のほか飲食店経営や物販も手がけ、オンラインストアを通じた直販やコラボ商品開発にも取り組んでいる。

2025年3月には、シンガポールにあるクラフトビールと和風創作料理の店「SG TAPS」にて「銚子ビール」の販売を開始した。

株式会社パイオビア

企業HP：https://www.piobeer.com/

北海道大学在学・卒業生を中心としたチームが手がけるクラフトビールブランド。オリジナルレシピ開発・販売を軸とし、企業や自治体のオリジナルビール制作、ケータリング向け樽生提供も行う。代表作「未来開拓俱楽部ビール」は、ベルギー伝統のファームハウスエールをベースにした定番銘柄。地域との接点づくりやイベント、講演も重視し、ビールを通じたコミュニケーション創出を目指す。

株式会社ホップジャパン

企業HP：https://hopjapan.com/

福島県田村市で自社栽培ホップを用いたクラフトビールの醸造・販売を手がける。陰陽五行をテーマにしたラインナップや、自然体験と飲食・宿泊を融合させた施設運営も展開。ビール粕の再利用や地域素材活用など、1次〜6次産業を循環させる地域型事業モデルを志向している。

株式会社haccoba

企業HP：https://haccoba.com/

ドブロク製法「花酛（はなもと）」を起点に、ホップを加えた酒造りを通じて日本酒とビールの境界を超える“クラフトサケ”を追求するブルワリー。地元福島県産の米や在来植物を使い、ジャンルの垣根を超えた自由な発酵表現に挑み、酒蔵・パブ併設で文化拠点化も行う。

2025年7月には、海外輸出を本格開始。アジア圏への輸出に続き、欧米（アメリカ・オランダ・ドイツ）への輸出も開始した。