循環を前提とした消費社会へ――「バイバック保証™」が切り開く新しい購買体験

循環を前提とした消費社会へ――「バイバック保証™」が切り開く新しい購買体験

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資源循環の課題に挑むスタートアップ、リベロント株式会社は、2025年6月に「バイバック保証™」付きの新たな購買体験("Buy Now Sell Later")を正式にローンチする。このサービスは、商品購入時に最大90%の再販価値を事前に保証する仕組みであり、消費者に新たな安心感を提供するEC向けの取り組みとして注目されている。

この正式ローンチに先立ち、同社はジェネシア・ベンチャーズをリード投資家として迎え、J-KISS型新株予約権の発行および金融機関からの融資を通じて、総額1.3億円の資金を調達した。

すでに一部のライフスタイルブランドでは試験導入が進行しており、コンバージョン率や平均購買単価の向上に向けたポテンシャルが期待されている。

今回は、業界に注目した背景や今後の事業展開について、代表の大河淳司氏に話を伺った。

見えない不安を“価値の保証”で払拭するしくみ

―― ミッションと、それに基づく事業について教えてください。

大河氏:私たちが目指しているのは、次世代の資源循環エコシステムの構築です。大量生産・大量消費が問題視される中で、「すでに生産されたモノが十分に活用されず、循環していない」という点に課題を見出しました。

そのため、当社は一次流通ではなく、その後の二次・三次流通に着目しています。世の中にすでに存在するモノをどのように次に活かすか、つまり、使い捨てではなく、何度も活用される仕組みを作ることで、持続可能な社会を実現できると考えています。

このビジョンのもとに開発したのが、「バイバック保証™」。これは、商品購入者が一定期間内であれば、当社が事前に提示した価格で商品を買い取るというサービスです。企業向けに提供するBtoBtoCモデルを採用しており、企業と消費者の双方に価値を提供しています。

背景にあるのは、消費者の購買意識の変化。近年では、商品購入時に「あとで売却できるか」「どの程度価値が残るか」を気にする人が増えており、とりわけ高価格帯の商品ほど、購入時の心理的ハードルが高くなっています。そうした不安を解消するための仕組みとして、このサービスを設計しました。

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“買った瞬間に再販価値が保証される”という新しい購買体験を通じ、ブランドと消費者の関係性を再構築する仕組み

企業にとっては、売上促進の効果に加え、「再販価値が保証されている」という新しい訴求が、ブランド構築や顧客との信頼関係強化にもつながると考えています。

―― 競合に対するポジショニングをどのように捉えていますか。

フリマアプリの普及により、二次流通は広く一般にも浸透しています。以前は一般的でなかった「手放す」という行動が、現在では日常的な選択肢になりました。

このような状況下では、当社の参入する領域は競争の激しい市場に見えるかもしれません。しかし、私たちが提供する価値は、既存サービスとは本質的に異なります。

フリマアプリは「モノを資産として捉える」という価値観を広めましたが、私たちは「将来的な価値を事前に可視化する」ことで、消費者に安心感を与えるという、新しい購買体験を提供しています。単に売れるかどうかではなく、「この価格で買い取る」という明確な保証を提示することで、購入時の心理的ハードルを下げるんです。

こうした視点に立脚したサービスは、現在の市場にはほとんど存在していません。そのため、私たちが取り組むこの領域は、新たな市場として開拓の余地が大きいと考えています。

――市場での戦略があれば教えてください。

企業がこの仕組みを導入する理由は、単にECの売上が上がるから、というだけではありません。当社が本質的に届けたいのは、「どのような資源循環を社会に生み出すか」という、ミッションベースの価値です。

「リセールを前提とした仕組み」と伝えるだけでは、誤解や警戒を招くこともあります。しかし近年では、サステナビリティへの関心が高まり、持続可能な仕組みの構築に積極的な企業が増えてきています。そうした企業に対し、当社の仕組みを提案することで、「単なる販売支援」ではなく、「循環型社会への具体的なアクション」を可能にする価値として受け止めてもらえるようになりました。

短期的な売上向上だけでなく、中長期的にはブランド価値や顧客LTV(ライフタイムバリュー)の向上、さらにはサステナビリティレポートへの貢献といった、多面的な効果も期待されています。現在は試験導入の段階にありますが、すでに初期導入企業や情報感度の高い層から前向きな反応が寄せられている状況です。

また当社では、平均購買単価が30〜50%向上し、ECサイトにおけるコンバージョン率についても0.5〜1%の改善が見込めるとの仮説を立てており、今後は実際の数値を通じてその妥当性を検証していく計画です。

スタートアップスカウト

柔軟な価格設計とリスクコントロールが導く導入スキーム

――買い取り補償額や保証期間の算出はどのように行っていますか。

二次流通のデータを活用し、類似商品の傾向やリスクを独自のアルゴリズムで分析し、適正な価格を算出しています。商品の状態やカテゴリ、買い戻しのタイミングなど複数の要素をもとに仮説を立て、A・B・Cのランクに分類し、それぞれのランクに応じた金額を提示する形です。

保証期間についても、商品カテゴリや想定される使用サイクルに応じて、仮説を立てた上で設計を行っています。たとえばアパレルの場合、購入からおよそ1年前後を目安とするなど、扱う商品によって適切な期間は異なります。

今後は、実際の取引データに基づく分析を重ねることで、より精緻な制度設計へとブラッシュアップしていく考えです。

スマホ画面イメージ図
Z 世代〜40 代を中心に過半数の消費者が「将来の売却価値」を意識して買い物をしているという調査結果もある

――在庫リスクについての考えは。

日本国内だけでも60兆円規模の「隠れ資産」が存在するといわれています。こうした未活用資産を流通させるには、リセール市場の整備が不可欠です。

もちろん、当社単独では対応しきれない部分もありますので、既存のプラットフォームやパートナー企業と連携しながら、流通チャネルの拡張を進めていきます。また、回収商品のトラッキングや保証管理の効率化に向けて、専用管理アプリ「spixn」の導入も準備中です。

在庫リスクという観点では、「流通量を適切に把握・制御すること」と「ブランド価値の毀損を防ぐこと」が特に重要になってきます。中には、自社製品が中古市場でどのように扱われているかを気にされる企業も少なくありません。そうしたブランド側の意向も尊重しながら、モノが継続的に循環していく仕組みを丁寧に設計していく必要があると考えています。

――成果報酬型のマネタイズですが、手数料の設計はどのようになっていますか。

基本的にはリスクとリターンのバランスで成り立っています。企業側としては、できるだけ高いバイバック金額を提示したいという意向があります。一方、保証金額が上がれば、当然当社としては在庫リスクを含むさまざまな負担が大きくなってしまいます。

そのため、バイバック金額や手数料率については一律ではなく、企業ごとの事情や商品特性に応じて柔軟に設計することにしました。協議を重ねながら、双方にとって最適なバランスを見つけていく方針です。

社会性と収益性の両立を目指し、仮説検証のフェーズへ

――創業背景について教えていただけますか。

新卒で総合商社に就職した後、留学やコンサルティングファームでの勤務など、さまざまな環境を経験してきました。前職のマッキンゼーでは、SDGsに関連するテーマを扱うプロジェクトに多く関わる機会にも恵まれました。

そこで印象的だったのは、SDGsという枠組みが非常に広範にわたり、社会的インパクトの出し方にも多様なアプローチが存在するということです。その柔軟性や奥行きに強く惹かれたことが、社会課題に本格的に取り組むことを意識し始めた大きな契機となりました。

もっとも、社会課題の解決と経済合理性の両立は簡単ではありません。そのため、自分の強みを活かしつつ、両立を実現できる領域を見出す必要があると考えるようになります。特に北欧のプロジェクトを通じて触れた循環経済の概念には深く共鳴し、この分野で自ら事業を立ち上げようと決意するに至りました。

以降は何度もピボットを繰り返しながら試行錯誤を重ね、少しずつ方向性を固めていった結果、現在の事業モデルへとたどり着いています。

共同創業者の小島(CTO)はマッキンゼー時代のつながりで出会い、現在はエンジニアとしてプロダクト開発を牽引してくれています。

――今後の展望と意気込みをお聞かせください。

私たちは、市場を先行して押さえることよりも、提供する価値そのものに本質的な意味があると考えています。だからこそ、プロダクトが本当に求められているかを丁寧に見極めるため、PMF(プロダクト・マーケット・フィット)の検証を今後さらに重視していく方針です。

たとえば、「保証価格が十分な安心材料になっているか」「受け取った保証分が再びリセールに向かっているか」「企業側にとって在庫リスクが過度ではないか」といった点については、多くの企業と対話を重ねながら、仮説検証を続けていく必要があります。

次のステージでは、企業との連携を深めることで、実データに基づいた検証をより具体的に進めていく予定です。そうした取り組みを通じてプロダクトの精度と信頼性を高め、「持続可能な購買体験」の社会実装につなげていきたいと考えています。

資源が眠ることなく循環する社会の実現に向けて――。この新たな購買体験を社会に根付かせるべく、賛同してくださる企業や従業員の皆さまと共に、これからも着実に取り組みを進めてまいります。

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