映画祭で輝く日本のXR映画、企業のコンテンツ制作に空間演出の知見を提供

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KEPPLE編集部

XR映画制作や配給を行う株式会社CinemaLeapが、シードラウンドにて、インキュベイトファンドを引受先とした第三者割当増資による6000万円の資金調達を行ったことを明らかにした。

今回の資金調達により、人材採用の強化とXR映画の体験者層拡大に向けた新規事業開拓を目指す。

ストーリーを軸としたXR映画やコンテンツを展開する

CinemaLeapは、VRやARを包括するXR体験を、ストーリーを軸として提供するクリエイティブカンパニーだ。

XR映画では、XR技術などの先端技術を応用し、鑑賞者それぞれが専用のデバイスを装着して映画を鑑賞する。鑑賞者自らが映画の中に入って、登場人物と会話したり、自身が物語の当事者として、取った選択によってストーリーが分岐するなど、没入感を得るような体験が可能だ。

2023年のヴェネチア国際映画祭XR部門「Venice Immersive」では、CinemaLeapが共同製作を行ったVRアニメーション「SEN」、VR映画「周波数」の2作品がノミネートされた。これまでにもベルリン国際映画祭やカンヌ国際映画祭、ヴェネチア国際映画祭といった世界的な映画祭でノミネートされた作品を数多く制作している。

Senイメージ
また、同社は映画製作の知見を活かし、企業や自治体と共にXR・メタバースに関するコンテンツの制作を支援している。2023年7月には、小田急電鉄と共同で、列車に乗車しながら歴代の特急ロマンスカーの運転中の様子を仮想空間上で体感することができるイベント「時を旅する体験型VR」を開催した。

今回の資金調達に際して、代表の大橋 哲也氏に、今後の展望などについて詳しく話を伺った。

海外を中心に熱の高まるXR映画

―― XRコンテンツの現状や課題について教えてください。

大橋氏:世界的には、昨今のメタバースブームの影響もあり、VRデバイスのユーザー数は徐々に伸びています。XR映画専門の映画プロダクションや配給会社などの製作側の数も増えてきており、数万人規模を動員する作品も出てきています。一部の国では、XR映画の製作を国が支援するなど、市場への期待も高まっています。

日本では、XR映画に対する認知度や普及率は高くありません。ヨーロッパ圏を中心に注目されている中で、日本は島国で英語の話者も少ないために国際映画祭のXR映画部門に参加する業界関係者も限られ、なかなかトレンドが伝わりづらく、XRコンテンツを知るきっかけが少ないことが理由だと考えています。

加えて、自宅でXRコンテンツを視聴するには専用のデバイスが必要です。現在は一家に一台デバイスがあるような状況ではなく、ホームエンターテインメントとしての普及にはまだ時間がかかると思います。

一方で、映画館や博物館などの施設を活用したXR体験であれば、デバイスの普及に左右されずに、より多くの方が体験することができます。実際にヨーロッパや中国では、VR専門の映画館もありますし、博物館や美術館でXRコンテンツを体験する環境も整ってきています。

また、施設やイベントを魅力的に演出して集客をするような、企業によるXRコンテンツ制作のニーズも高まっています。多様な表現が可能になる一方で、360度の空間演出などの専門的な技術が求められるため、当社のようなXR映画のノウハウを持つ企業への相談も増えています。

―― 御社のビジネスの特徴について教えてください。

独自のポイントとしては、小田急電鉄と共に、XR映画に特化した映画祭「Beyond the Frame Festival」を主催している点です。映画祭で獲得したXRクリエイターのネットワークを活用した映画の製作や、作品のグローバル展開に強みがあります。また、企業や自治体のXRコンテンツ制作には、映画製作で培った技術やノウハウを提供しながら、エンターテインメントの要素や没入させるストーリーの企画などを支援しています。

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―― どのようなきっかけから、CinemaLeapを創業したのでしょうか?

学生時代から演劇に興味を持っており、2015年から2019年にかけて、短編映画を対象とした国際映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル」の運営に携わりました。

2016年のVR元年を皮切りに、映画祭へのVR作品の応募も増え始め、実際に作品を見てみるとその没入感に驚き、大きなビジネスチャンスがあると直感しました。元々観客を楽しませるコンテンツの制作自体が好きなこともあり、思い切って2019年に創業しました。

Senイメージ
創業当初はVR 映画が登場して間も無く、需要が確立している状態ではありませんでした。縦型動画も流行しており、縦型の映画などXRとは別の領域で製作を開始したのが当初の取り組みです。

その中で、伊東ケイスケ監督の付き添いでヴェネチア国際映画祭に訪れた際に、グローバルではXR映画の作り手が増えていて、改めてその熱量を感じ取りました。VR映画の製作を開始し、映画祭へも応募を重ねるうちに、徐々にノミネートされるなどの実績を積み重ねることができるようになりました。

XR映画の体験価値拡大へ

―― 資金調達の目的や使途について教えてください。

今回の資金調達の主な目的は、人材採用と新規事業開発です。国内でのXRコンテンツの需要が徐々に拡大する中、高度な技術を有した人材の採用を強化します。

新規事業では、映画館などのロケーションでのコンテンツ提供を通じて、XR映画やコンテンツの普及に関する仮説検証を行っていきます。各ロケーションでのコンテンツ提供によるマネタイズを可能にすることで、次の映画製作につながるような体制を構築していきます。

―― 今後の長期的な展望を教えてください。

売上は毎年2倍のペースで成長しており、今後もそのペースを維持することを目指しています。各施設でのXRコンテンツの提供に加え、運営コストの削減や客単価の向上など、さまざまな取り組みを通じてビジネスとして成長させていきます。

これまで、ベネチア国際映画祭のXR部門である「Venice Immersive」に、5年連続で当社製作の作品がノミネートされています。今後は毎年XR映画を製作しつつ、ベネチア国際映画祭でのグランプリ受賞を目標のひとつに据えて取り組みます。

今後、自宅でもXRのデバイスがさらに普及していくと考えています。それに伴い、XRコンテンツの需要も拡大していく中、CGアニメーションにおけるピクサーのように、XR映画のプロダクションといえばCinemaLeapという地位を確立していきます。

XRコンテンツが普及していくと、演出の方法も洗練され、より没入感のあるコンテンツとして昇華されていくと考えています。ホームエンターテインメントとしてXR映画を届けていくことに加え、ロケーションにおける新たなXR体験を創出することが中長期の目標です。

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