アーティストとファンをつなぐライブプラットフォーム「SPWN」を運営するバルス株式会社が、株式会社マーベラスより出資を受け、同社が保有するIPの育成に向け協業することを発表した。
今回の協業により、マーベラスが展開するコンテンツの3Dライブ制作を進める。
エンタメ業界に必要なインフラを提供
SPWNはVTuberやアーティストのためのライブイベントプラットフォームだ。プラットフォーム上でイベントのチケットを購入し、参加することができる。
アーティスト向けには、ライブ配信(チケット販売・ギフティング)や物販、ファンクラブ、チケット販売など、イベントに必要な要素を一元管理する「SPWN portal」を提供する。イベント参加者の体験価値を高め、アーティストの収益を最大化することが可能だ。
また同社はそのほか、VTuberをはじめとするアーティストの3Dライブを支援する「XRライブ事業」を手掛けており、専用の撮影スタジオを持つ。
今回の資金調達に際して、代表取締役 林 範和氏に、今後の展望などについて詳しく話を伺った。
コンテンツ力は日本の大きな武器
―― ビジネスの特徴について教えてください。
林氏:SPWNのイベントでは、参加者はライブ配信に参加しながらグッズを購入したり、ギフティングを行うことができます。これまではオフラインのイベント参加時は物販のために列に並んだり、オンラインの際も物販は別のECサイトで行う必要がありました。
SPWNでは、IDに紐づけてファンのデータを管理することで、イベント時のユーザー体験を高めています。配信やECサービスとして独立しているのではなく、アーティストとファンの間のインフラになる機能をワンストップで提供している点は大きな特徴です。
また、いざイベントを運営しようと思っても、企画や準備には労力がかかります。当社では企画や商品開発から、実際に参加してくれるファンに届けるところまで、イベント運営全体の支援を行っています。
コロナ禍をきっかけに、近年は精緻な3D表現など急激に技術の進歩が進んでいます。こうした中で、ただライブをすること自体の価値は減っています。新しい技術とバーチャルを組み合わせて、ファンに良い体験を届けることが重要です。実際に、公演によっては会場チケットが余っているのに配信チケットはその何倍も売れていたり、オフライン会場で行うバーチャルアーティストのライブに1万人が集まるなど、求められるライブ体験は多様化しています。
―― 創業のきっかけを教えてください。
中国の企業で働いていた際、漫画やアニメをはじめとして、日本の多くのコンテンツが海外に届いているのを実感していました。こうした経験もあり、日本から海外に輸出するものとして、コンテンツ発信は日本の大きな武器になると思いました。
共同創業者の萩原はこれまでに出版社の編集長や、アニメの原作制作などに携わっていました。萩原との会話の中で、これまでコンテンツビジネスは才能の世界だと思っていましたが、実はロジカルな思考で作り上げることができると知ったんです。事業として進めることを検討し、2017年にバルスを創業しました。
創業した2017年頃は、オンラインでアーティストのライブ配信を見ることはほとんど浸透していませんでした。コロナ禍を大きなきっかけにオンラインライブも普及し、バーチャルキャラクターによるライブを世界中の人が楽しんでいるのは非常に面白く、事業としてのポテンシャルも感じています。
コンテンツを世界に届ける
―― 資金調達の背景について教えてください。
マーベラスはゲームやアニメ、舞台など、多様なコンテンツを展開する総合エンターテインメント企業です。その幅広い事業領域において同社が保有するIPの育成、発展を視野に入れ、斬新なコンテンツやサービスの創出を目指し、今回の提携に至りました。
―― 今後の長期的な展望を教えてください。
日本のコンテンツを世界に届けていくための取り組みを継続していきたいと思います。またAIなどを活用してコンテンツの制作コストを下げることで、効率よくリッチなコンテンツが作れるよう新技術を取り入れていきます。
加えて、2023年3月にはファンマネジメントプラットフォームの「SPWN CREW」をリリースしました。月額会費形式で動画を中心としたコンテンツ配信を行うことで、アーティストには新たな収益源となります。またSPWN portalと組み合わせることで、活動のコアとなるファンのことを分析できるようになります。
今後数年で、当社スタジオだけではなく、どこからでも世界に向けたライブができる体制を整えたいと思います。バーチャルアバターを使うことで、人の可能性は広がっていきます。誰もが場所を選ばずにコンテンツをグローバルに届けるサポートを通じて、海外での興行も含めた事業展開を推進します。