課題先進国・日本から世界へ、社会課題解決が成長ドライバーに──ユナイテッド 井上氏

課題先進国・日本から世界へ、社会課題解決が成長ドライバーに──ユナイテッド 井上氏

xfacebooklinkedInnoteline

2025年は、日本のスタートアップを取り巻く環境において、これまでの前提が静かに揺さぶられ、再確認される場面が増えた一年だった。こうした状況を経て迎えた2026年。投資家は今、どのような視点でスタートアップエコシステムを捉えているのか。KEPPLEでは、2025年の振り返りと2026年の展望について、スタートアップ投資家複数名へのアンケート調査を実施。

今回は、ユナイテッド株式会社 投資事業本部長の井上 怜氏の回答を紹介する。

機能差では勝てない時代、事業構造の強さが問われる

──2025年を振り返って、最も印象的だった出来事を教えてください。 (例:注目されたビジネスモデル、政策・規制など)

生成AIが「活用・効率化」から「産業の前提条件」へ変わった1年。

生成AIが一部の先進企業だけの武器ではなく、産業全体の前提条件として組み込まれ始めた一年だったと感じています。「AI活用による効率化」ではなく、「AIを起点に業務プロセスや産業構造の再設計をすること」が重要になってきたということです。

例えば、社会課題が構造化された領域や、業務プロセスが明確なレガシー産業、労働人口減少により省力化が不可逆な市場などにおいて、社会を善い方向へ進めるための構造変革エンジンとして機能し始めています。

特に日本で長年積み上げられてきた現場オペレーションや制度を前提に、「壊さずに変える」プロダクトは、市場としても厚みがある印象です。

また、東証グロース市場の上場維持基準の見直しによる影響も大きかったです。これまでのような単体でのIPO一択ではなく、ロールアップ戦略を掲げてより大きな規模を目指すこと、M&Aによる事業成長を目指すことへのアクションが増え、スタートアップの成長戦略に現実的な影響を与えた年でした。

──2025年の調達環境の変化をどのように捉えていますか?課題や気づきがあれば教えてください。

調達環境全体の資金量が減ったわけではなく、「なぜ調達できるのか」が、以前よりも明確に説明を求められる市場になったと感じます。

変化点としては、「成長ストーリーよりも、再現性や蓋然性への評価シフト」「機能差ではなく、事業構造そのものの強さへの注目」などがあり、投資自体の厳選や調達の二極化がより進んだ1年だったかと思います。

例えば、生成AIの進化によって、昨日まで独自性だった機能が、短期間で一般化するケースが増えています。その結果、「何が競争優位として残るのか」が、よりシビアに問われるようになりました。

一方で、ベンチャーデット、補助金・助成金などエクイティだけではない調達手法の多様化や、売り手/買い手共にセカンダリーニーズの増大などによる株主構成の再設計など、資本政策における柔軟性も生まれている状況だと捉えています。

──2026年に注目するセクターとその理由を教えてください。(海外トレンドや国内の動向なども含めて)

日本は少子高齢化に代表されるような、これから先進国が必ず直面する課題を先行して抱える「課題先進国」です。

日本がいち早く解決モデルをつくれば、やがて同じ課題を抱える国々に対して、解決モデルを輸出できる可能性があります。また、課題解決そのものが、日本経済の再成長のドライバーになり得る。それにより、日本が20世紀後半とは異なる形で世界経済をリードする。そういう未来が来ると捉えています。

我々は「善進投資(ぜんしんとうし)」という考え方のもと、企業における利潤成長の追求と、社会課題解決の両立を目指すことを前提に、 特に「介護負担軽減・高齢者活躍」「地域産業のリデザイン」「豊かな食環境の継続発展」といった領域に注目しています。

また、一次産業(農業など)や建設・製造などのレガシー産業において、制度・現場・オペレーションまで含めて設計し生成AIを組み込むことで、自動化・省力化・平準化を実現できる領域の変革も必要です。

その中で、ビジネスモデルとして人件費代替可能なモデルへの昇華や、単一事業だけで成し遂げられないことをロールアップなどを通じてより大きな挑戦に変えていくこと、などに可能性を感じています。

──2026年の資金調達環境について、どのような見通しを持っていますか?また、スタートアップが備えておくべきポイントは何だと思いますか?

スタートアップへの資金供給量は大きく変わらない中で、投資の厳選や調達の二極化は続き、結果として2025年と同様の状況が続くのではないかと考えています。

ビジネス環境の変化スピードの速さや調達環境を踏まえると、早い段階からExitまでの設計を高い解像度で描きつつ、状況に応じて柔軟な対応ができる準備が必要だと思います。

そのためには、事業における検証サイクルの高速化、強力なユースケースの創出、かつ、収益を得ながらプロダクトやサービスに磨きをかけていく設計、次のラウンドに臨むための状態の明確化、マイルストーンの実行力などが重要になってくると感じています。

また、資金面においても新株発行だけではなく、CBやベンチャーデットなども含めて選択肢の柔軟性を持つことや、早い段階から大企業との接点を持ち、実際に連携を進めることなども重要な選択肢になってくるのではないかと考えています。

──「スタートアップ育成5か年計画」発表からの3年を振り返り、2027年度に国内で10兆円規模の投資額を実現するうえでの課題や、必要なピースは何だと思いますか?

事業面においては、ディープテックや生成AIの台頭、資金面では国の後押し、VCの大型化、大企業の投資規模拡大など複数の背景から、大きなチャレンジを行うスタートアップが増えていると感じています。また、その中で日本らしさ、日本発の強みを活かす環境も深化しています。

一方で、2027年度内に投資額10兆円規模を実現することは現時点では不確実性が高いのも事実だと思っています。実現に向けては、国内で1000億円規模のスタートアップをさらに創出し、その企業が成長し、そこに関わる人材(スタートアップ・投資家双方)を増やし、関わった人達が新たなチャレンジを行う、そうした循環を生み出していく必要があります。

そのためにも、スタートアップが大型の資金を得られるようにするための資金供給のさらなる多様化、事業や成長フェーズに応じた投資家側の役割の明確化、大企業との早期連携による事業成長の加速、M&Aの増加、グローバル展開の早期化など、さまざまな要素の掛け合わせが重要です。

資金提供だけでなく、各ステークホルダーが強みを磨き集結する。
チャレンジの大きさと量を追い求めることが必要だと思います。

Share

xfacebooklinkedInnoteline

新着記事

STARTUP NEWSLETTER

スタートアップの資金調達情報を漏れなくキャッチアップしたい方へ1週間分の資金調達情報を毎週お届けします

※登録することでプライバシーポリシーに同意したものとします

※配信はいつでも停止できます

ケップルグループの事業