インパクトサークル株式会社

「MUFG ICJ ESGアクセラレーター2026」のキックオフイベントが2026年1月29日(木)に東京都港区で開催された。
三菱UFJ銀行と、ESG領域においてベンチャー投資・事業共創を行うインクルージョン・ジャパン(ICJ)が主催する同アクセラレータープログラムは、2021年に初めて開催されて以来、70社以上の大企業・470社以上のスタートアップが参画し、数々の協業事例を生み出してきた実績を持つ。
4回目となる今回は、人・資源不足の解決に取り組むスタートアップ・中小企業の社会的インパクトを可視化し、大企業との協業の意思決定を加速させることを目指す。単なる協業マッチングにとどまらず、参加企業の生み出す社会的価値を定量的に示すことで、投資家や事業パートナーへの説明力を高め、資金調達や事業成長につなげることが目的だ。
キックオフイベントの会場となったベルサール虎ノ門は満席となり、対面参加とオンラインを合わせて約240名が参加した。本レポートでは、当日の様子を一部お届けする。
ESG領域の協業を加速する3つの仕組み
イベントは株式会社三菱UFJ銀行サステナブルビジネス部 投資・事業推進室長の谷口 美和氏による開会挨拶で幕を開けた。
同氏は循環型経済の促進を優先課題の一つとして位置付けている今回のアクセラレーターについて、3点の特徴を挙げた。
1つ目は、より幅広いプレイヤーとともに循環型経済を促進していくという観点から、スタートアップだけでなく、着実にビジネスを展開する中小企業も積極的に支援する点である。
2つ目は、協賛企業が参加企業のソリューションを迅速にテスト利用できるベンチャークライアントモデルの採用だ。協賛費の一部を活用し、スピーディーに協業可能性を検証できる仕組みを整えたという。

3つ目は、生成AIを用いたインパクト可視化支援である。ICJの投資先であるインパクトサークル株式会社が開発した技術を無償で提供し、参加企業が自社の社会的価値を明確に示せるよう支援する。
そもそも社会的インパクトとは何か──可視化のメリット
そもそも、本プログラムの核となる「社会的インパクト」とは何だろうか。
社会変革推進財団(SIIF)の加藤有也氏とKIBOW社会投資の五十嵐剛志氏が前半のトークセッションで解説した。

加藤氏によると、社会的インパクトとは「世の中が社会的・環境的により良くなる変化」を指す。自社の製品やサービスがあることで、「どこの」「誰が」「どのように」良い変化を経験しているかを明確にすることであるという。
五十嵐氏は、スタートアップや中小企業がインパクトを可視化する意義として、2点を挙げた。
1つ目は、インパクト測定を通じてPDCAを回し、事業改善につなげられる点。
2つ目は、投資家などステークホルダーに対する説明責任を果たすことで、資金調達や協業の可能性が広がる点である。
特に重要なのは、インパクトの可視化が事業成長を牽引するという点だ。五十嵐氏によると、インパクトの可視化は従業員、投資家、顧客を引きつけ、事業成長につながる。これがインパクト可視化の最大のメリットであると、五十嵐氏は強調する。
具体例として、京都の住宅支援会社が紹介された。同社は、住宅確保が難しい低所得者や高齢者、障害者に安価な住居を提供し、住宅満足度や生活満足度、健康状態などの指標を毎年公開している。その結果、メディア露出を通じて共感が広がり、新たな投資や融資、助成金の獲得、不動産オーナーからの物件提供、行政との連携へとつながった。この好循環が事業成長を実現している。
加藤氏は、日本のインパクト投資市場が2014年の約300億円から2025年には約17兆円規模に拡大したことに触れ、インパクト投資が金融の一分野として定着しつつあると述べた。200億円規模のファンド設立や、金融業界の中核人材による新たなインパクトVCの登場など、参入も加速している。
さらに、ベンチャーキャピタル投資が難しい中小企業向けに、新たな投資・金融手法の開発にも取り組んでいると語った。社会課題解決と持続的成長を両立する、いわゆる「ゼブラ企業」にも対応できる仕組みづくりを進めているという。
協賛企業が語る、循環型経済の共創パートナー像
MUFG ICJ ESGアクセラレーター2026では、協賛企業が注力する4つのテーマで参加企業を募集している。イベント後半では、それぞれのテーマについて協賛企業4社が自社での取り組み状況や求める協業パートナーについて発表した。
関西電力「次世代エネルギー転換の産業実装」

関西電力株式会社は、電力を提供するだけではなく、その周辺領域も担う「サービス・プロバイダー」への転換を目指している現状を紹介した。同社は、マラウィ(アフリカ)でのカーボンクレジット事業等のグローバルな脱炭素の取り組みと並行して、国内の産業顧客向けソリューションの拡充を目指している。
今回のプログラムでは、工場脱炭素化サービスを提供するため、産業プロセスの電化や、水素等への熱源転換を実現するソリューションを模索している。
熱バッテリーや高温対応ヒートポンプ等の熱源転換に直接寄与する技術以外にも、工場のエネルギー利用を最適化するためのデジタルツインやAIによるデータ解析の技術を有する企業や、太陽光・蓄電池等の利活用・リサイクルに取り組む企業との連携も希望しているという。
日立製作所「プラスチック資源循環の高度化」

日立製作所は、再生材の品質向上と流通の課題解決に取り組む企業との連携を求めている。
再生材は廃棄物由来で品質が劣化しやすく、製造への活用難易度が高いという課題がある。日立はマテリアルズインフォマティクスとプロセスインフォマティクス※という2つの技術を活用し、掃除機等の製品の再生材率40%を実現しているほか、安定した品質を確保しているという。
さらに、再生材が市場に十分流通していない問題を解決するため、同社は再生材マーケットプレイスを立ち上げた。売り手と買い手をAIでマッチングし、需給を最適化する仕組みだ。回収会社、リサイクラー、商社、素材メーカー、製品メーカーといったエコシステム全体を最適化することで、循環型経済の実現を目指す。
森田氏は、プラスチックの再資源化や、AIによる再生材の品質向上、新再生材の開発に関連する技術を持つ企業にこのマーケットプレイスに参画し、ともにビジネスを展開してほしいと呼びかけた。同社は他にもバリューチェーン全体の追跡・管理の高度化等など、循環型社会の実現に寄与する幅広い取り組みを歓迎している。
※ マテリアルズインフォマティクス / プロセスインフォマティクス:AIでデータを統合・解析し、材料開発と製造工程をそれぞれ最適化する技術。工程を大幅短縮し、品質を安定化させることが可能。
三菱UFJ銀行「食の生産性向上とサプライチェーン改善」
三菱UFJ銀行は、食品廃棄物のアップサイクルに関する取り組みを発表した。日本では年間2100万トン以上の食品廃棄物が発生し、そのうち食品ロスによる経済損失は約4兆円に上る。
食品廃棄物は現在、肥料や飼料として低付加価値で再利用されているが、より価値の高いものにアップサイクルできれば、生産者の所得向上や地域の持続可能性向上につながると大河氏は説明する。
同行は、アップサイクルの取り組みとして、イオンや伊藤園と連携し和歌山県産のみかんの皮を活用したクラフトビールを開発した。この取り組みでは、みかんの皮を排出する企業、クラフトビールを企画するスタートアップ、販路を持つ大企業が連携し、スケールメリットを活かした事業モデルを構築した。金融機関として中立的な立場を活かし、サプライヤー、技術を持つ企業、バイヤーを束ねた座組みを作ることで、アップサイクル市場の形成に貢献したいと大河氏は語る。
同行は、アップサイクル、在庫・物流最適化、需給予測、地域活性化といった幅広い食の関連領域での協業機会を探索していくとしている。
セブン・フィナンシャルサービス「生成AIを活用した人手不足の解消」

セブン・フィナンシャルサービスは、AIを活用し業務効率化・省人化に寄与するソリューションや、既存業務を生成AIで効率化し、そのノウハウの横展開を目指す中小企業との出会いを求めている。
セブン・フィナンシャルサービスは、セブン-イレブンと協力企業を主要顧客とした企業向けリース・保険事業を展開している。セブン-イレブン店舗への電子レンジやマルチコピー機、防犯カメラ等のリース、食品製造会社や物流配送会社への設備リースなどを手がける。保険領域では、オリジナル商品を店舗オーナーや食品製造会社向けに提供するほか、年間約700件発生する店舗への車両突っ込み事故に対応するため、店舗駐車場へのガードパイプ設置なども行っている。
セブン-イレブンは約2万店舗を有し、1日あたり2000万人の顧客が来店する。店舗オーナー約1万3000名、食品製造会社60社 / 5万人、物流事業会社140社 / 3万人、店舗スタッフ約40万人が携わる。この一大ビジネスを支えるべく、セブン・フィナンシャルサービスはリースや保険といった金融サービスを提供しているが、今後はリスクマネジメントやサステナビリティを支えるプロダクトを提供し、セブン-イレブンの「困りごとを解決する」だけではなく、社会課題の解決にも寄与していきたい考えだ。佐藤氏は、セブン-イレブンをさらに盛り上げていきたいと述べ、そのために参加企業の力を借りたいと呼びかけた。
インパクト可視化が切り拓く、事業成長と循環型社会への道
「MUFG ICJ ESGアクセラレーター2026」の約3ヶ月間のプログラムを通じて、参加企業は大企業との協業検討機会とインパクト可視化支援、メンターからのフィードバックを受けることができる。
循環型経済への移行は待ったなしの課題だ。本プログラムが、社会的価値を生み出す企業と、その価値を評価し支援する大企業や投資家をつなぎ、共創と事業成長を加速させる場となることが期待される。
<MUFG ICJ ESGアクセラレーター 2026について>
三菱UFJ銀行と、ESG領域においてベンチャー投資・事業共創を行うインクルージョン・ジャパン(ICJ)は、人・資源不足の解決に取り組むスタートアップ・中小企業の社会的インパクトを可視化し、大企業との協業の意思決定を加速するプログラム「MUFG ICJ ESGアクセラレーター 2026」を開催。現在、参加企業を募集しています!
【対象】
以下の注力テーマに取り組むスタートアップ、現場オペレーションや顧客基盤に強みを持つ中小企業
- 次世代エネルギー転換の産業実装
- プラスチック資源循環の高度化
- 食の生産性向上とサプライチェーン改善
- 生成AIを活用した人手不足の解消
【申し込み〆切】
2026年2月28日(金)公式サイトはこちら:https://www.esgaccelerator.com/











