i Labo株式会社

水素エネルギーの普及を支える技術と取り組み
カーボンニュートラルを目指す動きが進む中、水素エネルギーが注目されている。水素は燃焼しても二酸化炭素を排出せず、電力供給や輸送手段、産業プロセスなど多方面での利用が期待されている。
国内における水素エネルギー活用機器・システムの市場規模は、2025年度に1123億円、2030年度には6633億円に成長すると予測されている。※市場規模は拡大しつつあり、多くの国で政策的な支援やインフラ整備が進行中だ。
スタートアップ企業が果たす役割は大きく、新しい技術やビジネスモデルによって水素エネルギーの可能性をさらに広げている。水素製造のコスト削減から効率的な輸送手段の開発、そしてエンドユーザー向けの応用技術まで、新たな取り組みが行われている。
本記事では、こうした取り組みを進めるスタートアップ企業を紹介する。

スタートアップ5選
i Labo株式会社
企業HP:https://h2ice.co.jp/
トラックにおける「水素化コンバージョン」技術を開発する。同社の水素化コンバージョンは、既存のエンジンを水素燃料仕様に変更することができるサービス。従来の内燃機関を脱炭素化するための新しい選択肢となる。また、顧客が使用する化石燃料エンジン機器のライフサイクル全体におけるCO2排出量を分析し、その結果を基に、機器の使用状況や経営方針に適したCO2削減案を提案する「カーボンオーディット TM」も提供している。
2025年4月には、TPR、上組、三芳エキスプレス、出光興産を引受先とした第三者割当増資による、約8億円の資金調達を実施した。
OKUMA DRONE株式会社
企業HP:https://www.okumadrone.com/
水素エネルギーを活用した産業用ドローンやロボットの研究・開発などを行う。同社の水素燃料ドローン技術は、空気圧縮機や水素循環ポンプを用いた高効率水素燃料電池システムにより、長時間・長距離飛行を実現する。石油化学プラント内の危険ゾーンでのドローン飛行を行う「防爆ドローン技術」や、独自の種子カプセル、種子散布器に、複数機同時運航管理システムを組み合わせることで斜面の緑化施工の効率化する「種子散布ドローン技術」も開発している。
2024年7月には、千葉市の「ドローン宅配社会実装サポート事業」において、エアロダインジャパンが提案し採択された補助事業に参画し、エアロジーラボと共同で医薬品輸送の実証実験を行った。
株式会社ハイドロネクスト
企業HP:http://www.hydronext.co.jp/
バナジウムを活用した水素精製技術を用いたデバイスを開発する。金属膜に安価で埋蔵量の多いバナジウムを採用することで、ひとつの工程だけで極めて純度の高い水素を取り出すことができる。従来使用されてきたパラジウム膜と比較して高い水素透過性能を持ち、低コストでの水素精製が可能。半導体工場をはじめとする、水素が求められるさまざまなシーンで活用ができる。
2024年6月には、プレシリーズAラウンドにて、UntroD Capital Japan、肥銀キャピタル、信金キャピタルなどを引受先とした第三者割当増資による、2.3億円の資金調達を実施した。
株式会社フレイン・エナジー
企業HP:http://www.hrein.jp/
水素製造・貯蔵装置の製造・販売などを行う。有機ハイドライド技術を活用し、水素を常温常圧で液体として貯蔵・供給するシステムを提供している。この技術により、水素の取り扱いが安全かつ容易になり、クリーンエネルギーとしての水素の普及を推進している。主に水素製造・貯蔵装置の開発・販売、メンテナンスを行い、廃棄物処理機器や分散型電源装置も手がける。また、水素技術や燃料電池に関する研究開発も行い、地球環境保護に貢献する。
2023年1月には、経済産業省、国土交通省、厚生労働省、文部科学省が連携して行う第9回ものづくり日本大賞で、「ものづくり地域貢献賞(北海道経済産業局長賞)」を受賞した。
ABILITY株式会社
常圧水素カートリッジや、水素燃料活用技術プラットフォームなどを開発する。この水素カートリッジは燃料デバイスとして、生活、モビリティ、医療、ヘルスケア、養殖といった幅広い分野での利用を目指している。2024年8月にシーラソーラーと業務提携契約を締結し、太陽光発電と常圧水素カートリッジを利用したクリーンエネルギー供給の共同実証実験を開始している。
2024年2月には、名古屋キャピタルパートナーズを引受先として資金調達を実施した。同年9月には、甲府市と水素の利活用に関する連携協定を締結した。

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※矢野経済研究所 「水素エネルギー活用機器・システム市場に関する調査を実施(2024年)」