はじめに
2020年度以降、コロナ禍による店舗の営業時間短縮・休業、移動制限による人流の滞りなどの影響により、外食産業向けの酒類・飲料、食料品、屋外での活動時の飲料、土産用の菓子などが苦境に立たされた。
矢野経済研究所※によると、2021年度の加工食品市場規模は、メーカー出荷金額ベースで前年度比99.6%の29兆7860億円となった。近年は健康を意識する消費者が増加しており、高タンパク・低カロリーなど健康に良いとされる食品の需要が伸びている。
外食産業向けが回復傾向にあることに加え、食品の価格上昇もあり、市場規模は拡大する見込みであり、2026年度の加工食品市場は31兆984億円になると予測される。
スタートアップ5選
この領域の上場企業としては、味の素株式会社やアサヒ飲料株式会社などが挙げられるが、今回はスタートアップ5社を紹介する。
株式会社ベンナーズ
魚を使用したミールキットのサブスクリプションサービス「フィシュル」などを運営する。「サイズがバラバラ」や「傷がついている」などの理由で流通の前段階で廃棄される魚を活用して、ミールキットや加工品を製造し、販売するサブスクリプションサービスを提供する。
2022年12月には、Dawn Capital、三菱UFJキャピタル、佐銀キャピタル&コンサルティング、Frontiveを引受先とする8000万円の資金調達を実施した。サービス開始から約2年で定期フィシュル会員数9,500人、売上3500万円を突破している。
株式会社ベンナーズ
設立:
2018年
企業HP:
株式会社ovgo
卵やバターなどを使用せず、植物性素材のヴィーガン仕様のアメリカン・クッキーを開発・販売する。 ヴィーガンクッキーやマフィンを販売する日本橋小伝馬町の店舗「ovgo Baker Edo St.」の運営をはじめとし、渋谷や長野県などにも店舗を構える。 同社はそのほかに、ヴィーガンクッキーのインターネット販売も行う。ヴィーガン食の分野は、畜産業から排出される大量の温室効果ガスを削減し環境問題にも貢献できる。
2023年1月には、ICJ2号ファンド、MBKF、個人投資家を引受先とする第三者割当増資により、1.3億円の資金調達を実施した。2022年には、原宿・神保町・福岡・京都の4拠点を開業している。
株式会社ovgo
設立:
2020年
企業HP:
株式会社RiceWine
神奈川県の井上酒造へ委託醸造で、 オリジナルブランド「HINEMOS」の銘柄を造る日本酒メーカー。 コンセプトは「時間」。夕方の6時から朝の5時までの12銘柄とし、飲む時間帯に合わせた日本酒を提案している。
2022年9月には、シリーズAラウンドにてDIMENSION、ロッテベンチャーズ・ジャパン、横浜キャピタル、三菱UFJキャピタルを引受先とする第三者割当増資により、3億円の資金調達を実施した。HINEMOSを発表以来、酒類業界にとって逆風となるコロナ禍でも急成長を遂げ、累計販売本数は150,000本を突破。中国・台湾にも販売を進めている。
株式会社RiceWine
設立:
2018年
企業HP:
株式会社グリラス
食用コオロギを⽤いた⾷品原材料および加⼯⾷品の製造、販売、コオロギの飼育管理サービスの開発を行っている。世界的な課題である食糧問題をはじめ、持続可能な社会を創造するために、テクノロジーで世界を変えることに挑戦する。「食用コオロギパウダー」は、完全室内飼育製造をした安心・安全な食用コオロギパウダー。栄養バランスの取れたオリジナルのエサで飼育し、飼育温度も徹底管理されている。
2022年2月には、シリーズAにてBeyond Next Ventures、HOXIN、産学連携キャピタル、いよぎんキャピタル、近鉄ベンチャーパートナーズ、食の未来ファンド、地域とトモニファンドを引受先とする、約2.9億円の資金調達を実施した。2040年までに国内における年間253万トンの食品ロスの活用・循環を目指す。
株式会社グリラス
設立:
2019年
企業HP:
POST COFFEE株式会社
個人の好みに合ったコーヒー豆を届けるコーヒー豆のサブスクリプションサービス「PostCoffee」を運営。利用者は、用意された質問に答えると約30万通りからコーヒーの好みが診断され、それに応じたコーヒー豆が毎月宅配される。
2022年10月には、シリーズAラウンドにて三井住友海上キャピタル、ギフティ、三菱UFJキャピタル、CARTA VENTURESを引受先とした第三者割当増資により、約4.3億円の資金調達を実施した。サービス開始から2022年10月時点で会員登録者数が5万人を突破。2023年6月には、プロの焙煎士が選んだスペシャルティコーヒーと、ロッテのラミーテリーヌのコラボレーション販売を実現した。
POST COFFEE株式会社
設立:
2018年
企業HP:
おわりに
今回紹介した企業は、食品は生活に欠かせない重要な分野であり、今後もさらに注目が集まりそうだ。
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参考:矢野経済研究所「国内加工食品市場に関する調査を実施(2022年)和5年)3月分) 」