商品情報の整備に取り組むmonolyst、3億円調達で製造業の情報基盤構築へ

商品情報の整備に取り組むmonolyst、3億円調達で製造業の情報基盤構築へ

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monolyst株式会社がAIを活用した商品情報管理システム「monolyst」の正式提供を開始し、Coreline Venturesから累計3億円のシード資金を調達した。

monolystは2024年4月に設立されたスタートアップで、工具や建材、自動車部品などを扱う卸売業者向けにサービスを展開する。同社の主力プロダクト「monolyst」は、紙のカタログやエクセルに分散して存在していた商品スペック・画像・図面などの情報をAIで自動解析し、統一的な商品マスタとして一元管理する。さらに、生成したデータはデジタルカタログの作成やカテゴリー・シリーズごとの商品検索、Web受注システムとの連携などにも活用できる。従来、業界で多く発生していた人手による転記作業を大幅に削減できる点が特徴であり、データ整備にかかる手間やコストの圧縮が主な狙いとされている。

2024年11月にはクローズドβ版を20社に提供し、2027年までに1000社への導入を目標として掲げている。現時点で機械工具専門商社や建材・部品卸商社での導入実績があり、紙媒体情報のデジタル化やEC基盤強化、販路拡大支援などのニーズに対応している。料金体系は個別見積もり方式となっている。

代表取締役の伊関洋介氏は1988年生まれ。トヨタ自動車で海外営業を経験した後、フリーでSaaS事業開発に従事し、独立した。自身の副業で雑貨輸入販売を行った際に商品情報管理の非効率さを痛感したことが、創業のきっかけとなった。伊関氏はこれまで企画、営業、事業開発に一貫して取り組んできた経歴を持つ。

日本の製造業は、2021年時点で労働生産性が世界18位にとどまっており、グローバル競争力の維持が課題となっている。これは、労働投入量に比して付加価値額の伸びが鈍化していること、特に現場やフロント業務の効率化が遅れていることが背景にある。工具や部材を扱う卸・商社は国内に10万社以上存在しているが、多くの企業が基幹システムの老朽化やIT人材不足を抱え、デジタル化の遅れが目立つ。受発注業務の多くが依然としてFAXや電話を介して行われ、カタログ作成や商品マスタ登録も人手に頼る状況が続いている。

一方で、BtoB-EC市場は成長が著しく、アスクル、ミスミ、モノタロウの主要3社だけで20年の間に売上を約7倍に伸ばし1兆円規模の市場を形成している。購買者による商品選定の70%がネット上で完結しているとの調査もあり、販売側の商品情報デジタル化の遅れが機会損失につながっている。

将来的な労働供給不足も業界の大きな懸念材料となっている。2040年までに約1,100万人の労働力が不足するとの推計があり、生産性向上なしには業界全体が縮小均衡に陥るリスクが指摘されている。EC対応や海外輸出拡大の必要性も高まっており、商品流通のデジタル基盤整備が急務となっている。

業界内では、Convi.BASEやPIM(Product Information Management)関連の国内外ベンダーも存在し、同様の市場を狙っている。monolystは紙カタログや画像、図面といったアナログ情報の自動デジタル化をAIで実現する独自のアプローチを採用している。これは製造業・卸業の現場に特有の課題に対応するためのものだ。

今回調達した資金は、商品情報管理システムだけでなく、Web受注システムやFAX注文書解析サービスなどのプロダクト開発強化に投入される。また、新オフィスへの移転や人員の増強も進行中で、エンジニアや営業担当者の採用活動も続けている。

商品情報のデジタル化がどこまで業界全体の競争力強化につながるかは今後の展開次第だが、EC市場の成長や購買プロセスの変化、国際競争力向上といった課題への対応が求められている。商品情報の標準化や多言語対応、海外市場への展開も今後の開発方針として視野に入れている。

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