AI不正リスク検知SaaSのNaLaLys、プレシリーズAで2.5億円を調達──統合型コンプライアンスDXへ展開加速

AI不正リスク検知SaaSのNaLaLys、プレシリーズAで2.5億円を調達──統合型コンプライアンスDXへ展開加速

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SaaS型の不正リスク検知ツール「NaLaLys」を開発・提供する株式会社NaLaLysが、プレシリーズAラウンドで第三者割当増資による2.5億円の資金調達を実施した。出資はデライト・ベンチャーズ、DNX Ventures、WPower Fundが引き受けており、これにより累計調達額は3億円となった。

NaLaLysは2023年1月に設立されたスタートアップであり、同年にAIを活用した企業向け不正リスク検知・分析ツール「NaLaLys」をリリースしている。企業内で日々生成される大量のメールやチャット、業務ログデータを対象に、談合、品質虚偽、情報持ち出し、ハラスメントなど多様なリスク兆候を自動で分析・検知する点が特徴となっている。不正事例をもとにした教師データと、不正調査の現場知見を反映した独自ロジックを組み合わせることで、効率的なリスク抽出と早期発見を可能にしている。

従来は担当者による目視確認や属人的な内部監査が主流だったが、NaLaLysの導入によりこれらの作業の自動化が進み、大手上場企業を含むクライアント企業への導入実績も増えている。プロダクトは高度な分析機能に加え、ユーザーインターフェースの設計や環境構築の簡便さにも配慮されており、企業のリソース不足や、いわゆる「コンプラ疲れ」といった現場の課題への対応策を提供している。同社によると、内部統制やガバナンス強化の過程で制度が複雑化し、現場への負担や心理的な疲弊が生じやすいが、同社のAI分析を活用することで効率化とリスク低減の両立が図りやすくなるという。

代表取締役の長谷島良治氏は創業メンバーであり、企業内不正の実務やフォレンジック(証拠調査)の経験を持つ。リスク調査や内部監査支援に携わる中で感じた現場課題が、AIによる不正検知システム開発の動機となった。チームにはAI技術やデータサイエンスの専門家も参画しており、理論と現場実務の両面からサービスの精度を高めている。

コンプライアンステクノロジー業界では、近年、上場企業だけでなく非上場・中小企業においても不祥事リスクが高まっている。帝国データバンクによると、2023年度にはコンプライアンス違反を原因とする倒産が351件と過去最多を記録。粉飾、贈収賄、品質偽装、情報漏洩に加え、ハラスメントや経理・業法違反の摘発も増加傾向にある。2024年には日本の内部統制報告制度(通称J-SOX)が一部強化され、デジタル証跡管理やAIによるモニタリングのニーズが拡大した。こうした背景から、リスク管理SaaSやAIベンダー各社が参入し、不正検知・防止市場は2026年に5.3兆円規模へ成長するという推計も出ている。

一方で、導入企業側では人手不足や高負荷のアナログ業務が依然として課題となる。AI監視システムを導入するだけでは問題の根本解決に至らず、システムの説明性や現場の納得感、教育体系の整備など、運用段階で新たな課題が顕在化するケースも少なくない。近年は外部有識者との連携や自動レポーティング機能など、運用支援サービスも広がりを見せている。競合としてはLayerXやLegalForceなどが同分野に取り組んでおり、市場の競争環境は活発化している。

NaLaLysは、AIによる兆候検知だけでなく、教育支援や職場改善の一体運用を視野に入れた「コンプライアンスDX」の構築を目指している。

今回の資金調達により、NaLaLysはさらなるプロダクト強化、設備投資、組織拡大を進める構えだ。コンプライアンス強化と業務効率化を両立させるAIソリューションの開発動向は、今後の市場構造や企業のリスクマネジメント体制に具体的な影響を与えることが予想される。

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