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8.2億円調達の株式会社シコメルフードテックが先導する、飲食業界のDX

飲食店向けに「仕込み」作業の外部委託プラットフォームを展開する株式会社シコメルフードテックが、シリーズBエクステンションラウンド・ファーストクローズにて総額9.8億円の資金調達を実施した。今回の調達によって累計資金調達額は25.6億円となり、今後の事業拡大と上場準備体制の構築を進める方針である。
シコメルフードテックは2019年12月設立。主力サービス「シコメル」は、飲食店やフード事業者が店内で担ってきた食材の下処理や調味などの仕込み業務を、提携する食品工場へ外注できるアプリケーションである。ユーザーは自店舗のレシピをもとに仕込み済み食材の発注・納品ができ、厨房スタッフの労働負担や人手不足、味のばらつきといった課題の解消を目指している。
また、飲食店向けに仕込み済み商品を活用したデリバリー・テイクアウトブランドのライセンス導入を支援する「デリバル」事業も展開中である。この仕組みにより、飲食店はイートイン業務に過度な影響を与えず、厨房スタッフの増員をせずとも新たな売上機会を創出できる。2024年12月時点で、登録レストラン数は8000店を超える。さらに、有名店やシェフ監修の商品をラインナップし、レシピを提供した飲食店やシェフには売上フィーが支払われるレベニューシェア型のモデルも採用している。
今回の資金調達にはPF Visionary Fund、ユニコーンターゲットファンドforシコメルフードテック、ペガサス・テック・ベンチャーズ、ハウス食品グループ-SBIイノベーション2号ファンドなどの機関投資家が参加している。新規投資家であるハウス食品グループとの業務提携も合意された。調達した資金は、組織体制の強化や従業員数の拡大(現行40名から2026年5月までに60名へ)、コーポレートガバナンス体制の整備などに活用される計画だ。同社は現在「IPO準備ステージN-2」(上場の約2年前段階で本格的な監査や管理体制の強化を行う段階)と位置付けている。
経営体制については、代表取締役CEOの川本傑氏が率いている。川本氏はリクルートで新規事業開発を経験した後、前職の取締役を経て現職に就任した。創業時からのパートナーである西原直良氏(現取締役会長)は、飲食・食品業界で20年以上の事業歴を持ち、川本氏とともに食品卸・加工分野での起業経験もある。経営陣には食品会社やIT、コンサルティング、外食チェーンでのメニュー開発経験者、公認会計士など多様なバックグラウンドの人材が揃っており、専門性を活かした組織運営が特徴である。
外食産業は新型コロナウイルス感染症の影響を受け、デリバリーやテイクアウト市場が拡大する一方で、深刻な人手不足や高コスト構造といった課題が継続している。矢野経済研究所によると、2023年の国内外食産業の市場規模は約31兆円とされるが、生産性向上や人材定着などの構造的な課題は依然として解消されていない。市場にはスターフェスティバル(ごちクル)などの外部受託型セントラルキッチンや業務効率化支援サービスも存在し、競争が激化している。それぞれ、個別レシピの対応やアプリ連動型発注、メニュー開発支援、レシピシェアによる収益多様化といった差別化ポイントがみられる。
シコメルフードテックは、今回調達した資金を基に、商品開発力やデジタルプラットフォームの強化、経営管理基盤の整備などを進める計画だ。具体的には、AIによるメニュー開発や受発注データを活用した食材需要予測、フードロス削減など、テクノロジーを活用した新たなサービス展開も視野に入れている。
外食業界では省人化や持続可能性を意識した事業運営が重要視されており、業務支援型のデジタルインフラに対するニーズは今後も拡大する傾向にある。反面、現場作業のデジタル化や経営者の意識変革、食品流通網との連携など、導入面での課題も多い。スタートアップ各社による業界全体の効率化や標準化の進展が、今後の市場動向を左右する要素となっている。
シコメルフードテックは、組織体制の拡充や提携強化により、全国展開とサービスの多角化を計画している。飲食業界が直面する人手不足や経営効率化の需要に対し、同社がどのような実効性を持って応えていくのか、今後の動向が注目される。
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