生活に根付いたオンデマンドデリバリー
オンデマンドデリバリー市場は、コロナ禍で需要が伸びた分野の1つだ。矢野経済研究所※の最新の調査によると、2022年度の食品宅配市場規模は前年度比102.3%の2兆5363億円となった。2027年には2兆9074円と予測されており、この成長傾向は今後も続くと予測されている。
グローバル市場では、Uber Eats、DoorDash(2021年にWoltを約9120億円で買収)など多くのプレイヤーが参入している巨大市場である。最近は、「ダークストア」と呼ばれる実店舗を持たずに宅配専門の倉庫からオンデマンドで日用品をデリバリーするサービスや、自動運転やドローンでの配送も注目されている。
テクノロジーの進化と消費者の利便性への要求が高まる中、オンデマンドデリバリー市場は今後も革新と成長を続けると予想される。今回は、このようなサービスを行っているスタートアップを紹介する。
スタートアップ4選
この領域の上場企業としては株式会社出前館が挙げられるが、今回は非上場のスタートアップ4社を紹介する。
menu株式会社
フードデリバリー・テイクアウトサービス「menu」を運営する。ユーザーはアプリ上でメニューの事前注文・決済や店舗での受け取り、デリバリーができる。 auスマートパスプレミアムとの連携による店舗のプロモーション、豊富なグルメコンテンツによる有名店や人気店の特集、食品から日用品までを取り扱う利便性の高いサービスが特徴となっている。
加盟店は2022年8月時点で、国内33都道府県、約91000店舗に達した。
OniGO株式会社
企業HP:https://onigo.club/
クイックコマースサービス「OniGO」を運営する。 ユーザーがアプリから食料品や日用品などを注文すると、ダークストアから商品が最短10分で即時配達される。同社は、ユーザーが安心して利用できるように自社で配送員を採用している。利用者との丁寧なコミュニケーションを図り、地域密着型の安心安全な買い物を提供する。また、超高速なシステム開発力を生かし、デリバリーに最適なピッキングシステムや在庫管理システムを開発した。
対象エリアは2024年7月時点で東京、神奈川、大阪など11都府県に広がっており、今後も配達エリアを拡大していく。
2022年8月には、即時購買・配達や地域密着型配達員を活用したマーケティング事業の共同開発を目指し、博報堂と資本業務提携を行った。
ニジュウニ株式会社
企業HP:https://nijuni.jp/
グループ注文専用のフードデリバリーサービス「ぼくデリ」や、「#TakeOutMe」を運営する。ぼくデリは、LINEを活用したフードデリバリーサービスで、LINEのグループ内の複数注文に特化したデリバリーサービスである。#TakeOutMeは、テイクアウトメニューを作ってSNSに拡散する飲食店支援ツールだ。
2024年2月には食事でつながるコミュニティサービス「mshokujii」をリリースした。mshokujiiは、フードオーダーシステムとイベン集客ツールを組み合わせたサービスだ。イベント主催者は、注文する店を選択するだけで、簡単にイベントコンテンツを作成できる。参加者はメニューを選んで決済をするだけで、コミュニティに参加することができる。
株式会社tacoms
企業HP:https://www.camel-delivery.com/
フードデリバリーサービスの一元管理システム「CAMEL」を運営する。CAMELは、複数のデリバリー・テイクアウト サービスを、 ひとつの端末で受発注から集計まで管理することができ、業務効率化を図るサービスだ。掲載メニューの変更や売り切れの設定なども行うことが可能で、複数店舗、複数サービスの集計・各種設定も1つのダッシュボードから操作ができる。2024年7月時点での利用数は6000店舗以上。
2023年6月には、LINEオーダーシステム「どこでも注文くん」と連携を開始した。
新たな生活インフラとしてのオンデマンドデリバリー
今回紹介した企業は、買い物や料理をする時間がない人だけでなく、高齢や地理的原因で出かけることが難しい人たちの生活も支えるなど、新たな生活インフラになりつつある。これらのサービスは、多様な社会ニーズに応え、人々の生活の質を向上させる重要な役割を果たしつつある。高齢化や生活様式の変化に伴い、こうしたサービスの重要性は今後さらに高まると予想される。今後も、オンデマンドデリバリー関連のスタートアップの動向にはさらに注目が集まりそうだ。
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※矢野経済研究所「食品宅配市場に関する調査を実施(2023年)」