睡眠時のSAS検査を“指輪”が変える──X Detect、シリーズAで累計1.8億円

睡眠時のSAS検査を“指輪”が変える──X Detect、シリーズAで累計1.8億円

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生体センシング技術を用いたヘルスケア領域のスタートアップ、X Detect株式会社がシリーズAラウンドで資金調達を実施し、累計1.8億円となった。

X Detectは2022年7月に設立された。非侵襲的に生体情報を計測する技術を核に、患者や医療従事者双方の負担軽減を目指すソリューションの開発・提供を行う。主力製品のバインスタリングは、指にはめて睡眠時に装着することで、脈拍や血中酸素飽和度などのバイタルデータを1秒ごとに取得。取得データはクラウド経由で遠隔モニタリングされる仕組みだ。2023年にリング型パルスオキシメータとしてクラスII認証を取得し、医療機関との実証実験も進めてきた。

バインスタリングは、専用アプリやクラウドとの連携によってバイタルデータの可視化と記録管理が可能であり、特にSAS(睡眠時無呼吸症候群)の簡易スクリーニングに特化したレポート機能が特徴だ。従来のSAS診断では終夜睡眠ポリグラフ(PSG)検査が標準的に用いられるが、この検査は専門医や高額な機材、時間、患者の身体的・心理的負担といった制約が大きい。バインスタリングは、日常生活を妨げず手軽に自己計測ができる点で、医療アクセスの課題解決に寄与する。

代表取締役の劉勝前氏は、IT領域およびセンシング技術分野での事業経験を持つ。X Detectの設立は、医療データの可視化を基盤とした患者負担の軽減や生活習慣病予防の早期介入の必要性を背景としている。

SASは睡眠中に呼吸が一時的に停止または低下する疾患で、日中の眠気や集中力低下、交通事故リスクの増加といった社会的影響が指摘されている。日本国内の推定患者数は約900万人とされるが、実際に診断・治療を受けているのはごく一部にとどまる。加えて、高血圧や心血管疾患などの生活習慣病を合併しやすい傾向にあり、医療費負担や労働損失の軽減につながる可能性が指摘されている。

ウェアラブルデバイス市場では、海外勢も含めて多様な商品が展開されている。国内でもリストバンド型やパッチ型、従来型パルスオキシメータ、スマートフォン連携型健康トラッカーなどが存在するが、医療認証を取得したリング型はまだ数少ない。装着の容易さや長時間使用時の快適性、医療現場での活用実績、データ管理の安全性などがプロダクト選定の際の重要な要素となっている。

今回の資金調達には、パラマウントベッド、ソーネット、ミライドア、みずほリースなどの医療・ヘルスケア分野の事業者やベンチャーキャピタルが出資した。調達資金は、バインスタリングの機能拡充や量産体制の強化、マーケティング展開、人材採用に充当する計画だ。

国内のSAS検査市場では、運送、建設、製造業などの事業者健診や健診センター、地方自治体におけるスクリーニング需要が拡大している。加えて、医療DXやリモートモニタリングの需要増、バイタルデータを活用した企業の健康経営推進といった動きが加速しており、関連産業との連携が進む可能性もある。一方で、今後は競合ベンダーの新規参入や価格競争、取得データの利活用に関連した法規制の動向なども注視される。

今後、製品開発や機能拡充を進めるとともに、医療機関や企業などの パートナーシップ拡大を目指している。生体センシング技術を活用したSASスクリーニングの現場導入が、医療や社会にどのような変化をもたらすかが問われている。

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