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アフターコロナの動向に注目集まるアパレル市場
多くのアパレル企業が積極的にDXに取り組んでいる。消費者が実店舗での購入を好む傾向や、オンラインとオフラインの購買体験のギャップなど、DXの普及には依然として課題が残されている。
矢野経済研究所※によれば、紳士服・洋品、婦人服・洋品、ベビー・子供服・洋品を合計した2022年の国内アパレル総小売市場規模は、前年比105.9%の8兆591億円で2年連続で前年を上回った。
販売チャネル別では百貨店、専門店における実店舗の回復が顕著である。コロナ禍による外出自粛や行動制限等で、停滞していた外出機会が増加したことにより、買い替え需要や新調需要が回復し、実店舗の利用が増えた。一方、EC(インターネット通販)はコロナ禍で顕著な成長を遂げたものの、現在は需要が落ち着き、成長率が鈍化している。実店舗での購買需要がその一因と考えられる。アフターコロナ時代に生き残るためには、アパレル業界においてもDXは必須である。単に、ECにチャネルを持つだけでなく、AIなどさまざまなテクノロジーを併用することで、新たなサービスが生まれてきている。
株式会社HIVE Collective
企業HP:https://about.hivecollective.jp/
洋服・バッグ・靴などラグジュアリーファッションのシェアリングプラットフォーム「HIVE Collective」を運営する。 HIVE Collectiveは、ラグジュアリーブランドの洋服・バッグ・靴などを会員同士で貸し借りできるシェアリングサービス。同サービスにおけるレンタル希望者は、アイテムと受取日をウェブサイト上から指定すると、商品が自宅まで届きレンタルできる。自身がもつ洋服やバッグなどを貸し出したい場合は、貸し出し希望の旨を連絡し、現品を発送する。現品は、査定後にサイト上へ出品され、自身の出品アイテムがレンタルされると、収益が入金される仕組み。リクエスト承諾制で、好きなときだけシェアできる。
2022年11月には、シードラウンドにて、SBIインベストメント、ココナラスキルパートナーズ、90s、ロッテベンチャーズ・ジャパン、その他個人投資家等を引受先とした約1.2億円の資金調達を実施した。
Synflux株式会社
企業HP:https://synflux.io/
デザインシステム「Algorithmic Couture」や「WORTH」の開発・事業化を行う。 Algorithmic Coutureは、機械学習や3Dシミュレーション、アルゴリズミックデザインを活用し、衣服生産時に排出される素材の廃棄を極小化する。WORTHは、仮想空間でのバーチャルファッションを提供する次世代プラットフォーム。アバターのカスタマイズや仮想空間でのクリエイター活動も支援する。
2023年2月には、MTG Ventures、GOLDWIN PLAY EARTH FUND、mint、ココナラスキルパートナーズ及び鈴木達哉氏を引受先とした資金調達を行った。2024年6月には、経済産業省の次世代ファッションクリエイター育成を目的にした補助事業「みらいのファッション人材育成プログラム」に採択された。
株式会社Brandit
企業HP:https://www.brandit.co.jp/
ファンションブランドの運営や販売データ管理システムを開発する。 同社は、ファッションブランド「TRUNC 88」や「WM」などを運営するほか、受注情報や売上情報を一元管理できるシステム「BRANDIT system」を開発。BRANDIT systemでは、ECプラットフォーム、マーケティング、広告・ブランド領域、データなど幅広いサポートを行う。
2023年9月には、SNS総フォロワー数56万人を誇る女優「木﨑 ゆりあ 」をディレクターに起用し、アクセサリーブランド「INFiNi 8(アンフィニエイト)」を立ち上げた。
株式会社GOOD VIBES ONLY
企業HP:https://goodvibesonly.jp/
アパレルの業務効率化や3DCGやAIなどのテクノロジーを用いてDX化を実現する。同社では、商品企画、製造、販売、 分析に至るまでの全プロセスを デジタルで一元管理できる「Prock」を提供し、アパレル業界の課題を解決する。
2023年5月には、シリーズAラウンドにて、SMBCベンチャーキャピタル、NCBベンチャーキャピタル、新生企業投資、セレス、D2C&Co.、ベクトルを引受先とした第三者割当増資および融資による累計約8.1億円の資金調達を行った。2024年4月には、デジタルファッションを活用した新しいブランディングサービス「Vision+」の提供を開始した。
株式会社DROBE
企業HP:https://drobe.co.jp/
パーソナルスタイリングサービス「DROBE」を運営する。 DROBEは、プロのスタイリストやバイヤーがユーザーの好みや悩みに合わせて服を選び、宅配するサービス。専門のスタイリストや元アパレル店員など経験豊富なプロが、ユーザー専用のスタイリストとして選ぶ「商品5点」と、着こなしのポイントなどを記載した「スタイリングカルテ」を「セレクトBOX」として届ける。ユーザーは、届いた服の中から気に入ったものだけ購入することができる。
2024年3月には、製品の配送・返送用の段ボールに代わる継続利用可能な循環型の箱のテスト導入を開始した。
デジタル技術の活用が加速
今回紹介した企業は、アパレル業界のDX化を促進し、業務効率化や顧客への便利で迅速なサービスなどを提供している。今後も、アパレル業界におけるDX関連のスタートアップの動向には、AIなどの革新的なテクノロジーの導入や新しいビジネスモデルの展開により、さらなる注目が集まりそうだ。
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※矢野経済研究所「国内アパレル市場に関する調査を実施(2023年)」