Synflux株式会社

サステナブルファッション分野のスタートアップであるSynflux株式会社が、総額2.5億円の資金調達を実施した。今回のラウンドではGoldwin Play Earth Fundがリード投資家を務め、立命館ソーシャルインパクトファンド、mint、MTG Venturesが参加した。これにより累計調達額は4.7億円となった。
Synfluxは2019年に設立。AIや3Dシミュレーション、アルゴリズミックデザインを活用し、衣服の製造過程で発生する素材廃棄(テキスタイルロス)を最小化する独自技術「Algorithmic Couture」を開発している。具体的には、衣服の3Dデータから廃棄を抑えた2D型紙データを自動生成するシステムを提供している。2020年にはH&M財団グローバルチェンジアワード、2023年には毎日ファッション大賞新人賞などを受賞し、国内外のブランドへの導入事例も増加している。
代表取締役CEOの川崎和也氏は、デザインリサーチとファッションデザインの実践的研究を専門とし、複数の受賞歴を持つ。経済産業省の研究会委員も務める。共同創業者でCOOの佐野虎太郎氏は、アルゴリズミックデザインの研究開発経験を背景に同社の技術開発を主導してきた。両氏は創業以来、事業と技術の両面から成長を牽引している。
ファッション業界では大量生産・大量廃棄による環境負荷が長年の課題となっており、同産業の二酸化炭素排出量が全体の約10%に及ぶと指摘している。サプライチェーンの最適化や廃棄削減は、今や業界の重要課題となっている。また、EUではサステナビリティ規格やサプライチェーン情報開示義務(デジタル製品パスポート制度など)の議論が本格化しており、日本のアパレル企業も国際市場での対応が求められている。
こうした業界動向を背景に、Synfluxのようなデジタル設計支援型スタートアップの存在感が高まっている。国内では既存ブランドや素材メーカーとの協業も進み、従来手作業中心だったパターン設計や裁断工程にAIやシミュレーション技術を導入することで、テキスタイル廃棄を5%程度まで削減できる例が報告されている。こうした技術は、素材調達から製品化までのプロセス効率化や標準化にも波及し、競争力強化の要素として評価が高まっている。
今回の資金調達は、協業体制の拡充やサプライチェーン上流への技術導入拡大、効率的な生産体制の構築支援を加速する狙いがある。調達資金は研究開発やエンジニアの採用、デジタル設計支援ツールの機能強化、企業ごとのカスタマイズ対応などに充てられる予定だ。さらに、グローバル市場での社会実装やサプライチェーン全体のデジタル化、環境負荷低減の推進にも取り組むとしている。
ファッション産業のサステナビリティ対応は今後も厳格化が進む見通しであり、設計・生産支援テクノロジーの導入は業界全体の共通課題となっている。経済産業省やFashion for Goodなどが発表する市場レポートでも、大手・新興各社による持続可能素材の採用や、業界横断的な次世代生産技術の実用化が加速している。一方で、実装コストや既存工程との統合、国際基準への適合といった課題も残る。
Synfluxは今後、調達資金を活用し海外展開や新たな研究開発を進める方針である。アパレル業界が直面する「デザイン性と合理性」「環境負荷低減と経済性」の両立という課題に対し、同社のデジタル基盤や有力パートナーとの連携がどのように貢献しうるかが注目される。