“水回り”を再構築するDXスタートアップ5選

“水回り”を再構築するDXスタートアップ5選

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水の流れを見える化し、無駄を削ぎ落とす──水回りインフラのDXが始まる

都市の建物や地域インフラにおいて「水」は既に当たり前のように使われているが、それを支える設備・運用には、老朽化や人的負荷、見えにくい損失といった構造的な課題が横たわっている。たとえば、上下水道の配管網の老朽化による漏水、検針員による巡回作業の負担、浄化設備の運転管理における非効率なフローなどは、コスト・環境・サービス品質の観点から無視できない問題だ。

「水回りDX」は単なるデジタル化ではなく、持続可能な水循環をどう設計するかという社会課題解決型の動きとして注目されている。衛星データやドローン・AIを活用して配管の劣化を予測する技術、IoTメーターや自動検針システムによるリアルタイム監視、浄化施設や下水処理場における運転データを用いた最適化支援など、従来の“設備を手で管理する”モデルを“データ・モデルで管理・制御する”モデルへと転換しつつある。 

この転換の最前線に立つのがスタートアップだ。配管・メーター・設備運用の細分化領域に技術を持ち込み、見えなかった損失を可視化・予防してコストを削減。少量多拠点型インフラにも適用できる軽量ソリューションなど、新たな選択肢が広がっている。

本記事では、水回りインフラを“修理・維持”から“最適化・再設計”へと転換しようとするスタートアップの取り組みに迫る。

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スタートアップ5選

WOTA株式会社

企業HP:https://wota.co.jp/

水インフラの革新を目指す環境テック企業。クラウド型IoT給水ユニット「WOTA BOX」や手洗いスタンド「WOSH」により、災害時・キャンプ・建設現場・オフィスなどあらゆる場で水を止めずに使える仕組みを構築。排水の98%以上を再生して循環利用を可能にすることで、いつでもどこでも、安全・安心な水を利用できる。水質検査・消毒・遠隔監視を一元化し、物理的・社会的にアクセスしにくい場所での水提供を可能にする。

2025年11月には、愛媛県と「水循環システムの自治体間広域互助プラットフォーム」構築に向けた協定を締結した。

株式会社コアシステムジャパン

企業HP:https://core-system.jp/

独自の光ファイバ技術「i-Line」を活用し、社会インフラや河川・海洋・防災などの分野で、過酷環境下でも機能するIoTセンシングシステムを提供。光ファイバーによるセンシングは、長距離・広範囲の遠隔監視に優れ、電気を使用しないため引火リスクや電磁波の影響がないという特長を持つ。これにより、従来の電気式センサーでは難しかった環境での安全かつ高精度なモニタリングを実現している。

株式会社天地人

企業HP:http://tenchijin.co.jp/

宇宙からの視点で、企業の課題や、地球規模の環境問題・社会課題を解決するため、さまざまな宇宙ビッグデータを活かしたサービスを提供している。「天地人コンパス 宇宙水道局」は、人工衛星からの観測データと自社AIを活用して、老朽化した水道管の「近い将来の漏水リスク」と「管路停止時の影響度」を5段階で可視化。地上から把握しづらい地下インフラを、衛星×AIの力で点検対象を絞り込み、自治体の点検・修繕コストや人手の負担を大幅に軽減する設計。実際に、ある自治体では「10 kmあたり0.7箇所」から「4.2箇所」へと発見効率を6倍に引き上げ、調査コストを79 %削減した実績がある。

2025年9月には、シリーズBにて、Frontier Innovations、インクルージョン・ジャパンをリード投資家として、既存株主、新規投資家を引受先とする第三者割当増資により約7億円の資金調達を実施した。

株式会社フレンドマイクローブ

企業HP:https://friendmicrobe.co.jp/

油脂を含む排水を対象とした微生物処理技術による新しい排水処理方法を提供する環境テック企業。名古屋大学発の高性能油脂分解微生物群を用い、工場や施設において24時間以内に90%以上の油脂分解を可能とするシステムを展開。従来の物理・化学処理から省エネルギー・低コストな連続処理へ転換し、廃水処理工程のデジタル化・効率化とともに水インフラの高度化と環境負荷削減に貢献している。

2025年4月には、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「GX分野のディープテック・スタートアップに対する実用化研究開発・量産化実証支援事業)」の第3回公募において、STSフェーズ(実用化研究開発・前期)に採択された。

Fracta Japan株式会社

企業HP:https://fracta-jp.com/

AIと機械学習を活用し、地下埋設配管の劣化予測ソフトウェアを提供。主力製品には、漏水リスクをヒートマップで可視化するAI管路劣化診断「AIEyes(アイズ)」や、2050年までの給水人口を地図上で可視化する「±Move(ムーヴ)」がある。これらを活用することで、最適な更新計画の策定が可能となり、最大で約40%のコスト削減が見込まれる。効率的なインフラ更新を通じ、持続可能な水道経営の実現を目指している。

2025年10月には、精緻かつ説明性の高いアセットマネジメント計画策定に活用可能な「更新基準年数シミュレーション」と、漏水調査を最適化する「漏水調査マップ」を新たに実装した。

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