株式会社CORE

働く女性のキャリア情報が集まるコミュニティSNS「CORE」を運営する株式会社COREが、East Venturesをリードとしたシード調達を実施した。ANOBAKA、コロプラネクスト、エンジェル投資家2名も参加している。
同社は2022年の創業以来、20代後半から30代前半の働く女性をターゲットに、オンラインとオフラインを融合させたキャリア支援を展開している。コミュニティSNSに加え、2025年9月には女性視点での企業口コミ機能もリリースした。今回の調達により、企業口コミ機能の強化やデータ基盤の構築を加速させる方針だ。
代表取締役の尾崎莉緒氏に、事業の現状と今後の展望を聞いた。
「誰から情報を得るか」が女性のキャリアを左右する
――御社の取り組む事業について教えてください。
女性のキャリア情報を集めたナレッジプラットフォーム「CORE」を運営しています。
中核となるのは、オンラインのコミュニティSNSです。女性たちが不安や悩みを共有でき、他のユーザーからのコメントによって課題解決や一歩踏み出すきっかけを得られる場になっています。

9月には、女性視点で見る企業の口コミ機能もリリースしました。社内における女性の割合、ダイバーシティの意識、ワークライフバランスなど、女性特有の視点から企業を評価できる仕組みです。
オフラインでも、毎週さまざまなテーマでイベントを開催しています。起業や独立、産休・育休、不妊治療などのライフイベントに加え、AI関連など、幅広いテーマを扱っています。
また、オンラインメディアも運営しており、ロールモデルのインタビュー記事を配信中です。全国にアンバサダーもおり、キャリアの一歩先を行く方々に参画いただいています。
――どのような社会課題と向き合っていますか。
女性活躍が進んでいるような風潮はありますが、まだまだ女性が活躍するための情報は不足しています。特に重要なのは「どこから情報を得るか」という点です。
友人や信頼できる人からの紹介を受けた女性は、転職の成果が大きく変わります。年収がアップしたり、勤続年数が伸びたり、やりがいが向上したり。女性の労働人口が増えている今だからこそ、信頼できるプラットフォームが必要だと考えています。
海外にはこういったプラットフォームがたくさんありますが、日本には本当になくて、それを作っていきたいというのが一番やりたいことです。
――主な対象ユーザーについても教えてください。
20代後半から30代前半の、出産前の働く女性がターゲットです。結婚や出産をどう考えるか、キャリアとの両立をどうするか、そういった岐路に立つ方を想定しています。
ユーザー属性としては、スタートアップで働く女性が多いですね。仕事は好きだけれど、この働き方でこのままいけるんだろうかと悩んでいる方が中心です。職種は営業、人事、広報といった方が多い。
彼女たちが直面している課題は、悩みが多様化しすぎているという点です。仕事を取っていくのか、ライフイベントを優先するのか、両立を頑張るのか——そうした判断材料となる情報が足りていないというのが課題だと分析しています。
「心理的安全性」と「自己開示」がコミュニティの強み
――COREが提供する価値や、他社との差別化ポイントについて教えてください。
大きく2つあると考えています。1つは「つながり」です。自分と近しい思考性や状況の女性とつながって話せる、心理的安全性の高いコミュニティを維持できている点ですね。
もう1つは「自己開示ができる」という点です。一般的なオフラインイベントだと男性が8〜9割で、女性が少なすぎる。そうなると自己開示もできないし、情報を取るといってもそこまで親密になれないんです。自分のことを安心して話せる場が、女性にはまだまだ足りていないと感じています。

COREの強みは、オフラインとオンラインを循環させている点です。オフラインからの流入が今はほとんどで、実際に場に来てどんな人がユーザーなのかを感じていただける。だからオンラインも安心して使っていただけるんです。
オフラインの熱量の高さも独自性だと考えています。他社のイベントは単発で終わったり頻度が高くなかったりすることが多いですが、私たちは積極的にいろんな切り口で継続的に開催しています。そのためリピーターが友達を連れてきてくれたり、リファラルで広まったりしている。継続率は70%を超え、イベント再訪率は35%と平均の3倍以上です。
――直近ではリブランディングもされていますね。
はい。以前は1対1のマッチングサービスとして運営していたのですが、どうしても「相談する人」と「相談される人」という構造になってしまって。相談される側のメリットが出せなかったんです。
そこで、誰もが自由に投稿でき、誰もが回答できるコミュニティSNSの形に変えました。今は「不特定多数から情報を得たい」「自分も発信したい」という方が積極的に使ってくださっています。
機能面でも工夫していて、コメント以外にSlackのようなスタンプ機能を用意しました。「わかるわかる」「共感できる」「私も」といった、ライトな反応ができるんです。気軽に共感を示せるので、投稿のハードルが下がります。
一方でコメントの熱量は高くて、「わかる」だけでなく、自分の体験を交えたり、質問者にどう寄り添うかを考えたりしながら回答してくださる方が多いんです。COREに投稿したら必ずコメントがつくし、質が高く有益な情報が取れるというのが大きな特徴ですね。
人材紹介とイベントスポンサーで収益化
――現在の収益モデルを教えてください。
人材紹介とイベントスポンサーの2つでマネタイズしています。人材紹介は企業マッチングの形で、年収の35%をいただく仕組みです。
イベントスポンサーについては、毎月採用イベントを開催していて、企業に協賛いただいています。飲食提供や会場提供をいただきつつ、マッチングが決まればフィーをいただく。

また、大規模なカンファレンス系のイベントも企画していて、そこには30万円から100万円くらいのレンジでスポンサーがついてきてくださっています。
――人材紹介サービスを開始されたのですね。
はい。今年8月に「CORE Works」という女性限定の人材紹介サービスを始めました。一般的な人材紹介だとキャリアアドバイザーが伴走して決めていくスタイルが多いと思うのですが、COREの場合はコミュニティがあるのが強みです。
転職活動中の悩みをコミュニティで共有できたり、企業の口コミ機能からリアルな女性の声が取れたりする。キャリアアドバイザーが寄り添いつつも、コミュニティ全体でその人の転職をサポートできるんです。
イベントで企業と直接接点を持っていただく場も大事にしています。単純に紹介していくだけではなく、本当に私たちがいいと思っている企業にのみご紹介していく。無理に押し込むようなことはしたくないんです。
企業側も変化してきていますね。担当者の方がCOREに共感してくださったり、女性比率を増やさないといけないという危機感を持っている会社が増えています。ある会社では今期セールスを100人以上採用する計画で、そのうち3割を女性にしたいという明確な目標を持っているところもあって。女性の活躍や比率を意識している企業は確実に増えていると感じます。
産休復帰者の退職を目の当たりにして創業を決意
――創業のきっかけについて教えてください。
一社目からスタートアップにいて、社長直下で人事をやっていました。社長が熱量を持って人生をかけて事業をやっている姿が刺激的で、自分もいつか起業してみたいと思ったのが最初のきっかけです。
転機となったのは、人事部長の方が会社で初めて産休に入った時のことでした。仕事が好きな方だったので3ヶ月で戻ってきたんですが、スタートアップのタスクの膨大さやスピード感についていけなくなり、退職に至ってしまって。
その時に初めて、女性のキャリアやライフイベントが壁になる瞬間があるんだと目の当たりにしました。最初は同じ課題を解決している会社に転職しようと思ったのですが、そういうサービスが日本になかった。それなら自分で作ろうと思ったんです。
――これまでどんな困難がありましたか。
2022年の創業当時は、今ほど女性のキャリア課題への意識が高くなかったんです。競合もなかったので流行るんじゃないかと思っていたら、すごく無風で。啓蒙活動から始めないといけないと気づきました。
最初のユーザーは自分のSNSのフォロワーにDMを送って使ってもらったり、他のイベントに足を運んで登壇者に声をかけたり。本当に地道なことをやっていましたね。
日本で女性のキャリア支援が難しいのは、海外と環境が大きく違うからだと思っています。海外はロールモデルがいて実力評価が重視されている一方、日本はまだコミュニケーション文化や年功評価が強い。そういう環境に食い込んでいくのは無理だと思って離脱する女性も多いし、ほどほどでいいやと考える方も少なくない。それが現実だと思います。
ただ、最近では風向きも変わってきました。女性のキャリア課題が大事だという認識が広がって、サービスの後押しになっています。COREのビジョンに共感して応援してくれる、レイヤーの高い女性たちも増えてきました。
イベントに5回目の参加という方も増えていて、「COREのつながりで友達ができました」といった声をいただくんです。転職支援はマネタイズポイントですが、心理的安全性を支える要素を生み出せているのは予期せぬ良い結果でした。
East Venturesをリードに資金調達を実施
――今回の資金調達について教えてください。
今回はEast Venturesにリードをお願いしました。きっかけは、担当の大柴さんが以前COREのイベントに来てくださったことなんです。大柴さんは女性起業家を多く支援されていて、その担当先の方がCOREのイベントに登壇してくれる際に見に来てくださって。そこから女性のキャリア課題の重要性などをディスカッションさせていただく機会があり、今回リードをお願いしました。
ANOBAKAには追加出資をいただいています。この1年でCOREというサービスの女性キャリア領域が追い風になっているという点を評価いただきました。コロプラネクストは、9月にリリースした女性の企業口コミ機能を評価してくださいました。OpenWorkやJobQといった口コミサービスはありますが、女性向けにリアルな生の声が取れる機能はなかったので、ユーザーにとって有益だしユーザーも集まりやすいのではないかと評価いただいたんです。

今回の調達を通して感じたのは、VCはまだまだ男性が多いので、女性のキャリア課題をスッと理解していただける方が本当に少ないということでした。課題感の説明がなかなか刺さらなかったんです。
とはいえ、私たちはこういった課題を解決する会社なので、男性に向けても啓蒙活動をしていかないといけません。次回ラウンドに向けては、「これが課題である」「こんなことに悩んでいて、これを解決すると経済的にもプラスになる」ということを男性にも発信していく必要があると感じています。
――調達資金の使途について教えてください。
大きく3つあります。1つ目は、ノーコードツールからの脱却ですね。フルスクラッチ開発に移行して、機能を拡充しながらデータベースを整備し、データを取得しやすい設計にしていきます。
2つ目は、マーケティングチャネルの検証です。既存チャネルを動かしつつ、新規チャネルも検証していきたいと考えています。メディアの記事数やイベント開催頻度を増やすことで新規ユーザー獲得が増えるのか、動画コンテンツなど新しいチャネルの開拓ができるのかを見ていきます。
3つ目は、データ基盤の構築です。将来のDEI SaaSへの展開を見据えて、データの取り方や基盤を構築し、レポート化までできるような形にしていきたいですね。
3年後の目標は「IVS級のカンファレンス開催」
――今後のプロダクト開発や新しいサービスの展開について教えてください。
まず、リリースしたばかりの企業の口コミ機能をもっと快適に使えるようにしていきたいですね。投稿もスムーズに出せるように改善していきます。
それと並行して、女性のキャリアデータをどんどん蓄積していって、そのデータを活用した新しい機能やサービスを作っていくことを目指しています。
新しいサービスとしては、創業当初から女性管理職限定の会員制クラブを構想しているんです。まずは女性リーダーを増やしていく、引き上げていくことが必要なので、最終的にはそういった女性リーダーたちの会員制コミュニティを作るというのが目標ですね。
――中長期的には、どんな目標を掲げていますか。
やはり女性だけのカンファレンスをIVS級の規模でやってみたいんです。女性のキャリアにおいてムーブメントを起こすことを、COREがリードしていきたいと思っています。
既存サービスもありますが、スタートアップで本気で気合いを入れてやっているところはまだまだ少ないと感じていて。女性のキャリアといえばCORE、女性採用といえばCOREというブランディングを確立して、実績で示していきたいです。
あと、スタートアップだけに広げていきたいわけではないんです。スタートアップも大企業も両取りでやっていく必要があると考えていて、人数規模でいくと大企業の案件や求人も積極的に取りに行きたい。この1年で本格的に動いていく予定です。
――COREが普及した先に、どんな社会を実現したいですか。
本当にフラットな社会になるといいなと思っています。今は男性vs女性みたいな対立構造があると感じていて、男性も女性も性差なく共存できる社会になってほしい。
とはいえ、真のフラットというのは難しいですよね。だからまずは、女性がまだ社会でマイノリティであることを認識できる場を作りたい。声を上げられる場を作る、心理的安全性が高いコミュニティを作っていく。それが直近の目標です。











