株式会社GramEye

AI搭載グラム染色自動化医療機器の開発を手がける株式会社GramEyeは、Beyond Next Ventures、サムライインキュベート、NESを引受先とし、シリーズBラウンドで総額5.7億円の資金調達を実施した。また、NEDO PCA事業採択による4.2億円の助成金をはじめとする複数の助成金獲得を含め、累計調達額は16.5億円に達した。
GramEyeは、感染症診断に用いられるグラム染色の分析工程を自動化するAI・ロボティクス搭載の医療機器を開発している。2025年1月より自動グラム染色分析装置「Mycrium®」の販売を開始し、臨床現場での導入が進む。Mycrium®は、従来検査技師が手作業で行っていたグラム染色工程と顕微鏡画像の判定・報告までを自動化し、AIによる高精度な画像解析を実現する。同装置はAMED(国立研究開発法人日本医療研究開発機構)の実証研究のもと、長崎大学病院や大阪大学医学部附属病院など8施設で実証が進行中である。
代表取締役CEOは平岡悠氏。大阪大学医学部を卒業した医師で、在学中は病院コンサル企業で勤務し、エンジニアとして医療系データ解析、Webサービス開発、モバイルアプリ開発に携わった。阪大医学部Python会では幹部としてプログラミング教育活動を主導。2020年5月にGramEyeを創業し、現在はデータ解析と人工知能の開発を担当している。
日本の医療分野ではAI技術の利活用が急速に進展している。H&Iグローバルリサーチによれば、日本の医療AI市場は2024年時点で約14.2億米ドル、2033年には約148億米ドルに達すると予測され、今後も高い成長率が続く見通しである。なかでも、臨床検査や画像診断などの分野でAIとロボティクスによる自動化が進みつつあり、検査標準化や業務効率化への貢献が注目されている。従来のグラム染色などの微生物検査は、熟練技術者不足や迅速化の必要性などの課題が存在してきたが、AIを用いた自動化技術の導入により、判定の標準化とより迅速な診断支援の実現が期待されている。
また、抗菌薬耐性菌の増加が世界的な公衆衛生課題となるなか、薬剤耐性菌に感染すると、死亡率は2倍以上に増加し、治療コストは3〜4倍に膨らみ、入院期間も延びることが報告されている。同社は、AIとロボティクスを活用した感染症の検査・診断・治療支援技術を開発し、抗菌薬の適正使用や迅速診断、専門家の知見補完を実現することで、薬剤耐性菌による死亡者の削減を目指している。こうした背景もあり、最適な抗菌薬選択のためのAI活用にも注目が集まっている。
今回調達した資金は、既存ソリューションのAIおよびハードウェアの強化、米国FDA承認を含む海外市場への展開促進、新たな臨床意思決定支援システム(CDSS)の開発などに充当する計画だ。今後はユーザーからのフィードバックを元に機能改善を継続しつつ、グローバル展開や新規事業開発にも注力する方針である。また、薬剤耐性菌対策への取り組みを強化して公衆衛生への貢献を目指し、抗菌薬の適正使用を支援していくとしている。









