東北大学発スタートアップbionto、6000万円調達──非侵襲ドラッグデリバリーに挑む

東北大学発スタートアップbionto、6000万円調達──非侵襲ドラッグデリバリーに挑む

xfacebooklinkedInnoteline

東北大学発スタートアップ、株式会社bionto(本社:仙台市、代表取締役:妹尾浩充)は、PARTNERS FUNDを引受先とするJ‑KISS型新株予約権によるシード調達、および日本政策金融公庫・七十七銀行による創業融資を組み合わせ、総額6000万円の資金調達を実施したと発表した。

同社は、生体イオントロニクス技術を基盤として、非侵襲的ドラッグデリバリーデバイスおよび高感度センシング機構の開発を進めている。人体の主成分である体液中のイオン挙動を制御・応答させるアプローチを通じ、これまで困難とされてきた皮膚透過性・送達効率・安全性などを改善することを狙う。

技術の中核となるのが、「高速浸透ニードルデバイス」である。これは、電気浸透流(EOF/Electro-osmotic Flow)を発生させることで、皮内に一方向への水の流れを生成し、多量かつ高速の薬剤投与を可能とする。従来の注射や経口投与に代わる手法として、医薬の局所・全身投与に加え、スキンケアや頭皮ケアなどヘルス&ビューティ、ウェルネス分野での応用も視野に入れている。

さらにこのデバイスは、薬剤の投与のみならず、皮下の組織液(間質液)の採取も可能にする。これにより、生体信号を高感度で検出する新たなセンシング技術の開発も並行して進められており、今後の展開が注目される。

創業者の妹尾氏は、映画業界、ITスタートアップを経て異分野起業を志し、東北大学EIR制度を通じて技術シーズと出会った経緯を持つ。最高技術責任者の西澤教授は、生体材料・イオン工学分野で長年の研究を持ち、技術的裏付けの源泉を担う。

医療・ヘルスケア業界は、2023年度の概算医療費は過去最高の47兆円を突破し、少子高齢化・医療費増大・在宅医療ニーズの拡大といった課題を背景に、セルフケア技術や在宅デバイス活用の期待が高まっている。ただし、医療領域での実証・安全性・承認取得などの障壁は依然として高く、技術力と事業戦略の両立が試される分野である。

今回調達した資金は、プロダクト開発、事業開発、エンジニア等の人材採用、業界アライアンス構築などに活用される予定である。

この調達をきっかけに、同社はホームヘルスケア市場を視野に入れたプロトタイプ実証や産学連携プロジェクトを本格化させる見込みだ。今後、規制対応や臨床応用に至るロードマップの示し方、コスト制御と量産化戦略の策定、次ラウンドの資金確保などが事業成長のカギとなろう。

画像はbionto HPより

新着記事

STARTUP NEWSLETTER

スタートアップの資金調達情報を漏れなくキャッチアップしたい方へ1週間分の資金調達情報を毎週お届けします

※登録することでプライバシーポリシーに同意したものとします

※配信はいつでも停止できます

ケップルグループの事業