成長見込む世界のペット市場、「ペットの家族化」がカギに

成長見込む世界のペット市場、「ペットの家族化」がカギに

written by

谷口 毅

本記事では、株式会社ケップルのアナリストが作成したレポート「【独自調査】ペット関連ビジネスを推進するスタートアップ147社」の内容を基に、ペット関連市場の動向を解説する。

なお、本記事では、当レポートで解説されている16種類のカテゴリーのうち、ペットフード領域、獣医IT支援領域のカテゴリーを抜粋している。

KEPPLE REPORTをダウンロードすることで以下の情報をご覧いただけます。

アナリストによるペット関連スタートアップの各事業分野の詳細な解説
国内外147社を16カテゴリーに分類したカオスマップ
ペット関連スタートアップ147社の詳細な情報


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目次

  1. ペット関連市場の動向
  2. 世界のペット市場
  3. 日本のペット市場
  4. ペットフード領域のスタートアップ
  5. 獣医IT支援領域のスタートアップ
  6. おわりに

ペット関連市場の動向

ペットを単なる愛玩動物ではなく家族の一員として一緒に暮らす「ペットの家族化」が世界中で進んでおり、ペットのための手厚いサービスが続々と登場している。

ペットビジネスが注目を集めるきっかけとなったのは新型コロナウイルスの流行である。パンデミックにより在宅時間が増加し、自粛生活の中で癒やしを求めて新たにペットを飼育する人々が増えたことで、ペットブームが盛り上がりつつある。

例えば、英国では2020年から2022年にかけて、犬は約900万頭から44%増、猫は750万頭から60%増と急増した※1。犬や猫などのペットと触れ合うことは心身の健康に役立つとも言われており、米国心臓学会(AHA)の調査によると、ペットを飼っている人の95%は、ペットはストレス解消のために役立っていると感じているとのデータもある。また、米国神経学会(AAN)によると、犬や猫などのペットを5年以上飼うことは、高齢者の認知機能の低下を遅らせることにつながるとされている※2

ペットへの関心が高まる中、ペットフードやペット用品といった品目に加えて、ペットの快適で健康的な生活を維持するための単価の高いサービスが登場しているのが近年の特徴だ。例として、GPSでペットの居場所を検知するウェアラブルデバイスなどのペットテック関連サービスがある。

また、ペット市場の成長期待に伴い、異業種の企業がペット業界に商機を見出して参入するケースも見られる。例えば、米食品大手のGeneral Millsは高級ペットフードを販売するBlue Buffaloや、Tyson Foodsのペット用おやつ事業を行う部門を買収し、ペット事業へ参入している。国内ではロート製薬が2022年にペットショップ運営企業のAHBと業務提携を行い、ペット向けの検査、治療などの領域に参入している。また、Amazonは2023年に日本でペット保険代理店事業に参入することを発表した。

世界のペット市場

世界のペット市場規模は、2023年で3200億ドルであり、2030年までに5000 億ドルにまで拡大するとの予想がある※3。2019年時点での国別ペットケア製品への一人当たりの年間支出ランキングでは、1位米国、2位英国、3位フランス、4位スウェーデン、5位ドイツとなっている※4

欧米ではペットへの支出額が大きい傾向にあり、ペットビジネスを専門とする企業が数多く誕生している。背景には、欧米のZ世代やミレニアル世代を中心に発生している、ペットを「Kids(子ども)」、飼い主を「Pet Parents(ペットの親)」と表現し、犬や猫を家族の一員と考えるトレンドが影響している。2022年の米国世論調査によると、Z世代の若者の70%は、子供を持つよりもペットを飼うことを好むとの結果もある※5。ペット関連企業は、人間と同等の質の高いサービスの開発に注力し、ペットオーナーへのアプローチを強化している。

日本のペット市場

国内のペット市場規模は、2021年度で約1.7兆円、2024年には1.8兆円に達すると予想されている※6。経済産業省によると、ペットの生体販売・ペット用品はコロナ禍においても飲食料品小売業などと同様に販売額が増加した業種の一つとの調査結果もあり※7、不況に強い産業とみられることもある。リーマンショック直後においても、国内の飼育頭数が鈍化した一方で※8、ペット用品や医療に関する支出は増加傾向が続いている※9。不況下においては、新規ペットの買い控えが起こる中、既に飼っているペットに対する支出は減りにくいという特徴がペット市場にあるといえるだろう。

ペットビジネスを専門とする国内の上場企業は少なく、ペット保険のアニコムホールディングスや、ペット向けの高度医療を専門にする日本動物高度医療センターなど数社にとどまる。ペット市場は参入が容易な分野が多く、他の業界のプレイヤーとの競争が激化する傾向にあり、ペットビジネスに特化したIPOが難しかったとみられる。例えば、国内のペットフード市場のシェアTop3は、食品大手のMars JapanやNestlé Japanといった外資系企業や衛生用品メーカーのユニ・チャームによって占められている※10。ただ、「ペットの家族化」が進む中で、ペットテックなどの先端技術が求められるようになってきており、国内スタートアップが増えつつある。

本記事ではKEPPLE REPORTで触れる16カテゴリーのうち、ペットフード、獣医IT支援領域の事業について紹介する。

ペットフード領域のスタートアップ

ペットビジネスにおいて市場規模の大きい分野の一つであり、売上高の世界Top3は、Mars、Nestle、Colgate-Palmoliveである※11。これらの企業のペットフードは比較的安価で小売店などで手に入れやすいため、広く普及している。しかし、近年はペットの健康志向の高まりにより高品質で単価の高い商品に対する需要が高くなっており、価格やブランドの認知度よりも、使われている肉の種類や、天然・オーガニックであることの方が重視されているという※11。その結果、既存のペットフードの概念が変化し、ペットフードのヒューマングレード化(人間も食べられる材料・衛生基準で作るペットフード)が進んでいる。

また、ペットの品種や好みに応じてフードをカスタマイズするサービスなど、フードの個別化も進んでいる。キャットフードに特化した米国のSmallsやドッグフードに特化したPetPlateなどが代表的なスタートアップとして存在する。また、英国のButternut Boxは2023年に2.8億ポンドを調達し、製造施設の拡大を発表した。同社は2016年の設立以来、新鮮な食材を使用したドッグフードを配達するサービスを英国、アイルランド、オランダなどで展開し、ヨーロッパ内で販売国を拡大し続けている。ヒューマングレードのペットフード領域ではヨーロッパ最大のブランドとされている※12

また、国内にも有望なスタートアップがいくつかみられる。犬猫生活の評価額は約34億円(KEPPLE DB推定)、PETOKOTOの評価額は約30億円(KEPPLE DB推定)となっており、今回カオスマップに掲載した国内スタートアップの中でも上位の評価額となっている。犬猫生活は国産素材を使用した無添加のペットフードを販売するだけでなく、最近では犬・猫の予防医療に特化した往診サービスにも進出するなど積極的に事業拡大に取り組んでいる。

また、PETOKOTOが販売する国産食材を使用したペットフードのサブスクサービス「ペトコトフーズ」の継続率は93%に達し、累計会員数は10万人を超える※13。同社のペットフードは、獣医師やペット栄養管理士が監修していることを大きな特徴としている。また、ペット専門メディア「PETOKOTO MEDIA」も運営しており、メディアを入口に自社ペットフード購入者の獲得に成功している。ペットの家族化が進む中で素材にこだわったペットフードを開発するこれらの国内スタートアップが成長する可能性は高いだろう。

同じく新鮮な食材を使ったペットフードを販売するのがバイオフィリアだ。KEPPLEでは、2024年1月の資金調達に際して同社代表の岩橋 洸太氏に話を聞いた。

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獣医IT支援領域のスタートアップ

このカテゴリーには、動物病院向け業務ソフトウェアの開発や、獣医師向けオンライン学習、獣医師向け転職サイトの運営などの獣医向けのIT支援に取り組む企業を国内6社、海外7社分類している。

動物病院では受付の電話対応の時間や待ち時間が長いといった課題があり、獣医師・スタッフの過重労働や患者の満足度の低下につながっている。そこで予約や決済、獣医師のスケジュール管理など動物病院での業務をデジタル化し、業務を効率化するプラットフォームを開発するスタートアップが続々と登場している。動物病院内でのワークフローを管理するソフトウェアを開発する米国のOtto、処方箋管理や支払い処理を行うソフトウェアを開発するCovetrusなどが挙げられる。

また国内では、獣医師や動物看護師向け転職サイトを運営するTYL、獣医師同士・獣医師と製薬企業との情報交換を目的としたコミュニティサイト運営や獣医師向け学習コンテンツの動画配信サービスを行うZpeerなどがある。

ミニイクは、動物病院向けに予約受付や売上管理など、様々な業務を行うことができるクラウド型電子カルテを開発している。

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おわりに

ペット市場は拡大傾向であり、投資家にとって魅力的な市場になりうる。コロナによる巣ごもりを経て、飼育頭数の増加がみられる。また、ペットの家族化という社会的な変化を背景に、ペット1匹にかける費用は増加するものとみられる。単価を引き上げる要因として、健康維持に高い注目が集まる。具体的には、医薬品、ペット保険、高品質なペットフードなどが恩恵を受けうる。

これまで、ペット市場は、異業種の大手企業が主要プレイヤーであるケースが多く、国内においてペット特化企業の上場例は少ない。ただ、今後は上場が増える可能性が高い。背景として、IoTデバイスなどのペットテック分野の拡大に伴い、スタートアップに参入する余地が生まれていることが挙げられる。

また、ペットのオンライン診察など、ペットテックの多くは新しい領域ではあるが、ペットのオンライン診察などは、人間のオンライン診察の対象範囲が広がっているように、法整備が追い風になると考える。

一方、動物愛護などの観点から生体販売を規制する地域が出始めるなど、ペット飼育に対する考え方の変化には留意する必要があるだろう。

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新卒で資産運用会社のFirst Sentier Investorsに入社し、アナリストとしてアジア・日本の株式の分析を行う。その後、リクルートでプロダクトマネージャーを経験。2022年にケップル入社。現在はデータベース部門を管掌、および海外事業部門を兼務。スタートアップデータ拡充のための企画、分析に加え、KEPPLEメディアやKEPPLE DBへの独自コンテンツの企画、発信を行う。

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  • #ペット
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