株式会社エイトノット

運航・保守・管理の現場から、巨大産業の実装を進める
海運や造船は、国際物流やエネルギー供給、経済安全保障を支える基幹産業であり、日本にとっても長年にわたり重要な役割を担ってきた。一方で、船舶の大型化・高度化や国際的な環境規制の強化、人手不足といった構造的な課題が、現場に大きな変化を迫っている。
近年、脱炭素に向けた動きや燃費性能の高度化、安全運航への要求を背景に、船舶の設計・建造・運航・保守といった各プロセスの中でも、特に運航や管理、業務オペレーションの領域からデジタル技術の活用が進みつつある。設計段階でのシミュレーション高度化、航行データのリアルタイム解析、遠隔監視や予兆保全など、従来は属人的だった工程をデータで補完・最適化しようとする動きが広がっている。
さらに近年では、船舶そのものの構造や推進方式を見直し、電動化や新たなエネルギー技術によって次世代の船を構想する動きも現れ始めている。
一方で、造船・海事分野は設備投資規模が大きく、安全性や信頼性が強く求められるため、新技術の導入には時間がかかりやすい領域でもある。既存の産業構造や現場オペレーションとどう接続するかが、技術活用の成否を分ける重要なポイントとなっている。
こうした状況の中で、データ解析、シミュレーション、運航支援、保守・点検の高度化などに特化し、造船・海運の現場に変化をもたらそうとするスタートアップの動きが見られるようになってきた。巨大産業の周辺から、少しずつ実装を積み上げていくアプローチだ。
本記事では、造船・海事分野の構造的課題に向き合い、テクノロジーによって現場や産業のあり方をアップデートしようとするスタートアップに焦点を当てる。

スタートアップ5選
株式会社エイトノット
企業HP:https://8kt.jp/
小型船舶向けの自律航行システムを開発・販売している。小型船舶向けの自律航行プラットフォーム「エイトノット AI キャプテン」を開発する企業。目的地を選ぶだけでAIが最適ルートを作り、センサーで周囲360度の障害物や他船を検知して回避しながら安全な航行を支援する。出航・着岸のような慎重な操船も自動化の対象にし、操船スキルの差や人手不足による運航リスクを下げる設計。技術面では、位置・姿勢・行動の推定、物体認識、航路生成、船体制御、組み込み、クラウドによるリアルタイム可視化までを一気通貫で扱う。
2025年10月には、東京都主催のピッチイベント「UPGRADE with TOKYO 第50回」で優勝を獲得した。
株式会社ライトハウス
企業HP:http://lighthouse-frontier.tech/
漁師向け船団運営支援システム「ISANA」の開発を行っている企業。 「ISANA」では、魚群探知機、ソナーなどの画像情報を船団の中で共有できるほか、GPS の位置情報をベースとした自船や僚船の位置を表示し、操業中に通った航路も記録されている。各操業日の漁獲高やソナー・魚探の画像類、漁の情報がクラウド上に保存され、好きな時に見返すことができる。
Noahlogy株式会社
海事領域に特化してAI/DXのコンサルティングとサービス開発を行う企業。造船・舶用機器・海運(設計、調達、運航など)でベテランが持つノウハウをAIエージェントとして実装し、属人化した業務を標準化・共通化することで、コスト削減や組織横断のシナジー創出、事業継承の円滑化を狙う。表面的な実証実験(PoC)に留まらず、ヒアリングから実装、導入支援、研修まで一貫して行い、海事特有の法規制や商習慣も踏まえて業務プロセスの改善を支援する。
2025年12月には、広島県尾道市を拠点に、船舶の修繕・改造・検査を一貫して行う向島ドック株式会社と、内航海運が直面する課題解決と持続可能性の向上を目指し、船舶修繕業に特化したAI利用環境の構築に向けた協業を開始した。
株式会社MarineSL
海事産業のデジタル化を推進するスタートアップ企業。船舶航行情報を利用した、舶用工業メーカー向けの船舶の部品需要予測&営業支援システム「Si-Trax」の開発などを行う企業。 Si-Traxは、舶用工業メーカー向けに、同社開発のアルゴリズムをベースに船の機器・部品の稼働率や消耗具合を見える化することにより、導入メーカーのデータに基づいた意思決定や効率的な営業活動を支援するシステム。船に搭載するエンジンやポンプなどの機器を作る舶用機器メーカーは、船を運用している海運会社にアフターサービス(部品供給・修繕など)を提供している。一方で、実際に船に搭載されている機器の状態が不明な中で営業を行わなければならないため、人海戦術に頼らざるを得ないという現状がある。こういった非効率な営業活動が常態化しているという課題に着目し、同システムを開発した。
2025年8月には、特許庁より、Si-Traxに関連する特許(P772652)が承認された。
株式会社ザブーン
企業HP:https://zabooon.com/
海事産業向けのDXクラウド「MARITIME 7」を提供している。MARITIME 7は、船と陸の業務をひとつのプラットフォームでつなぎ、業界特有の課題解決に特化したクラウドサービスだ。船員労務、レポート、船員情報、購買、配線、文書、保守を一気通貫で管理でき、船舶管理の効率化を狙う。2025年12月時点で、同サービスの登録船員数は10,000人を突破している。
2026年には、「MARITIME 7」について、一般財団法人日本海事協会より、MLC(2006年海上の労働に関する条約)およびSTCW条約(船員の訓練、資格証明及び当直の基準に関する国際条約/2010年のマニラ改正を含む)に準拠している旨の認証を取得した。










