AI前提の起業が当たり前に、スタートアップ投資は次の局面へ──Gazelle Capital 石橋氏


スタートアップ経営株主にとって、創業株式の譲渡によるキャピタルゲインは、長年の努力とリスクテイクの結果である。しかし、2026年度税制改正により、手取りが減少し、創業のインセンティブが低下することが懸念されている。
2023年度税制改正で、いわゆる「ミニマムタックス」が創設された。高所得者に一定以上の税負担を求める制度で、株式譲渡益などで大きな所得を得た個人が対象になり得る。
2026年度税制改正で、ミニマムタックスの強化が決定し、2027年1月1日から適用される。主な強化内容は2点で、特別控除額が3.3億円から1.65億円に半減されるとともに、最低税率が22.5%から30%に引き上げられる。
スタートアップ投資文脈では、影響が大きいのは創業者・初期株主・エンジェル投資家、株式を持つ初期メンバーなどの個人株主。IPO、M&A、セカンダリー売却などで株式譲渡益の手取りが減る可能性がある。
一般社団法人 日本ベンチャーキャピタル協会(以下、「JVCA」)は、2026年5月1日に本件に関する政策提言を発表。「企業価値が大きく向上するほど創業者・初期株主等の手取りが圧縮される」ため、「企業価値を向上しようとするインセンティブを構造的に削ぐ」可能性があるとし、一定のスタートアップ株式譲渡益をミニマムタックス対象外にし、米国QSBS制度を参考とした再投資不要の非課税枠も設けるべきとしている。
また同協会は、今回の税制改正により、創業株式譲渡に際する税負担が、欧米やインド、中国等と比較し「突出して高くなる」とし、「起業家を巡る国際的な獲得競争において日本が明らかに不利な立場に陥る結果を招く」と警鐘を鳴らす。国税庁・財務省・各国税務当局公表資料をもとにJVCAが行ったシミュレーションでは、20億円の譲渡益を得た場合の税額が約6.5億円と、米カリフォルニア州(約2.7億円)、中国(約4.0億円)を大幅に上回る結果となっている。
政策提言に続く形で、業界の意向を取りまとめるため、JVCAはスタートアップ経営株主へのアンケート調査を行い、5月14日(木)に結果を公表した。同調査の結果によると、ミニマムタックス強化の影響として、回答者1387名のうち95.8%が「企業価値向上のインセンティブが削がれる」と回答。82.3%が「次に起業するなら海外を視野に入れる」と回答した。96.8%がミニマムタックス強化の見直しを求めた。
JVCAは調査結果を受け、改めてミニマムタックスが政府方針に反して優秀な起業家の海外流出やディープテックの空洞化を招く可能性があると指摘している。
今回の提言は、ミニマムタックス強化をめぐる税制上の議論に加え、創業者・初期株主の成功資金が次の起業や投資に回る「再循環」の仕組みをどう維持するかという、スタートアップ・エコシステム全体の課題を提起している。税負担の公平性と、成長企業を生み出すインセンティブ設計の両立が問われる局面といえそうだ。
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